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5話【完】
しおりを挟む体の奥にたまった熱は今にも溢れ出しそうだった。そしてとうとう指先が赤く腫れた粒を強く押しつぶした瞬間。
「っ、んんんんんっ!!」
脳を灼け尽くすような暴力的な快楽に悲鳴をあげる。弾けとんだ悦楽に全身を痙攣させ、目の前でちかちかと星がとぶ。
上手く呼吸が据えず、ひくひくと呼吸を喘がせているフルダを見ながらヴィダルは熱い息をこぼした。
「……イク時の顔エロすぎ。可愛すぎて死にそう。フルダ、お前自分がどんな表情してんのか自覚ある?」
「……はぁっ、ひ、表情? そ、そんなのわかんない……」
「はぁ……もういい。どうせ全部俺のものにするだから関係ぇねぇか」
その言葉の直後、突如性器にずぼりと何かが差し込まれる。それがヴィダルの指だと悟り、ひっと引き攣らせて声を上げた。
彼の太い指はフルダのぬるついた肉壁を押し広げ、中へと侵入していく。舌のときと同じように最初は違和感に打ち震えていたものの、顎を抑えられながら深い口付けを落とされ、意識が分散する。
フルダも体に燻る熱と虚脱感ですでに抵抗する気力を失っていた。
入念に押し広げられた蜜壺はすでに3本もの指が蠢いており、それがぐちゅりと抜かれれば物足りなささえ感じられる。初々しい体は快楽を貪欲に拾わんと作り変えられていった。
ヴィダルは自身の陰茎を取り出していた。赤黒く、血管が浮き出たそれは生々しく、天を向くように固くそびえ立つ。
フルダはごくりと唾を飲み込み、身を硬くしてベッドから身を起こそうとした。けれどそれを引き止めるようヴィダルに体を押し込められ、片手で手首を縫い止められる。
彼の先端がフルダの蜜口に当てられた。
性器が重なりくちゅりと音が耳に届き、身をすくませる。
彼はフルダの耳元に口を寄せ、いつにも増して甘く、艶やかに告げた。
「────フルダ、愛してる」
その瞬間。
「……っっ!!」
まるで体を引き裂くような痛みが下腹部を犯し、喉の奥から声にならない声をあげる。生理的な涙がこぼれ落ち、ヴィダルはそれを舌先で掬い取るようにして舐め上げた。
蜜壺はゆっくりと陰茎を受け入れ、太ましいそれは押し進んでいく。フルダは彼の背に縋り付くように爪をたて、痛みを逃すようにして息を吐いた。髑髏の刺青の入った肌に赤い爪痕が線を引く。ヴィダルは額に汗を浮かべながら、苦しげに眉を寄せてフルダの髪を撫でつけた。
ごつんと最奥にたどり着いた時、彼はフルダを痛いほど強く抱きしめてた。痛みで朦朧とする意識の中、フルダはその声を聞く。
「……小さい頃、約束しただろ。大きくなったら結婚しようって。……お前なんで忘れてんだよ」
消えてしまいそうなほどか細い声。
フルダはそのとき彼が泣いているのかと思った。
「……気づけばお前は俺の元から離れてった。悔しくて、お前のこと憎いって思いながらも、どうしてもそばにいたくて隣に引っ越してきた」
「……ぇ」
忘れた記憶。
ヴィダルの本心。
痛みの辛さよりも困惑が頭を支配する。
混乱し、フルダの首元に顔を埋めたヴィダルの言葉に耳を傾け続けた。
「見返してやろう、嫉妬してほしい。そう思った。だからオンナを抱いたのに。お前は俺のこと眼中にもねぇんだもんな。ほんと何やってんのかわかんねぇってなって……」
ぐずぐずと鼻水混じりに紡がれる声が耳に届く。
そのときフルダは思い出した。
20年近く前。
ヴィダルは年上の男の子なのにずっと泣き虫で、フルダのあとをいつもついてくるような少年だった。弱々しく可愛らしいヴィダルにフルダはメロメロになり、弟分のように可愛がった。二人はいつも仲良しで、食事の席が隣じゃないだけでヴィダルは泣き喚いて大変だったのを記憶している。
今ではこんなにも治安が悪い出立と性格で、女癖の悪さに定評があるが、本来の彼は今目の前でぐずっているようなひとだった。
『大きくなったら俺と結婚して!』
フルダが10歳になった歳、ヴィダルから求婚された。その時は真剣に『うん、わかった!』と頷いたが、大人になった今では所詮子供の頃の些細な出来事の一つだと気にもしていなかった。
フルダは胸がグッと締め付けられた。
泣きじゃくる過去のヴィダルが今、目の前でぐずっている彼と重なる。
気がつけば慰めるようにぽんぽんと背を叩き、優しく口走っていた。
「……忘れててごめんね、ヴィダル。大丈夫、大丈夫だよ」
刺青の入った肌を撫でながら彼を慰める。
次第に彼は落ち着いてきたようで。
同時にフルダの中に入った彼の欲望はぐんと体積を増した。腰を震わせ「な、なんで」と呟くフルダに泣き止んだヴィダルは言う。
「……っ、エロい撫で方するからだ」
その言葉とともに、ぐっと陰茎は引き抜かれたかと思えばぐりっと最奥まで押し込まれる。
脳がおかしくなるような刺激と、痛いような熱いようなよくわからない下腹部の刺激に指先をシーツの上で遊ばせた。
ヴィダルはそんなフルダの手を取り、指を一本一本絡めるようにして握りしめる。
初めはゆったりとしていた動きも次第に速度を増していった。
「……っぁぁ、んっ、んっ、んっ」
痛みなのか、はたまた快楽なのか分からなくてなったフルダは背中を反らせながらヴィダルに縋り付く。中を犯す熱い欲望がさらに膨れ上がり、ヴィダルはフルダを愛おしそうな顔で見下ろしながら腰を振り続けた。
ぐちゅぐちゅと泡が立つほどの激しい抽送にベッドがギシギシと物音を立てている。
フルダの声は段々と媚びるように官能的になっていく。
「……っ、だ、ダメっ、なんかっ、きちゃう、あっ、だめっ」
「……俺もっ、もう、イキそうだっ」
言葉を吐き出したヴィダルはフルダの真っ赤に潤んだ唇に自らのそれを重ねた。
ごつんと最奥を突き立てられたその瞬間。
「……っっっ、んんんんん!!」
「……っっ!!」
言うことの聞かない体がまるで陸地で跳ね上がる魚のようにびくびくと痙攣し、快楽の波がすべてを攫っていく。
どくどくと中に温かいものが注ぎ込まれ、その熱さにフルダは戦慄く。すべてを絞り尽くそうと締め付けを繰り返す蜜壺にヴィダルは熱く吐息をつき、額に浮いた汗がぽたぽたとシーツに落ちた。
静寂の中で二人の荒い吐息だけが響き渡る。
フルダは彼の熱が愛おしく感じ、自然とその逞しい背中を強く抱きしめた。ヴィダルは甘えるようにフルダの首元に自分の顔を埋めていた。
フルダの胸中を占めるのは犯された悲しみや怒りではない。昔感じていた弟のような幼馴染への母性と、自分に執着して縋る一人の男への愛情だった。
フルダは彼の不器用さにふっと息を漏らし、その温もりに身を委ねたのだった──。
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