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上弦の章 帝国内乱
帝国議会議事録 上弦 三巻
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「くだらん幻想を抱き、帝国の秩序を崩壊手前まで追い込んだ蛆虫達。彼奴らの生き残りがいるかもしれないと、私は思っているのだよ」
「生き残り…………………ですか?」
ジョージ・ベネットは苦虫を噛んだような顔で問う。
彼にとって救済の使徒が掲げていた思想、平等、無差別は商会の立場から言わせると不愉快極まりないことだからだ。
富を均等に分配する。
そんな綺麗事が通るならば、遠の昔に人々が行っていただろう。
争いも起きず、財を築かないで隣人と分け合う。
そんな幸せな世界は何を意味するか。
自我の消失だ。
人間が他の動物と違い、人間足らしめるのは何か。
自我である。
足りない何かが欲しい、新しい何かをしたい。
新たな発見、知識の会得。
それらを考えるのは自我あっての事だ。
欲望が技術を生み出し、技術が恩恵を与え、それで満たされた人々が、さらなる欲望を願う。
つまり、文明の発展に欲は不可欠。
その欲を上手く信用、金銭と言う形に変え、それらを増やす行いを生業とした帝国一の大商会、ベネットの頭領にとって、教団の思想は自分達の存在否定に他ならなかった。
「あぁ、そうとも。勿論使徒と呼ばれていた首領は全員死んだはずだがね、私はむしろ生き残りがいると推測している」
余裕たっぷりの表情のジーク。
それを見たウリヤノフは憤慨する。
「バカな!? 真理の使徒エラスムス、宣教の使徒レイン、探究の使徒ドロシー、洗礼の使徒ウォルター、戒律の使徒ダグラス、永眠の使徒パンドラ、天罰の使徒カイン! 小奴らの亡骸、死に目を見たものはこの議会にもまだ多くいるぞ!! 出任せに邪教の事を口走るでない!!!」
「あまりにも軽率な考えではないか?」
心底バカにした様子だった。
「何じゃと!?」
「パンドラとカイン。この両名だけは説明がつかないと私は思うがね。まずパンドラは極秘戦争の頃、数多の死体を操り大軍勢を率いていた事があったではないか。おまけにこの使徒はそれ以外にも巨大な化け猫や、自身を強化したりと本来の死霊術と大きく異なる面がある。そのような稀代の死霊術師なら、もしかしたら己が魂すら蘇生できるかもしれないだろう?」
ジークはそう推測していた。
「そのような事例、聞いたことなどないわっ! 貴様の妄想も大概にしたらどうだっ!」
「確かにそうかもしれないが、念には念を、であろう。フレデリカ殿はいかがお考えかな?」
「えっ!?」
いきなり話を振られたフレデリカは驚く。
(確かに、当時の極秘戦争の話をお父さんに聞かされた時、あんな死霊術見たことがないって言ってたけど、基本的に本人が生きてないと発動しないはずだしなぁ)
ちなみに、パンドラがヴァルト出身だった事を知るのはこの中でフレデリカだけである。
当時のパンドラは、ヴァルトへの憎悪を戦場で散々吐いていたらしいが、その理由までは言わなかったし、ヴァルト側からしても、家の裏切り者が帝国に牙を剝いた事実をわざわざ公表する必要もなかった。
ただ、ドロシーに関してはヴァルトが教えていた事実を認めざる負えなかった状況が帝国議会内で起こっていた為、当時の当主エルヴァスト・ヴァルツァーは、ドロシーの生首を持ちながら議会で謝罪している。
「死霊術の最低条件は死体と魂、術者ですよね? なら、使い手が死亡した場合、その人物の蘇生は不可能だと思います」
「なるほど、フレデリカ殿はそう思われるか」
ふむ、と唸るジーク。
