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強引な触れ合い3
しおりを挟む気づけば唇がまた合わさり、温もりを分かち合っていた。
ヘドヴィカは求められるまま、自らの唇を捧げた。
しばらくして落ち着きを取り戻したボジェクは気まずそうに顔をこわばらせる。そのときの表情は見もので──。
「……っ、見るんじゃねぇ!」
「あなた、真っ赤に──」
「だから見るなって言ってるだろうが!」
耳や首まで真っ赤に染めたボジェクは普段の高圧的な態度が想像できないほど、動揺していたみたいで。
腕で自分の顔を隠しながら、無愛想に目を逸らした。
先刻の甘えるような行動を見たせいか、そんな姿も愛らしく感じてしまう。
「くそっ、俺はなんでこんなことをっ」
ぶつぶつと独りごちるボジェクが頭を抱えた。
ヘドヴィカは微笑ましさを感じながら、己の精神が落ち着いていることを確認する。
(さっき……アダムと旦那様が並んでいるところを見たときは発作が出かかったけれど、今はそうでもないのね。私も順調に前を向けているのかもしれないわ)
そうでなければいけない。
過去を乗り越えたいと思っているのだから。
「旦那様、近々ベークマン伯爵令息に謝罪をしなければなりませんよ? 去り際に『失せろ』だなんて、流石に失礼ですから」
「それそうだが……あいつは気にしてないと思う。あの貴公子面からは想像できないくらい腹黒いやつだから」
仏頂面でぼそぼそと呟くボジェクを横目で見ながら考えた。
確かに昔、アダムはヘドヴィカに優しくしながら裏では『子豚姫』と呼んでいたと聞いた。ボジェクから間接的に聞いた言葉ではあったが、告げ口されたときのアダムの反応から真実であることは確かだと思う。
常に面と向かって意地悪をしてくるボジェクより、アダムの件の方がはるかに衝撃が強かった。当時は彼に思いを寄せていたし、余計に心の傷を抉ったものだ。
けれど直接意地悪されたり、悪口を言っている場面を目撃したわけないため、アダムが腹黒いなどと言われても想像がついていない自分もおり。
ヘドヴィカは首を横に張って言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「そうであっても、です。彼はベークマン伯爵様の代理で参られたんでしょう?」
「らしいな。まあそれは置いておいて……」
ボジェクは勝手に話をすり替える。
「お前はアダムに関わんなよ。指一本でも触れられたらゆるさねぇからな」
「自ら関わるつもりは今のところありませんが……ほんと何を言ってるんですか? おかしな人ね」
アダムがヘドヴィカに触れる状況がくるとは到底思えない。
ボジェクがどういうつもりで言っているのかわからないが、彼の今日の言動はいつにも増して変だ。
ヘドヴィカの反応にボジェクは何か言いたげだった。
考えることを放棄し、ヘドヴィカはベッドから体を起こす。
「それにしても突然部屋に連れて来られるなんてびっくりしました」
強引に連れて来られたのはボジェクが使っている一室だった。別荘に来てからもヘドヴィカもボジェクは別々の寝室を使っている。
(今のままなら夫婦の勤めもできるようになるのかしら?)
初日に失敗してしまった以降、二人がそういう雰囲気になることは一度もなかった。だからこそ、先刻押し倒されたことにひどく驚いてしまった。
手を繋ぎ、唇を重ねるところまで問題なく進められた。ならば次は抱きしめあい、肌を重ねることが目標となるだろう。
(一気にハードルが上がるけど、これをしなければいっぱしの夫婦とは言えないのよね……)
未だ不安は残る。
それでもこの別荘にいる間には、勤めを果たせるようになっておきたい。それを目的として新婚旅行を提案したのだから。
ボジェクは冷静になって今の状況を認識し、バツが悪そうに頭をかきながら言った。
「突然押し倒して……その、悪かった。お前が俺に対して怖がっていることなんで分かっているのに。どうしても感情の抑えが効かなかった。突然押し倒されて、怖い思いをさせただろ?」
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