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上弦の章 帝国内乱
帝国議会議事録 上弦 四巻
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「もう少し解答する努力をした方が良いと私は思うのだがね、無駄な時間だ」
と、ジークは席を離れ、議会の出入口まで歩き出す。
「悪いが、私は私のやる事が沢山あるのでね、これで失礼するよ」
「ま、待てジーク! 貴様ッ!! 議会はまだ閉会されてすらいないのだぞっ!!!」
「帝国議会の課題は、ユリアス討伐、遊牧民への対処、ドラグニアの牽制、ダリア教団再発の懸念だ。私はひとまず西へ向かわせてもらうよ、久しぶりに戦に出たい気分だからね」
それからあぁそうだ、と付け加えるように止まると、
「別方面で対処できるよう、私が選んだ軍団を2つほど置いていくとしよう。私が戻ってくるまでは、ユリアスに使うなり、備えとして帝都に待機させるなり好きにさせるが良い」
と、去り際に大声で発する。
「私は皇帝陛下の臣だ。帝国の非常事態に真っ先に対処するのは当然であろう?」
この一言、一見帝国への軍事力援助だと思われるが、少なくともそれを聞いたウリヤノフ、ジョージ、フレデリカの3名はそれぞれ思考を張り巡らせていた。
(この小童が、軽口ばかりたたきおって! どうせ褒美として多大な封土を要求するための方便じゃろうっ!)
(彼は目先の事より大局を見据えているのでしょう。となると、彼の出陣はあくまでも足がかりでしかないはずです。教団の話を私の前で話すという事は、我々ベネット商会の登場で目まぐるしく変革したベルギウス帝国の経済に、貴族層の新たな支配体制を組み込もうとする一種の示唆と捉えることもできますが……………)
(とりあえず遊牧民への処置は、このギラギラした人がやってくれるとして………。まずはドラグニアに人を割きたいけど、どうしたもんかなあ。でもまぁ、ドラグニア竜王国が攻めるんならアレクスター王国滅亡時でも良かったはず。牽制だけで配備するなら怖いけど、私と教え子が前線の都市に駐屯してもいいよね。問題は残り数名の選別と、ユリアス討伐に駆り出す兵力………………一人はお父さんでもいいか。帝国議会で決定したことなら、娘が言い出しっぺでも渋々了承するだろうし)
それぞれの思惑が絡み合う議会。
周りで聞いていた議会の有力者達も考えがあるだろうが、最も影響力があるのはグランドル、ベネット、ヴァルトの代表3名とウリヤノフである。
答えたくともその4人が動き出さなければ始まらない。
議会とは名ばかり、実際は少人数の合議制だ。
(早く帰りたいなぁ。おいとましよっと)
「ではウリヤノフ議長、私はドラグニアとユリアスに対する戦力を選出するので、一度帰らせて頂きます」
「そうか…………………ではよろしく頼むぞ」
「はっ!」
(やっとこの怖い顔のお祖父さんから離れられるよ)
心はともかく頭を下げたフレデリカも、ジークと同様議会から出ていく。
本来なら議会は終了の合図に皆で帝国への賛美の言葉を述べるのが常識だが、この国は軍事国家である。非常事態の時のみそれはない。
「さて、我輩も戦支度を始めるとするか…………」
三大勢力の長の内二人が退出した事で議会内の他の有力者達も退出したり、ため息をついたりする。
ウリヤノフもユリアスを屠るために議会を後にしようとするが、
「議長、少々よろしいでしょうか」
「なんじゃ?」
ジョージ・ベネットがウリヤノフの足を止める。
「私に何かお手伝いできることはないでしょうか」
(商談………………………か)
「いや、今回の件はあのジークですら出陣することになる。戦力としては十分じゃ。物資の備蓄にも余剰がある。ベネット商会に頼みたい事はないな」
「そうですか…………………しかし、その戦争が終わった後の諸侯への報奨はいかがなさるのですか?」
狡猾な蛇は、絶好の機会を逃さない。
