1 / 190
プロローグ
悪路に揺られた馬車の中で
しおりを挟む
旅は慣れてる、慣れているのだが。いくらなんでもこの揺れはないだろう…。
「この街道は帝都の管轄だと思ったんだが…」
「いや、帝都の管轄なんだがね、周辺諸国との戦に大雨、財政難とかにあって舗装する金がないんだとよ」
御者がぶっきらぼうに言う。はぁ……。
「わしら行商人も商品が壊れないか心配だよ。後ろのやつなんかガラス細工の細っかいの仕入れたらしいから運が悪いぜ、通行税も高くなってるしな」
商売も大変だな、とつくづく思う。彼らは副業として旅人を乗せたりする。都市や町、村を転々とする職業のため旅人や一般市民をついでに乗せることでいい小遣い稼ぎになるのだ。安さが売りだが若干遅いのがたまに傷。馬車を専門にやっている所は機動性に長けているが、べらぼうに高い。使うとしても大商人ぐらいの金持ちだろう。まぁ、この道ではどちらも大差ないが。
「そうか、ちなみに税以外で最近この帝国で変わったこととかあるのか?」
税の話はあまり興味がなかったので自分が聞き出したい話題を若干そらして訪ねてみる。
「先月の頭ぐらいかな、貴族や要人が暗殺されてるんだよ。証拠は凶器とか残ってるらしいんだが犯人の足取りがまったく掴めないらしいぞ」
それに、と続ける。
「暗殺された貴族達が悪名高くてな、下の階級の民達をそうとう酷使させて自分の利益しか考えてなかったって噂のせいか、一部の人間にゃ…」
「犯人は英雄扱いか」
「まぁ、そういうこった」
よく昔話でもでてくるな、悪い領主が自分の封土の民を虐げ、搾取する。そこに颯爽と一人の人間が表れその領主は倒れる。その人間は英雄として感謝され幸せに暮らしましたとさ。だが実際現実で起こると綺麗に終われないのが普通なんだがな。
「そういえば証拠ってなにが残されてるんだ?」
ふと素朴な疑問を口にする。
「それがな、国が公表しねぇんだよ」
「公表しない?」
帝国が口に出せないということは、内部で根回しされてるのか?思考を巡らす。
「あんま考えないほうがいいんじゃないか?他の国との事ならともかく内輪揉めなんて真相を知ったらまずそうだからなぁ」
御者は苦虫を噛み潰したような顔で達観した口調だった。このおっさん、頭いいな。
その後雑談を交えて、しばらくすると都に近い山の上に城塞のような威厳ある白い建物が見えてきた。広大な桃の庭園、帝都を一望できるぐらいの高さにあり、大貴族並みに豪華な屋敷。
その圧倒的な光景を馬車から眺め、俺はため息をついた。
「お客さん、あんたここの土地の人間じゃなさそうだな。皆あれを初めて見ると感嘆するんだよ。なんでも、宮廷魔導師の一族が国の発展に貢献したらしいからな」
「そうなのか」
「いろいろ話してる内についたぞ。じゃあ八千ウォルス頂くよ」
「ありがとう、この土地の今の情勢に詳しくなかったからさ」
そう言いながら革製のベルトポーチからコインを渡した。
「情報は商人の飯の種だからな。詳しく知ってて当然だろ」
そうにこやかに返事をくれた。
御者が去ってからしばらく俺は山の上の方角を眺めていた。
懐かしさがこみ上げてきた。
行きたいと思った。
だがあの場所へ帰る事はもう叶わないだろう。
なぜなら……………
俺はその一族から追放された身だからだ。
「この街道は帝都の管轄だと思ったんだが…」
「いや、帝都の管轄なんだがね、周辺諸国との戦に大雨、財政難とかにあって舗装する金がないんだとよ」
御者がぶっきらぼうに言う。はぁ……。
「わしら行商人も商品が壊れないか心配だよ。後ろのやつなんかガラス細工の細っかいの仕入れたらしいから運が悪いぜ、通行税も高くなってるしな」
商売も大変だな、とつくづく思う。彼らは副業として旅人を乗せたりする。都市や町、村を転々とする職業のため旅人や一般市民をついでに乗せることでいい小遣い稼ぎになるのだ。安さが売りだが若干遅いのがたまに傷。馬車を専門にやっている所は機動性に長けているが、べらぼうに高い。使うとしても大商人ぐらいの金持ちだろう。まぁ、この道ではどちらも大差ないが。
「そうか、ちなみに税以外で最近この帝国で変わったこととかあるのか?」
税の話はあまり興味がなかったので自分が聞き出したい話題を若干そらして訪ねてみる。
「先月の頭ぐらいかな、貴族や要人が暗殺されてるんだよ。証拠は凶器とか残ってるらしいんだが犯人の足取りがまったく掴めないらしいぞ」
それに、と続ける。
「暗殺された貴族達が悪名高くてな、下の階級の民達をそうとう酷使させて自分の利益しか考えてなかったって噂のせいか、一部の人間にゃ…」
「犯人は英雄扱いか」
「まぁ、そういうこった」
よく昔話でもでてくるな、悪い領主が自分の封土の民を虐げ、搾取する。そこに颯爽と一人の人間が表れその領主は倒れる。その人間は英雄として感謝され幸せに暮らしましたとさ。だが実際現実で起こると綺麗に終われないのが普通なんだがな。
「そういえば証拠ってなにが残されてるんだ?」
ふと素朴な疑問を口にする。
「それがな、国が公表しねぇんだよ」
「公表しない?」
帝国が口に出せないということは、内部で根回しされてるのか?思考を巡らす。
「あんま考えないほうがいいんじゃないか?他の国との事ならともかく内輪揉めなんて真相を知ったらまずそうだからなぁ」
御者は苦虫を噛み潰したような顔で達観した口調だった。このおっさん、頭いいな。
その後雑談を交えて、しばらくすると都に近い山の上に城塞のような威厳ある白い建物が見えてきた。広大な桃の庭園、帝都を一望できるぐらいの高さにあり、大貴族並みに豪華な屋敷。
その圧倒的な光景を馬車から眺め、俺はため息をついた。
「お客さん、あんたここの土地の人間じゃなさそうだな。皆あれを初めて見ると感嘆するんだよ。なんでも、宮廷魔導師の一族が国の発展に貢献したらしいからな」
「そうなのか」
「いろいろ話してる内についたぞ。じゃあ八千ウォルス頂くよ」
「ありがとう、この土地の今の情勢に詳しくなかったからさ」
そう言いながら革製のベルトポーチからコインを渡した。
「情報は商人の飯の種だからな。詳しく知ってて当然だろ」
そうにこやかに返事をくれた。
御者が去ってからしばらく俺は山の上の方角を眺めていた。
懐かしさがこみ上げてきた。
行きたいと思った。
だがあの場所へ帰る事はもう叶わないだろう。
なぜなら……………
俺はその一族から追放された身だからだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる