断罪のアベル

都沢むくどり

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新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

鮮血ヲ食ライシ断罪ノ鎌 7

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「いたい…………」

 ふざけ混じりに言った。

 あの後、カレンは顔を真っ赤にして、平手で俺を叩いて吹っ飛ばした。

 今も跡が残っている。

「急に触ってくるからよ! 驚くでしょう!!」

 ふぅ、と一息ついて紅茶を飲むカレン。

 先程まで少しばかり悲しい表情だったが、少しは和らいだようだ。

 俺の痛みは、彼女の糧へと変換された。

 俺は痛いけどね。

「あなたって確か兄弟いたわよね?」

「? あ、あぁ。兄と妹ね」

 唐突な話題に思考が鈍る。

 兄はいないが設定上次男坊なので、そこら辺は合わせる。

「会いに行ったりしないの?」

「妹に会いたいけど…………いいかな」

 会いたくても会えない。

 だから俺は諦める。

「そう……………………」

 それ以上カレンは追求して来なかった。

「そうそう。あなたが気絶してる間に、魔術関係で重要な出来事があったわよ」

 暗い空気を和ませる為か、話題を切り替えたカレン。

「?」

「ヴァルトの当主がソフィー⚫ヴァルツァーって人になった見たい」

「!?!?!?!?」

「町中はどんな当主なのかって…………」

 ヴァルトの当主は就任後、襲名式をする。

 王族達が民衆に手を降る場所。

 ヴァルトは当主の襲名時のみ、その場で姿を見せる。

 ならば、一瞬でも見られる可能性は大だ。

 この好機を逃したら駄目だ。

 厳重な警備かも知れないが、望遠鏡で遠くから見るだけなら何とかなるだろう。

「となると見れるのか!」

「襲名式で遠目で見れるだけでしょ?」

「あぁ、教えてくれて助かったよ!!」

「なんか気持ち悪いくらいに感情が高ぶってるわね…………。まぁ、魔術師の家柄だったらヴァルトは憧れの対象でしょうけどね」

 歓喜な俺と苦笑するカレン。

 まだ眠っていたクラリーチェは俺の叫びで起きた。

 大人しく、儚く、穢れを知らない清楚なソフィー。どの様に育ったのか一刻も早く知りたい。

「妹さんに再会できる絶好の機会! 良かったですね!」

「……………………」

「本当に良かったですね!」

 ちょっと待て。何やら騒音が聞こえたような。

「無視ですか? それはちょっと悲しいです…………」

 声の元はカレンから、ではなくいつの間にかカレンの位置にノアがいた。

 しゅんと項垂れるノア。

「!?」

 だが、俺の驚きにノアは満足したような表情を浮かべ、一瞬の内にカレンに戻っていた。

「アベル?」

「え…………?」

「さっきから返事がなくなったから呼び掛けていたのだけれど…………」

「あ、あぁ………………………………ちょっとクラッと…………ね」

 おかしい。白夜の箱庭エリド発動中は時間が止まっているはず。

 何かが違う。

「目眩? まだ疲れてるのよ、少し休みなさいな」

「次の試練は……………………近い」

 カレンの姿にうっすらとノアの面影が重なり、同時に声も発せられる。

 俺は契約を甘く見すぎたのだろうか。代償を知らずに。そう思うと背筋に冷たい汗が一筋、流れ落ちた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 新月の章 完

 次にいくつか詩人とかの閑話などを投稿してから次の章に行きます。
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