「帝国の封土にも限りがあり、金銭を直接渡すにも膨大な数が必要です。爵位を進呈しようにも、名ばかりの爵位だけでは強欲な貴族は納得しません」
「何が言いたい?」
すると、ジョージは人払いをし、お互いの従者を遠ざけた。
「実は、ある森で木を伐採して開墾をしているのですが邪魔が入りまして、商会の何十名かが犠牲となりました………………」
「森人か」
「はい。彼らは活動範囲を狭める我々を敵とみなしたのでしょう。単刀直入に申し上げますと、その森の森人討伐を許可していただきたいのです」
これだけ聞くと、ただ商会にしか有利な交渉を持ちかけているに過ぎないが、
「許可したところで見返りがあるのか?」
ウリヤノフはそう思っていない。
(今回の褒美はなんとか出せるが、それでも国庫が少なくなってきておる)
帝国はここ最近、天候によって荒廃した道路を整備したり、穀物の供給が例年より減少したり、アレクスター王国滅亡等によって資金を過剰に支出している。
そんな財政の詳細まで把握しているウリヤノフにとって、彼の許可一つで帝国の懐が傷まない条件を聞き捨てるわけがない。
「えぇ、討伐令を出して頂き、彼らの勢力を除いた暁には、奴隷にした彼らを献上いたしましょう。真人の町より数こそ少ない彼らですが、帝国の諸侯に配るだけの数はあるはずです」
「規模も把握しておるのか?」
「えぇ、数はおおよそ500ほどかと、たまたま捕らえた幼い森人に吐かせたので間違いはないはずです」
(ジョージにそれを任せて我輩に弱みが生じるか? 仮にも奴は商人だ。しかもジークやヴァルトに黙って独自の行動をしようとしている)
「疑っておられるのですか? ではこうしましょう。手に入れた奴隷は舌を斬って情報が伝わらないようにし、貴方の配下を監視役として私の傭兵団へ派遣してください」
(森人は見た目が良く、貴族内では性奴隷として重宝されることは知っておるが、それを公の褒美として出すなどもってのほかじゃろう)
「性奴隷を国家の褒美に使えと言うのか?」
不機嫌な様子にジョージは気付く。
「過去にそういった事例があったと、私は文献に目を通しましたが?」
「それは100年以上前の話じゃ。時代が移りゆく中、未だにそのようなことをしてるのは遅れた属国だけじゃろう」
なおも引き下がらない。
(よっぽどその森に価値を見出しているのか、この若造は。鉱石か? それとも食料資源か?)
「私達ベネット商会の目的は開墾した土地を活用することです。では奴隷は無しにして、開墾した際に生じる膨大な木材全てを帝国へ献上する、と言うことでどうでしょうか? その木材で資金を作り、金銭を諸侯に渡せば綺麗に済みますが」
(金銭に汚い綺麗は無い、そう言いたいですが、このお方には少なくとも表面上綺麗な言葉を言わざるを得ないでしょうね)
「その木材の価値がいかほどか分からん」
「最悪商会が相場以上で買い取る覚悟もできております。お願いできますでしょうか」
しつこく絡みつく蛇は、年老いた議長へ張り付く。
「はぁ……………………分かった。ただし、この事は内密に進めてもらわなければ困る。その誓約をしてもらおうではないか」
「もとよりそのつもりです、この行動は私の今後の賭けになりますので、あなた以外に話すつもりは毛頭ございませんよ」
(どうだか…………………………)
ウリヤノフは心底ため息を吐く。
彼は奴隷のやり取りが嫌いな堅物だ。
個人間のやり取りに口を出すつもりは無いが、気高き帝国の安泰と繁栄を憂う彼にとって、なるべく薄汚い奴隷を議会の話に持ち込みたくなかった。
「こちらでよろしいでしょうか」
そう言って手渡された書面には、ベネット家の家紋、ジョージのサイン、内容としては盟約を破った場合、それ相応の罰を受けると約束し、保険の為にウリヤノフ派の側近数名とウリヤノフの密約内容の共有をして良いという文面だった。
討伐令を発行したとしても、他の者に公表しない時点で密命なのは変わりない。
「では我輩は討伐令の書類を作成する。お主も来るが良い」
「はい」
