163 / 190
上弦の章 帝国内乱
帝国議会議事録 上弦 二巻
しおりを挟む
議会に参加していた有力者達は、ジョージの言葉にざわめきだす。
口々に囁かれるのは、エルヴァストと言う単語。
先代の第65代当主の名前である。
彼はほとんど話をしない寡黙な男だったが、法や掟に関しては厳格で、その姿を間近で見ていた人にとって娘が来ない事に動揺した。
そんな中、議会の入り口の一つが大きな音と共に開かれる。
彼らは自然とその人物に視線を向けた。
場に似合わぬ漆黒のローブを羽織った年頃の少女だ。
「遅れてしまい、誠に申し訳ございません! 当主のソフィー・ヴァルツァーに代わり、この不肖フレデリカ・ヴァルテシモが当主及び各師家の承認により、当主代理として出席致します!」
緊張で頬を少し引き攣らせながら、頭を下げる。
「まぁ、座るが良い……………………フレデリカ殿」
「はっ!」
ため息をついたウリヤノフに勧められ、とりあえず席に着くフレデリカ。
その時、彼と彼女はこう思った。
(なんだこの頼りなさそうなのは)
(あっちゃぁ…………………第一印象は最悪だよこれ、だから私出たくなかったのに)
フレデリカは帝国議会に出席したくないと散々父親に申し出たが、『これも経験だ』だの『あの当主から直接指名されて権限を貰ったのだから筋としてお前が出るべきだ』だの言われ、結局任される羽目になったのだ。
(私は元々人に教える立場だったのに、なんでよりにもよってこんな大役やんないといけないのよ!)
そんな様子のフレデリカを見たジークとジョージはそれぞれこう思う。
(初心な乙女…か。面白いことが起きそうだ)
(これは……………良い商談が発生しそうです)
「早速だがフレデリカ殿、落ち着かぬ間にすまぬが、そなたがたヴァルト家の動員を申請したい」
ウリヤノフは単刀直入に言う。
「それはドラグニア竜王国に対してでしょうか? それとも逆臣ユリアス・フォン・シュタインに対してでしょうか?」
(どうしよう……………………他の三家から送り出したいけど、すぐに集まる気がしない。この際未熟な魔導師でも、実践って事で駆り出そうかなぁ)
「………………そなたがたには南の防備を主に、その上で出来れば1人か2人ほど逆臣討伐に充てて頂きたい」
ユリアスと言う単語に顔を歪めてから、老いた議長は話す。
(あのユリアスを屠り、ドラグニア牽制にはヴァルトを利用せねばなるまい。西の遊牧民の脅威もあるが、先手はこちらだ。最悪、貴族連中に討伐をさせる他あるまい)
そんな時、横槍が入った。
「議長、私は今回の幾多の件、あれが関わっているのではないかと思うのだよ」
ジーク・グランドルである。
「ヴァルト家との話はまだ終わっていない! 喋りたいならその後にするべきじゃろう!」
(この小童、ヴァルトの了承を得る直前に口を出してきおって!)
「教団」
「「「「!!!」」」」
サラッと放たれたその言葉に、全てが固まった。
ウリヤノフはもちろん、フレデリカやジョージも同様である。
「おや? 何を黙る必要がある? 彼奴らはこの帝国の混乱期に度々現れる害虫であろう? かつて潰した救済の使徒の再来も大いにありえるではないか」
両手を広げ、楽しげに語るジーク。
教団と言う言葉は、かつての極秘戦争から口にすることすら許されない暗黙の了解だと帝国上層部では広まっていたが、それを知っていてなお、この大人数の前でわざと大声で話す彼の意図は何だろうか。
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
※あと1~2話くらいで帝国議会は終わらせます。少ない文で申し訳ありません。
話は変わりますが、次の章はサブタイ通り、教団メインです。
口々に囁かれるのは、エルヴァストと言う単語。
先代の第65代当主の名前である。
彼はほとんど話をしない寡黙な男だったが、法や掟に関しては厳格で、その姿を間近で見ていた人にとって娘が来ない事に動揺した。
そんな中、議会の入り口の一つが大きな音と共に開かれる。
彼らは自然とその人物に視線を向けた。
場に似合わぬ漆黒のローブを羽織った年頃の少女だ。
「遅れてしまい、誠に申し訳ございません! 当主のソフィー・ヴァルツァーに代わり、この不肖フレデリカ・ヴァルテシモが当主及び各師家の承認により、当主代理として出席致します!」
緊張で頬を少し引き攣らせながら、頭を下げる。
「まぁ、座るが良い……………………フレデリカ殿」
「はっ!」
ため息をついたウリヤノフに勧められ、とりあえず席に着くフレデリカ。
その時、彼と彼女はこう思った。
(なんだこの頼りなさそうなのは)
(あっちゃぁ…………………第一印象は最悪だよこれ、だから私出たくなかったのに)
フレデリカは帝国議会に出席したくないと散々父親に申し出たが、『これも経験だ』だの『あの当主から直接指名されて権限を貰ったのだから筋としてお前が出るべきだ』だの言われ、結局任される羽目になったのだ。
(私は元々人に教える立場だったのに、なんでよりにもよってこんな大役やんないといけないのよ!)
そんな様子のフレデリカを見たジークとジョージはそれぞれこう思う。
(初心な乙女…か。面白いことが起きそうだ)
(これは……………良い商談が発生しそうです)
「早速だがフレデリカ殿、落ち着かぬ間にすまぬが、そなたがたヴァルト家の動員を申請したい」
ウリヤノフは単刀直入に言う。
「それはドラグニア竜王国に対してでしょうか? それとも逆臣ユリアス・フォン・シュタインに対してでしょうか?」
(どうしよう……………………他の三家から送り出したいけど、すぐに集まる気がしない。この際未熟な魔導師でも、実践って事で駆り出そうかなぁ)
「………………そなたがたには南の防備を主に、その上で出来れば1人か2人ほど逆臣討伐に充てて頂きたい」
ユリアスと言う単語に顔を歪めてから、老いた議長は話す。
(あのユリアスを屠り、ドラグニア牽制にはヴァルトを利用せねばなるまい。西の遊牧民の脅威もあるが、先手はこちらだ。最悪、貴族連中に討伐をさせる他あるまい)
そんな時、横槍が入った。
「議長、私は今回の幾多の件、あれが関わっているのではないかと思うのだよ」
ジーク・グランドルである。
「ヴァルト家との話はまだ終わっていない! 喋りたいならその後にするべきじゃろう!」
(この小童、ヴァルトの了承を得る直前に口を出してきおって!)
「教団」
「「「「!!!」」」」
サラッと放たれたその言葉に、全てが固まった。
ウリヤノフはもちろん、フレデリカやジョージも同様である。
「おや? 何を黙る必要がある? 彼奴らはこの帝国の混乱期に度々現れる害虫であろう? かつて潰した救済の使徒の再来も大いにありえるではないか」
両手を広げ、楽しげに語るジーク。
教団と言う言葉は、かつての極秘戦争から口にすることすら許されない暗黙の了解だと帝国上層部では広まっていたが、それを知っていてなお、この大人数の前でわざと大声で話す彼の意図は何だろうか。
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
※あと1~2話くらいで帝国議会は終わらせます。少ない文で申し訳ありません。
話は変わりますが、次の章はサブタイ通り、教団メインです。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる