断罪のアベル

都沢むくどり

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新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

秩序で守られる肯定された殺戮 3

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 食後。

「ところで」

「何?」

 カレンは口についた肉油をナフキンで綺麗に拭き取ってこちらに返答する。

「そもそも被害があるノスタルジア領って地理的にどこなんだ?」

 そう。連絡が入ってから一週間、なぜすぐに出陣しなかったのかが疑問なのだ。空白の一週間、その間に村レベルならすぐに荒廃するだろう。盗賊は生産性に欠ける反面、略奪に長けている。

 普通のリーダーなら、ただ暴れまくって略奪するだけ、またはゲリラ戦術を駆使して、疲弊させてから狙うといった行動を平然とやってのける。俺としては村の人たちには可哀想だが、後者であってくれると助かる。基本的に一気に略奪する盗賊団は最後に火をつける。理由は不明だが、多分火災を利用して領主の軍勢を撹乱し、逃亡するからだろう。

 だが、後者の場合、村を焼くことがまずない。なぜかと言うと繰り返し略奪する為に、あえて一度奪うと、いったん村から出ていくからだ。周期的に繰り返すタイプの連中なら、一見それは物資の供給がしやすいと思えるだろう。定期的にいくつかの村を回るからだ。

 だがその分痕跡が残るし、逃亡成功率が下がる事を意味する。

 以前盗賊団の傘下らしいグループが死んだことで、ようやくボスの指導のもと、活発に動き出したわけだが、逆に言うとそのボスのタイプが不明な以上、現状把握から推測するしかない。

 今の所、カレンは村を燃やされたとは言っていなかった。となると、まだ後者の確率が高い。なら後は帝都からの距離を算出すれば、ある程度は見えてくるはずだ。恐らく村を燃やさず周期的に略奪するタイプなら、領主の行動、帰る季節をある程度知っている。なら不確定要素の俺が、カレンには悪いがいったん独断行動をして、混乱して残ったそいつらを、貴族連合に殲滅させればいい。

 さて、被害にあった領地はいかほどに。

「ここから強行軍で二日ほどの所ね。残念ながら配下を駐屯させてないから、私たちが早馬で行かないといけない。でもまだ村は焼かれてないし、賊たちが奪っていったものを取り返すチャンスはあると思うわ。焼かない所を見ると、これからまた奪いに来るわね」

 冷静に、淡々と話すカレン。どうやら俺と同じ考えのようだ。

「本当は私だってすぐに出立したかったんだけど、地位が高いとそうもいかないのよ」

 と、そこで区切る。今日のカレンはいつもより疲れていそうな感じがする。気苦労が絶えないようだ。

「とにかくもう食べたんだし、行きましょ」

 会計を済ませ、すぐに集合場所に移動する。

 すると、一目でわかるくらいの貴族服を着た男と甲冑で身を覆った十人ほどの騎士が騎乗したまま止まっていた。
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