ウリヤノフは3歩後ろを歩いているジョージを気配で感じながら、
(かつて、過激化した森人を皆殺しにしたことがあったが、ジョージの言う彼奴らも過激化したということか。帝国にとっての害悪を、この商人が潰してくれる上に、見返りに物資まで寄越すとは……………………せいぜい利用させてもらおう)
と、思っていた。
こうして各々が動き出した議会は、一旦幕を下ろす。
🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕
帝国勢力の今後の動き
①グランドル家
ジーク率いる大規模軍勢が西の異民族征伐へ乗り出し、一部を帝都に駐屯させる。
②ヴァルト家
当主ソフィー・ヴァルツァーは、生き別れの兄を見つける旅に出る自己の理由から既に東に出ており、代理で権勢を握ったフレデリカ・ヴァルテシモとその配下(教え子複数とヴァルト数名)が南のドラグニア牽制、少数の別働隊を帝国常備軍が主軸のユリアス討伐軍に組み込んで送り出す予定。
③ウリヤノフ
ユリアスを討伐するため大将軍に舞い戻り、自身にほとんどが従う常備軍を編成して出陣予定。ヴァルトからの援軍として何名か送られてくる手はずだが、ジーク・グランドルが置いていった軍勢を使うか決めかねている。
なお、ほとんどと言ったのは、ユリアス側についた常備軍の一部もいる(ユリアスの親族や、一族で婚姻関係にある側近が主)ため。
帝国国庫の財源から褒美を出す際の不安から、ジョージと密約を交わす。
④ベネット商会
今回は帝国関連ではなく独自路線で、森の森人に対して戦争を起こす。特に反乱や侵略された等ではなく、ジョージにとってはこれからの賭けになるとのこと。ベネット商会が積極的に戦争に参加するのは、かつて極秘戦争と呼ばれた争い以来である。森人奴隷売買にも手を出しているベネット商会だが、肉体労働用の奴隷ではなく、奉仕を目的とした尊厳と自我を極限まで削ぎ落とした限定用途の奴隷が主な商品である。
ただし、産業としては成り立っているものの、この商品の供給元である森人の数が、真人と比べると圧倒的に数が少ない上に繁殖力も寿命の関係上低いため、出回る量が少ない。
なので、上流階級では当たり前のように知っていても、それらと関わり合いの少ない都市民は、噂話の域を出ない。
また、国庫の不安を察知しており、ウリヤノフに密約を促す際、条件として差し出す奴隷を諸侯の褒美にすれば良いと提案する事から、ジョージにとって奴隷に対する価値観は単なる商品である。
※ベネット商会が本格的に動き出して終了した帝国議会上弦。
ダリア教団、黙示の賢人を把握していない帝国議会ですが、ジークは裏で教団が動いているのではと憶測しています。
ヴァルトは若輩のフレデリカがどうにか当主の代わりに頑張っていますが、今後はどうなることでしょうか。
次回から満月の章に移りますが、ちょっと本編じゃない特別編(一話完結)を出したいと思っています。
と、ジークは席を離れ、議会の出入口まで歩き出す。
「悪いが、私は私のやる事が沢山あるのでね、これで失礼するよ」
「ま、待てジーク! 貴様ッ!! 議会はまだ閉会されてすらいないのだぞっ!!!」
「帝国議会の課題は、ユリアス討伐、遊牧民への対処、ドラグニアの牽制、ダリア教団再発の懸念だ。私はひとまず西へ向かわせてもらうよ、久しぶりに戦に出たい気分だからね」
それからあぁそうだ、と付け加えるように止まると、
「別方面で対処できるよう、私が選んだ軍団を2つほど置いていくとしよう。私が戻ってくるまでは、ユリアスに使うなり、備えとして帝都に待機させるなり好きにさせるが良い」
と、去り際に大声で発する。
「私は皇帝陛下の臣だ。帝国の非常事態に真っ先に対処するのは当然であろう?」
この一言、一見帝国への軍事力援助だと思われるが、少なくともそれを聞いたウリヤノフ、ジョージ、フレデリカの3名はそれぞれ思考を張り巡らせていた。
(この小童が、軽口ばかりたたきおって! どうせ褒美として多大な封土を要求するための方便じゃろうっ!)
