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ボジェク6
しおりを挟む茶会に出席するのは恒例のこととなっていた。
大して興味はない催しだが、ヘドヴィカが参加しているのなれば話は別だ。
いつもの通りアダムを伴い、王城の庭園へと赴いた。
ヘドヴィカは一人きりでぽつりとテーブルについていた。
ボジェクがあからさまに虐めるせいか、はたまた世間話のなかでアダムが周りに同調するために言った『子豚姫』という言葉が瞬く間に広がり馬鹿にされているゆえか、側から見ても孤立していた。
(元々社交的じゃねぇしな)
艶のある銀髪を眺めながら考える。
引っ込み思案かつ、高位貴族の令息らに目をつけられており、親が元皇族という3点が揃ったヘドヴィカは誰にとっても取っ付きづらい人間といえよう。
ボジェクはテーブルに向かって孤独に座っていたヘドヴィカに話しかけた。
「おい、ヘドヴィカ・バリーク。また来たのかよ。その容姿でよくそんなドレス着れるな。恥晒しになるってどうして分からないんだ」
恒例となった意地悪な言葉が彼女の身体を縮こませていく。
驚いて振り返ったヘドヴィカは不安げ様子で名前を呼んできた。
「……ボジェク」
「おい、その汚い声で俺の名前を呼ぶな」
思ったより冷酷な声が出てしまった。
背中を丸めて俯くヘドヴィカ。
彼女の意識を自分に割けることに謎の充実感を覚えるのと同時に、理解できない息苦しさを感じた。
こんな顔をさせているのが自分なのだということがどうしようもなく居心地を悪くさせる。
それでもやめられないのは、ヘドヴィカが背後のアダムに意識を割いていることを感覚で理解していたからだ。
(……ヘドヴィカのくせに)
なぜアダムにだけ縋るような視線を向けるのか。
問いただしそうになるもの、それらを呑み込む。
わざわざ自分から彼女がアダムを意識しているのだと認める発言をすることがどうにも許せなかったからだ。
周りから距離を置かれ容姿もバカにされ続ける彼女のことをつい目で追ってしまう自分が愚かしく、情けないと思う。
「大丈夫? ヘドヴィカ嬢?」
背後にいたアダムが割り込むようにして声をかけてきた。
それを聞いたヘドヴィカは声を一段と高くし、「ええ」と頷いており。
その瞬間、ボジェクの中にあるなにかがぷつりと切れ、理性が弾けた。
「お前、俺の言葉は無視したくせにアダムには答えるのか。ヘドヴィカのくせに生意気だぞ」
テーブルに放置されていたぬるくなった紅茶をヘドヴィカにかける。
こんなことをしてはただでは済まないし、ヘドヴィカも傷つくというのに。
それを理解する前に勝手に体が動いてしまっていた。
自分は彼女のことばかり考えて夜もおかしな夢ばかり見ているというのに、ヘドヴィカはボジェクのことなど微塵も興味がなく、眼中にないという事実が腹立たしい。
癇癪を起こしているという事実を受け入れられないボジェクはますます怒りをヒートさせていった。
(ヘドヴィカ、お前も俺を捨てて別のやつのところにいくのか! 絶対にゆるさねぇ!)
近頃の不安定な心が言動に現れていた。
きっとヘドヴィカなら許してくれる。
幼い頃から何をしても最終的には自分を受け入れてくれていたのだから。
そういう甘えがあったのかもしれない。
短絡的な行いが彼女の心を追い詰めているのだと分かっていたのにやめる術が見つからない。
主催者の一員である貴族に連れられ、去っていく彼女の後ろ姿を見ながら少しずつ冷静さを取り戻していった。
己の本心を誰にも悟られないように、懸命に無表情を保とうとしている自分はなんて浅ましい人間なのだろうか。
我に帰った途端、気鬱さに落ち潰されそうになった。
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