断罪のアベル

都沢むくどり

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新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

とある詩人の創作日記 漆

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 草をたくさん食べたせいか、馬が「よっしゃあぁぁ! 飛ばすぜダンナァ! 振り落とされんなよお!」と目配せして全力疾走する。

 あれ、荷馬じゃなかったっけ?

 そんなことより、なんで馬が魔術を使えるんだ? 守護忠犬ガーディアンテリアならともかく、馬だぞ馬!

「だから細けぇことは気にすんなよ」

 ため息をつくようにこちらを見つめる。

「人間達だって魔術を使える奴もいりゃその逆もいる。なら馬が使えたって不思議じゃねぇ」

 いやいや、素養があれば魔術の行使は可能ではあるが、術式の呪文が出来ないではないか!?

「んなこと言われても使えるもんは使えるだろ? この前なんか犬っころがすげぇ暴風出して、タルとか破壊しまくってたぞ。飼い主っぽい長い金髪の女の子が必死で止めてたなぁ」

 どこか遠い目をする荷馬。

 この馬、すごい。

 しかし不可能ではないのかもしれない。

 守護忠犬ガーディアンテリアでさえ、人語を話せなくとも魔術を使用できるのだ。となると、目の前の馬はものすごい希少な存在なのか。

 何だかんだこの馬と話してたら、目標までもうわずか、松明を片手に地図を見ていたのだが…………

 急に馬が止まった。

 振り落とされるところだったぞ!! おい、どうした!?

「!? ダンナ……………あれを見ろよ…………」

 馬が何かに驚いている。何だろうか?


 ?

 ?

 !?

 理解するまで少々、いや大分時間がかかった。

 リトラル村の方角から、夜中なのにやけに明るい光が目に映る。

 燃え盛っていた。

 村ごと、に。


「なぁ、これはまずいんじゃねぇか…………? 盗賊とかの襲撃だったら洒落になんねぇぜ。ダンナ、悪いこたぁ言わねえ。引き返すぞ…………」

 馬は私の静止を待たずに反対を向く。

 私が呆然としていた様に見えたのか、

「ダンナ?」

 馬がこちらを振り向く。

 しかし、私は既に馬を飛び降り、村へ駆けていた。

「ちょっ!? 待てよ!! なに考えてんだあんた!? 死ぬぞ!!!」

 ヒヒーンといななく馬。


 けれど、私の足は止まらない。

 思い浮かんだのだ! 新たな詩を!

 燃え盛る村! 盗賊かは知らんが村を襲う野盗の脅威! 間近でこの眼に焼き付けなければ!! 惨状を!  悲劇を!

 頭の中に無数の題材が浮かぶ。

 この感覚…………いける!

 私は走る!

 詩を創るために!

 ただひたすらに!

 走り抜ける!

 

「く、狂ってやがる……………………こんな奴…………初めて見た…………」

 馬はそんな私をあきれた目で凝視していた。
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