(彼は目先の事より大局を見据えているのでしょう。となると、彼の出陣はあくまでも足がかりでしかないはずです。教団の話を私の前で話すという事は、我々ベネット商会の登場で目まぐるしく変革したベルギウス帝国の経済に、貴族層の新たな支配体制を組み込もうとする一種の示唆と捉えることもできますが……………)
(とりあえず遊牧民への処置は、このギラギラした人がやってくれるとして………。まずはドラグニアに人を割きたいけど、どうしたもんかなあ。でもまぁ、ドラグニア竜王国が攻めるんならアレクスター王国滅亡時でも良かったはず。牽制だけで配備するなら怖いけど、私と教え子が前線の都市に駐屯してもいいよね。問題は残り数名の選別と、ユリアス討伐に駆り出す兵力………………一人はお父さんでもいいか。帝国議会で決定したことなら、娘が言い出しっぺでも渋々了承するだろうし)
それぞれの思惑が絡み合う議会。
周りで聞いていた議会の有力者達も考えがあるだろうが、最も影響力があるのはグランドル、ベネット、ヴァルトの代表3名とウリヤノフである。
答えたくともその4人が動き出さなければ始まらない。
議会とは名ばかり、実際は少人数の合議制だ。
(早く帰りたいなぁ。おいとましよっと)
「ではウリヤノフ議長、私はドラグニアとユリアスに対する戦力を選出するので、一度帰らせて頂きます」
「そうか…………………ではよろしく頼むぞ」
「はっ!」
(やっとこの怖い顔のお祖父さんから離れられるよ)
心はともかく頭を下げたフレデリカも、ジークと同様議会から出ていく。
本来なら議会は終了の合図に皆で帝国への賛美の言葉を述べるのが常識だが、この国は軍事国家である。非常事態の時のみそれはない。
「さて、我輩も戦支度を始めるとするか…………」
三大勢力の長の内二人が退出した事で議会内の他の有力者達も退出したり、ため息をついたりする。
ウリヤノフもユリアスを屠るために議会を後にしようとするが、
「議長、少々よろしいでしょうか」
「なんじゃ?」
ジョージ・ベネットがウリヤノフの足を止める。
「私に何かお手伝いできることはないでしょうか」
(商談………………………か)
「いや、今回の件はあのジークですら出陣することになる。戦力としては十分じゃ。物資の備蓄にも余剰がある。ベネット商会に頼みたい事はないな」
「そうですか…………………しかし、その戦争が終わった後の諸侯への報奨はいかがなさるのですか?」
狡猾な蛇は、絶好の機会を逃さない。
「帝国の封土にも限りがあり、金銭を直接渡すにも膨大な数が必要です。爵位を進呈しようにも、名ばかりの爵位だけでは強欲な貴族は納得しません」
「何が言いたい?」
すると、ジョージは人払いをし、お互いの従者を遠ざけた。
「実は、ある森で木を伐採して開墾をしているのですが邪魔が入りまして、商会の何十名かが犠牲となりました………………」
「森人か」
「はい。彼らは活動範囲を狭める我々を敵とみなしたのでしょう。単刀直入に申し上げますと、その森の森人討伐を許可していただきたいのです」
これだけ聞くと、ただ商会にしか有利な交渉を持ちかけているに過ぎないが、
「許可したところで見返りがあるのか?」
ウリヤノフはそう思っていない。
(今回の褒美はなんとか出せるが、それでも国庫が少なくなってきておる)
帝国はここ最近、天候によって荒廃した道路を整備したり、穀物の供給が例年より減少したり、アレクスター王国滅亡等によって資金を過剰に支出している。
そんな財政の詳細まで把握しているウリヤノフにとって、彼の許可一つで帝国の懐が傷まない条件を聞き捨てるわけがない。
「えぇ、討伐令を出して頂き、彼らの勢力を除いた暁には、奴隷にした彼らを献上いたしましょう。真人の町より数こそ少ない彼らですが、帝国の諸侯に配るだけの数はあるはずです」
「規模も把握しておるのか?」
「えぇ、数はおおよそ500ほどかと、たまたま捕らえた幼い森人に吐かせたので間違いはないはずです」
(ジョージにそれを任せて我輩に弱みが生じるか? 仮にも奴は商人だ。しかもジークやヴァルトに黙って独自の行動をしようとしている)
「疑っておられるのですか? ではこうしましょう。手に入れた奴隷は舌を斬って情報が伝わらないようにし、貴方の配下を監視役として私の傭兵団へ派遣してください」
(森人は見た目が良く、貴族内では性奴隷として重宝されることは知っておるが、それを公の褒美として出すなどもってのほかじゃろう)
「性奴隷を国家の褒美に使えと言うのか?」
不機嫌な様子にジョージは気付く。
「過去にそういった事例があったと、私は文献に目を通しましたが?」
「それは100年以上前の話じゃ。時代が移りゆく中、未だにそのようなことをしてるのは遅れた属国だけじゃろう」
なおも引き下がらない。
(よっぽどその森に価値を見出しているのか、この若造は。鉱石か? それとも食料資源か?)
