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椿かもめ

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貢ぎ物と変化1

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 その日からおかしなことが度々続いた。
 ボジェクがおかしな行動をし続けているのだ。

「奥様! また旦那様からのお届けものです。今日はドレスですかね、それでもアクセサリーだったり──」

「……また、なの」

 そう。
 毎日のように送られてくるもの。
 
 コリーが言ったようなドレスやアクセサリーの類はもちろん、ヘドヴィカにはよく分からない美術品や外国の小物類などあまり見たことがないようなものも多く贈ってきた。
 妻の立場として拒否するのもためらったため、最初は訝しげに受け取っていたが毎日のように送られてくる品々に少しばかりうんざりしてくる。

(ドレスは毎日違うものを着ても全て着ることができない量だし、アクセサリーは日頃から気に入ったもの以外ほとんど使わないわ。たまにくる小物類──外国のオルゴールや小物入れとかはデザインも珍しくて面白いと思ったけれど、正直ものが増えすぎていて管理ができなくなってきたのよね)

 ボジェクの突拍子もない贈り物は幼少期から変わらなかった。紙で折った動物や手作りの泥団子、庭園に蠢く昆虫などを贈ってきた昔のことを考えれば大分マシともいえるが、それにしても多すぎる。お腹いっぱいだ。

 呆れて溜息をつきながらコリーが手に持っている贈り物を見やる。
 ヘドヴィカは仕方なしにそれを受け取り、箱のリボンをほどいた。

「今日はネックレス、アクセサリーね」

「わああ、大ぶりの宝石がお綺麗ですね。奥様の瞳と同じヴァイオレットカラーのアメジストです!」

「……確かに似てるわね。でも私、あまり華美なネックレスはつけないのよ。外出もしないし」

 いずれ社交の場に顔を出さなければならない時が来るかもしれない。けれどいまは以前と変わらず幸いなことに引きこもったままでいられる状況だ。だからヘドヴィカは領地にいたときと変わらず、庭園を歩く以外屋敷から一歩も外に出ていなかった。

 ボジェクは何も言ってこない。
 もともと彼は公爵家の末の息子のため、領地を継いだりというような責務を負っていないから、妻であるヘドヴィカにあまり社交は求められていないのかもしれない。

 この屋敷に来た当初、ヘドヴィカはボジェクが何をやっているのか、どんな仕事についているのか少しも知らなかった。婚姻が決まってからは、トラウマ相手の彼のことを少しでも耳に入れないよう過ごしてきたから。

 使用人から聞けば、いまは行政官として城に勤めておりその傍らで皇太子の側近としてのサポート業務も並行して行っていたりするらしい。

(そういえばフィリプ兄様も皇太子殿下のそばで働いているのよね。それならば、旦那様と顔を合わせることもありそうだわ)

 ヘドヴィカは自分の唯一の兄妹である兄の顔を思い浮かべる。ここ数年ほとんど屋敷にいることはなかったが、ヘドヴィカにも優しい尊敬できる兄だ。
 
 そしてそんな兄とボジェクは昔から仲が悪かったことを思い出す。

(年は兄様の方が少し上だけれど、旦那様に対しては子供っぽいっていうか……いつも対抗心むき出しだったわよね)

 真面目で正義感の強い性格だったがゆえ、ヘドヴィカをいじめるような言動をとるボジェクを常に敵視していた。
 そんな二人が今は皇城で同僚として働いているなど、想像がつかない。

 ちなみに兄は運が悪いことに現在皇太子の付き添いで隣国へ赴いており、ヘドヴィカの婚姻の儀に参加することは叶わなかった。近々皇太子が隣国の姫を娶るとのことで、その挨拶を兼ねて視察に赴いていると風の噂で耳にしていた。

(手紙でやりとりはしていたけれど、兄様、色んな意味で悔しそうな文面で思わず笑ってしまったわ)

 妹の婚姻の儀に参加出来ないのはもちろんのことなのだが、それよりもボジェクという仇敵との婚姻をどうしても認められないと手紙に記されていたことが記憶に新しい。
 
 考え込んでいるヘドヴィカを見て、コリーは勘違いしたのだろう。見方によっては自虐にも聞こえる『外出しない』という発言を受け、眉尻を下げて慌てたように呟いた。
 
「わ、私、知らず知らずのうちに無神経なことを言ってしまいました……申し訳ございません! 奥様が男性が倒れてしまうほど男性が苦手だなんて。旦那様が男性使用人のほとんどを移動にしたのは、奥様のことがあったからだってことを知らず……無神経におだてたりしてしまいました」
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