断罪のアベル

都沢むくどり

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新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

1b ここがあなたの終着点(ストーリー分岐)

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「ノア。俺は契約を結ばない」

「え……………………?」

 途端、予想外の返答だったのかノアは呆けた顔をする。

 彼女は俺の心の内が分かるらしい。

 だが、悩み、悩みに悩んだ末の一瞬の答えを彼女は読み取れなかった。答えが既に定まっていたのなら、彼女はそれを読んで予想通りと思っただろう。

 となると、俺の心を読むために少し時間差が生じるのか。ノアがすぐに理解出来ないのも無理はない。悩んでいた俺の大半を占めていたのはソフィー、カレンの事。

 相手の感情を時間差でも分かるなら普通、この状況の場合、契約を結ぶと思うだろう。

 だが、最後の最後に頭に浮かんだのはノアに対する疑念。それを彼女が読み取る前に俺の口から直接言った。

 するとどうだろう。ほぼ結ぶであろう者から聞かされた正反対の答え。

 戸惑う。ノアは戸惑った。

 脅威とさえ思ったこともあったが彼女にも案外欠点はあるんだな。


「ど……どうして……………? アベル?? 自分の言っていることが分かっているのですか???」

「すまないな。やっぱり駄目だ」

 すると彼女は肩を震えさせた。

「何故!? どうしてですか!!?」

 自分自身を縛るように両手で抱き、恥じらいもなく声を荒げる。

「私はただ、あなたを救いたいだけなのに…………!!! 何故!!」

「なら、なんで一つでも契約の内容、俺の空白であろう過去すらも話してくれない?」

「っっ…………」

 一瞬、彼女は狼狽える。

「ここで話せたらどんなに幸せか…………。話したくても話せない私の気持ちは汲んでくれないのですか!」

「仮にお前の気持ちが、本当に俺を救おうとしていても、事情を話せないのなら契約を結べない。俺は契約を、それにノアを信用できなかった。ただそれだけだ」

 俺の確たる答えを聞いたノアは、膝から崩れ落ちる。

「ここで死ぬのなら、それまでのこと。ソフィーとはもう一度会いたかった。カレンも助けられるのなら助けたかった。だけれども人はいつか死ぬ。自然に生きて、自然に死ぬ。じゃあ俺の力って奴で世界をねじ曲げれるって? 俺はその力が怖い。それで数多くの他者の運命を変えてしまうかもしれない事を。ノア。お前が、いや君が悪い訳じゃない。これは死期、しかも俺が自分で選んだ死に場所だ。悔いはある。でも俺は自分の選んだ選択に後悔はない」

「そん…………な…………………………」

 気づくと、白かった場所も色彩をほぼ取り戻していた。ノアの体も透明になっており、辛うじて肉体の輪郭が残像のように残っている。




 俺ももう死ぬのか。呆気ない死に方。でもこれでいいのかもしれない。



 仮に力を使い、生き延びたとしてもこれからソフィーと会えることは可能性としてほぼ零。追放された者は、まず会うこと自体は不可能なのだ。それに無理に行ってもソフィーにとって不愉快かも知れない。追放されたあの時からもう何年もたつ。今さら行ってももう遅いのだ。

 この時点で頭の片隅では人生をほぼ諦めていただろう。

 カレンにも本当に申し訳ないとも思う。俺は勝手に貴族間の問題に足を突っ込んだ。その結果がこの有り様。

 生まれて十数年。長いようで人生に置いてはとても短い、そんな時間。

 ノアの姿がとうとう見えなくなる。

 これで、終わりだ。

 そして、止まっていた世界は動き出す。


















 事は無かった。

 再び白く染められていく。

「………………………………は?」

 あまりの予想外な展開に、俺の思考は停止する。

 仰向けだったはずなのにいつの間にか体が立っている。

 しかも目に映る光景は、燃え盛るリトラル村ではない。

 四方のはるか彼方に巨大な銀の歯車が存在していた。

「あれは最初の…………」

 その言葉の続きは無かった。

 突如、体がガクンと揺れる。そして前にある床に赤い液体が広がっていった。

「あ、れ……………………?」

 何があったのだろう。白夜の箱庭エリドは一面が純白。他の色が何故ある?

 すると、一つの物に目を吸い寄せられた。

 全く光沢の無い真っ白な刃。それが俺の左胸から生えており、赤い液体の出所でもあった。剣に付着した赤い液体は、白く変色していく。

「ッェッ……………?」

 え…………………?、と言おうとしたが、声が上手くでない。それに体が一秒ごとにダルさが増していく。

「あなたは契約してくれなかった………………。救えなかった…………救えなかった…………救えなかった…………救えなかった…………救えなかった…………………………私はあなたを救えなかった…! もう死んでしまう、殺されてしまう…………! この時点で死からは逃れられない……………!!! ここがあなたの終着点……!!!! ……だったら……………………………」

 嗚咽混じりの泣き声がする。

 その位置は後ろからだったが弧を描くように後ろ、左、前へと足音と共に移動した。

 俺は力尽き、うつ伏せに倒れたが最後の力を振り絞り、顔だけ上げた。その声の主は…………。

「ノ………………………………ア………………………………」

「だったら……………………せめて私が……………あなたを………………殺します………………………………………………………………………………………………」

 深淵を覗いたように暗くなった瞳からを流し、俺を見下ろしていたノア。その手には白い剣があった。いつの間にか体から抜かれている。

 何よりもノアは何かに対して葛藤している。俺を救いたい。その心はどうやら本当のようだ。

 だが、なぜそこで俺を殺すのか。それだけが不思議で仕方がなかった。

「………い……………よ…………………アベル………………………………」

 最後の言葉を聞き取れなかった。視界がぼやけ、揺れる。

 次の瞬間、何か鈍い衝撃が体中にズブズブと襲いかかり、そこで息絶えた。

×××××××××××××××××××××××


 新月の章

 badエンド ここがあなたの終着点


※案外badエンドはこの先のストーリーとも関連性があるかも?

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