「私達ベネット商会の目的は開墾した土地を活用することです。では奴隷は無しにして、開墾した際に生じる膨大な木材全てを帝国へ献上する、と言うことでどうでしょうか? その木材で資金を作り、金銭を諸侯に渡せば綺麗に済みますが」
(金銭に汚い綺麗は無い、そう言いたいですが、このお方には少なくとも表面上綺麗な言葉を言わざるを得ないでしょうね)
「その木材の価値がいかほどか分からん」
「最悪商会が相場以上で買い取る覚悟もできております。お願いできますでしょうか」
しつこく絡みつく蛇は、年老いた議長へ張り付く。
「はぁ……………………分かった。ただし、この事は内密に進めてもらわなければ困る。その誓約をしてもらおうではないか」
「もとよりそのつもりです、この行動は私の今後の賭けになりますので、あなた以外に話すつもりは毛頭ございませんよ」
(どうだか…………………………)
ウリヤノフは心底ため息を吐く。
彼は奴隷のやり取りが嫌いな堅物だ。
個人間のやり取りに口を出すつもりは無いが、気高き帝国の安泰と繁栄を憂う彼にとって、なるべく薄汚い奴隷を議会の話に持ち込みたくなかった。
「こちらでよろしいでしょうか」
そう言って手渡された書面には、ベネット家の家紋、ジョージのサイン、内容としては盟約を破った場合、それ相応の罰を受けると約束し、保険の為にウリヤノフ派の側近数名とウリヤノフの密約内容の共有をして良いという文面だった。
討伐令を発行したとしても、他の者に公表しない時点で密命なのは変わりない。
「では我輩は討伐令の書類を作成する。お主も来るが良い」
「はい」
ウリヤノフは3歩後ろを歩いているジョージを気配で感じながら、
(かつて、過激化した森人を皆殺しにしたことがあったが、ジョージの言う彼奴らも過激化したということか。帝国にとっての害悪を、この商人が潰してくれる上に、見返りに物資まで寄越すとは……………………せいぜい利用させてもらおう)
と、思っていた。
こうして各々が動き出した議会は、一旦幕を下ろす。
🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕
帝国勢力の今後の動き
①グランドル家
ジーク率いる大規模軍勢が西の異民族征伐へ乗り出し、一部を帝都に駐屯させる。
②ヴァルト家
当主ソフィー・ヴァルツァーは、生き別れの兄を見つける旅に出る自己の理由から既に東に出ており、代理で権勢を握ったフレデリカ・ヴァルテシモとその配下(教え子複数とヴァルト数名)が南のドラグニア牽制、少数の別働隊を帝国常備軍が主軸のユリアス討伐軍に組み込んで送り出す予定。
③ウリヤノフ
ユリアスを討伐するため大将軍に舞い戻り、自身にほとんどが従う常備軍を編成して出陣予定。ヴァルトからの援軍として何名か送られてくる手はずだが、ジーク・グランドルが置いていった軍勢を使うか決めかねている。
なお、ほとんどと言ったのは、ユリアス側についた常備軍の一部もいる(ユリアスの親族や、一族で婚姻関係にある側近が主)ため。
帝国国庫の財源から褒美を出す際の不安から、ジョージと密約を交わす。
④ベネット商会
今回は帝国関連ではなく独自路線で、森の森人に対して戦争を起こす。特に反乱や侵略された等ではなく、ジョージにとってはこれからの賭けになるとのこと。ベネット商会が積極的に戦争に参加するのは、かつて極秘戦争と呼ばれた争い以来である。森人奴隷売買にも手を出しているベネット商会だが、肉体労働用の奴隷ではなく、奉仕を目的とした尊厳と自我を極限まで削ぎ落とした限定用途の奴隷が主な商品である。
ただし、産業としては成り立っているものの、この商品の供給元である森人の数が、真人と比べると圧倒的に数が少ない上に繁殖力も寿命の関係上低いため、出回る量が少ない。
なので、上流階級では当たり前のように知っていても、それらと関わり合いの少ない都市民は、噂話の域を出ない。
また、国庫の不安を察知しており、ウリヤノフに密約を促す際、条件として差し出す奴隷を諸侯の褒美にすれば良いと提案する事から、ジョージにとって奴隷に対する価値観は単なる商品である。
※ベネット商会が本格的に動き出して終了した帝国議会上弦。
ダリア教団、黙示の賢人を把握していない帝国議会ですが、ジークは裏で教団が動いているのではと憶測しています。
ヴァルトは若輩のフレデリカがどうにか当主の代わりに頑張っていますが、今後はどうなることでしょうか。
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