断罪のアベル

都沢むくどり

文字の大きさ
68 / 190
新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

久しぶりの暇な一日 2

しおりを挟む
 身分、年齢によらず誰でも遊べるマルドラフは画期的な遊びだと思う。作った人素晴らしいな。

 試合が始まってからというもの、

「はい、アークとったよ」

「そ、そんな…………おれ様の大地変成ガイアメイク戦法が…………」

 ガキ大将を、



「次は私が!」

死霊術ネクロマンスで包囲ね」

魔術マジック使って倒したのにいいぃ!」

 朝起こしてくれた少女を、



「次はオイラだっっっっっ!」

「あ、ごめん。俺死霊術師ネクロマンサーだから、呪術師シャーマンに圧倒的有利だ」

「ブブォォォォッッッッ!!?」

 ちょっと太めの男の子を、



「なら、持久戦に持ち込んで『神罰』を使えば…………」

「俺、生まれたときからサイコロ運がいいんだよね」

「これが………神の一撃……か……」

 何人も何人も倒した後、最後に小柄な少年を、

 マルドラフで容赦なく蹂躙、叩きのめしていった。

 死霊術ネクロマンス、使いどころによっては強いな。今度、ツバキちゃんにリベンジしよっと。

 というか8人中5人は『神罰』で勝敗を決したのだが、全て俺の勝ちという結果だった。

 そして現状に至る。

 …………ちょっとやり過ぎたかな。泣き出さなきゃいいけど。

 だがその心配も杞憂に終わる。

「す、すげぇよ! こんなに強い人、初めてだっ!」

「勝てるコツとか教えてっ!」

 そんなに強いわけではないが、子供からすると俺は相当の腕らしい。

 好印象で見られるのは悪い気分ではないが、この状況で平和な時間を味わうのもかえっておかしくも感じる。

「なぁ、リトラル村に着いてからずっと気になってるんだけど。カレン様から村に盗賊団が来たって聞いたんだが、そんなに悠長にしてていいのか?」

「? それは隣のラプラル村だよ?」

「むしろ隣村が被害にあってるからこそ警戒をしないといけないんじゃ…………」

「え? だってカレン様がわたしたちを助けてくれるじゃない」

 そう言われ、以来を受ける前に聞いたカレンの話を思いだし、反芻する。

 確かカレンは…………、

『ノスタルジアの領地の一つもその被害を被ってるの、でも兵の数が少ないからって、お母様が勝手に進めた縁談の相手と共同出兵することになっちゃったのよ、だから断るために力を貸して! 給金はちゃんと払うから!』

 と俺に説明した。あの時はカレンの愚痴まで一言一句忘れられず疲れたが、便利に使えるときもあるもんだ。

 子供の言ってることはカレンの過去の言動と合致している。そのために近くに位置する二つの村も防衛対象にしたのだろう。

 なら、なおさらこの村の危険度は高まるわけだが…………。

 なぜなら一度略奪した村から再度略奪しても、前に奪ってる影響で盗れるものは少ない。大規模な集団なら周りにある村を襲うのが定石だろう。ラプラル村がやつらにとって枯渇資源地帯なら、まだ余力のあるリトラル村か、もうひとつの村に行くはず。なのに子供たちはそれをわかっていない。

 熟考していると頭頂部の禿げかかった農夫が一人、鍬をもって歩いてきて、俺を見ると話しかけてきた。

「アベルさん、子供たちの面倒を見てもらって申し訳ねぇです」

「子供は好きだから気にしないで大丈夫だよ」

 さて、大人の意見を聞いてみるとするか。

「盗賊が現れる可能性が高いのに、そんなに悠長に構えていいのか気になるんだが」

「あぁ、隣の村が襲われたときゃ驚いたけど、カレン様も来てくれたし、なんせあんなに強そうな騎士様達がいる。無駄に戦っても勝ち目のねぇあっしらがいても足手まといでしょう」

 彼らの考えが分からなくもないが、この村の住民はいささかカレンに対する期待過剰と、盗賊に対する警戒心が異常に低いと思う。

 魔術や呪術が使えない以上、防衛用の柵とか立てるべきだ。

「それに、隣の村じゃあ死んだのもいねぇんだす」

「死人が出ていない?」

「えぇ、なにやら親玉みてぇなのが、貢ぎ物さえすりゃ女子供に手はださず、無用な殺しはせんと言ってたそうで。まあ、来たとしてもカレン様が追い払ってくれるでしょう」

 奴等は死人を出したくないんじゃなく、死人が出ると次に略奪するとき生産力が減って収穫が減るからだと思う。まるで自分が領主であるかのような振る舞いだな。それを彼らは殺されないし、女子供に危害が加えられないからと安心している。

 それこそ相手の思うつぼだ。殺されないと思って一生懸命物資を捧げても、向こうにとって不利な状況、例えば今の俺達のように、領主の軍が到着したことを知れば、問答無用で殺されるだろう。村を燃やし、逃げる算段を立てる時間稼ぎの為に。

「……………………」

「お、おにいちゃんどうしたの? なんか顔が怖いよ…………」

 考え事をしている俺を見て、少女が少し怯えていた。

 何だろう。俺って考え事をするとそんなに怖いのか…………。

「ごめんごめん、ちょっと考え事をね」

 周りが動かないなら俺が動く必要があるな。むしろその方が都合もいいしな。

「みんな、ちょっと野暮用ができた。悪いけどマルドラフはおしまいにしよう。それと、今日は今から家で過ごしてほしい」

「ええ? 大丈夫だよ。来てもアベルのアニキがなんとかしてくれるだろ? それにカレン様も夜には帰ってくるし」

 呑気な声でガキ大将は言う。

「俺はカレン様と違って魔術が使えない。それにそんなに強くもない」

「えっ!? てっきりアニキも使えるかと思った」

 どうやら俺は魔術が使えると思っていたガキ大将。主人が使えるからと言って、従僕が使えるとは限らないんだよ。

「あなたは急いで村の人達を集めて入り口に柵の準備だけしておいてくれ。今後のカレン様の役にたつと思うから」

「はぁ、大丈夫だと思いやすがこれからカレン様の負担を軽くできるんなら喜んでやりましょう」

「じゃあ、後は任せた」

 迷わず西の方角へ歩く。

 俺達が話してる最中、遠くで人影が不自然に揺れていたからな。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...