「ではカインはどうかな? 奴は帝国最北端に位置する救済の使徒の聖地、嘆きの聖堂から落ち延び、最後は断崖絶壁の氷海から落ちた。そして、誰もその死体を見ることが無かった」
それに答える者は、誰もいなかった。
「生き残り…………………ですか?」
ジョージ・ベネットは苦虫を噛んだような顔で問う。
彼にとって救済の使徒が掲げていた思想、平等、無差別は商会の立場から言わせると不愉快極まりないことだからだ。
富を均等に分配する。
そんな綺麗事が通るならば、遠の昔に人々が行っていただろう。
争いも起きず、財を築かないで隣人と分け合う。
そんな幸せな世界は何を意味するか。
自我の消失だ。
人間が他の動物と違い、人間足らしめるのは何か。
自我である。
足りない何かが欲しい、新しい何かをしたい。
新たな発見、知識の会得。
それらを考えるのは自我あっての事だ。
欲望が技術を生み出し、技術が恩恵を与え、それで満たされた人々が、さらなる欲望を願う。
つまり、文明の発展に欲は不可欠。
その欲を上手く信用、金銭と言う形に変え、それらを増やす行いを生業とした帝国一の大商会、ベネットの頭領にとって、教団の思想は自分達の存在否定に他ならなかった。
「あぁ、そうとも。勿論使徒と呼ばれていた首領は全員死んだはずだがね、私はむしろ生き残りがいると推測している」
余裕たっぷりの表情のジーク。
それを見たウリヤノフは憤慨する。
「バカな!? 真理の使徒エラスムス、宣教の使徒レイン、探究の使徒ドロシー、洗礼の使徒ウォルター、戒律の使徒ダグラス、永眠の使徒パンドラ、天罰の使徒カイン! 小奴らの亡骸、死に目を見たものはこの議会にもまだ多くいるぞ!! 出任せに邪教の事を口走るでない!!!」
「あまりにも軽率な考えではないか?」
心底バカにした様子だった。
「何じゃと!?」
「パンドラとカイン。この両名だけは説明がつかないと私は思うがね。まずパンドラは極秘戦争の頃、数多の死体を操り大軍勢を率いていた事があったではないか。おまけにこの使徒はそれ以外にも巨大な化け猫や、自身を強化したりと本来の死霊術と大きく異なる面がある。そのような稀代の死霊術師なら、もしかしたら己が魂すら蘇生できるかもしれないだろう?」
ジークはそう推測していた。
「そのような事例、聞いたことなどないわっ! 貴様の妄想も大概にしたらどうだっ!」
「確かにそうかもしれないが、念には念を、であろう。フレデリカ殿はいかがお考えかな?」
「えっ!?」
いきなり話を振られたフレデリカは驚く。
(確かに、当時の極秘戦争の話をお父さんに聞かされた時、あんな死霊術見たことがないって言ってたけど、基本的に本人が生きてないと発動しないはずだしなぁ)
ちなみに、パンドラがヴァルト出身だった事を知るのはこの中でフレデリカだけである。
当時のパンドラは、ヴァルトへの憎悪を戦場で散々吐いていたらしいが、その理由までは言わなかったし、ヴァルト側からしても、家の裏切り者が帝国に牙を剝いた事実をわざわざ公表する必要もなかった。
ただ、ドロシーに関してはヴァルトが教えていた事実を認めざる負えなかった状況が帝国議会内で起こっていた為、当時の当主エルヴァスト・ヴァルツァーは、ドロシーの生首を持ちながら議会で謝罪している。
「死霊術の最低条件は死体と魂、術者ですよね? なら、使い手が死亡した場合、その人物の蘇生は不可能だと思います」
「なるほど、フレデリカ殿はそう思われるか」
ふむ、と唸るジーク。
「ではカインはどうかな? 奴は帝国最北端に位置する救済の使徒の聖地、嘆きの聖堂から落ち延び、最後は断崖絶壁の氷海から落ちた。そして、誰もその死体を見ることが無かった」
それに答える者は、誰もいなかった。
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