断罪のアベル

都沢むくどり

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上弦の章 帝国内乱

追憶の欠片 Ⅳ

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 ソフィーとはある一件以降どこに行っても一緒だ。

 と言うより、ソフィーがどこへでも付いてくるようになった。




 魔術に関する勉強の際も、

 ペラッ、ペラッ、

「兄さん……………………」

 ギュッ。



 食事の際も、

「ソフィーに食べさせて…………? あーん」

「はい、あーん」




 風呂も、

「フフッ、背中…………流すね」

「ちょっ!? ソフィー…………。さすがに自分でやるよ」

「! 兄さんはソフィーの事嫌いになったの…………? ッ…………!」

「まるでボクが悪者みたいじゃないか…………いいよ、洗っても…………」

「! うん…………!」



 そして、

「お休みなさい、兄さん」

「あぁ、お休みソフィー」

 ソフィーはボクの右腕に体を巻き付けて、目を閉じた。

 さて、そろそろボクも眠ろう。

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        ・
        ・

「いや、何かが違う」

 ボクは今日一日の体験で五感の内のいくつかが違和感を覚えたので、勢いよく目覚めた。

 ちなみにそのせいで、ここ最近は寝不足だ。

「どうしたの…………兄さん」

 ソフィーはボクの腕から胴体に手を回す。

 ボクの耳元へ項垂れかかった体勢なので、吐息が耳を刺激した。

「これはさすがに眠れないよ」

「だから何が……………………?」

「自覚が無いのかな…………」

「?」

 どうやらないようだ。

「えっとね、ソフィー。今日一日、いや一緒になってからのボク達の生活で、おかしいことはないかな? 胸に手を当てて考えてよ」

 ソフィーは言われた通りに、胸に手を当てて考える。

「今日だけで振り返れば、朝に兄さんの部屋で一緒に起きて、二人で朝食。それから兄さんと魔術のお勉強………。お昼を食べたらお散歩とピアノと魔術の復習……」

「うん」

 ここまではいい。

「夕食の後は一緒にお風呂に入って、今に至るけど……………………。特に変わったことはないよね? 兄さん」

  いや、見落としてるよソフィー。

「じゃあ今は何をしているのかな?」

「兄さんの体に抱きついてるだけだよ…………」

 そう言うと、ソフィーは体を擦り付けてきた。

 それに伴い、ボクの心臓が高鳴る。

 ほんとに自覚が無いようだ。

「その、ソフィー……………………。服は着ようね」

 そう、ソフィーは寝る時、全裸で寝るのだ。

 しかも、ボクに抱きついて…………。

 対してソフィーの反応は、

「何で?」

 らしい。

 何で? と言われても返答に困る。

「ソフィー、いつもこうじゃないと良く寝付けないから………………それに」

 と、ボクの顔を自身の顔へと向ける。

「兄さんだから安心して出来るんだよ」

「……………………」

 何と説得したらよいか。

「ソフィーと兄さんは本当の家族………だよね。なら、何も恥ずかしいことはないはずだよ…………」

 子供だろうが家族だろうがある程度分別がつく年頃なら裸は恥ずかしいと思うけど…………。

 赤ん坊じゃあるまいし。

「あれ…………」

 考えてると、急に視界が流転する。

 ボクはいつの間にか押し倒されていた。

「あの時兄さんは、ソフィーの事………受け入れるって……………………そう言ったよね?」

 股がったソフィーの赤い瞳がボクを見下ろす。

 それらはひどく、哀愁を帯びていた。

「受け入れるとは言ったし、別に咎めてる訳じゃ…………」

 ボクはソフィーの事が好きだ。

 妹として好きだ。

 だからこそ言っただけだ。

 風邪を引かれると困るし、ボクの心臓にも負荷がかかるのだから。

「受け入れるって言ったよね…………?」

 それから徐々にソフィーは顔を近づけて、

「ソフ…………んんぅ!?」

 ボクの口を塞いでしまった。

「んっ、んんっ……兄、んぅぅ…さ……んん…………」

 しかも唇だけでなく、ソフィーは舌を中に侵入させた。

 唾液が奪われていく。

 ボクは鼻が塞がってるわけではなかったけど、驚いてしまって呼吸を忘れていた。

 しばらくすると頭がボーッとし、何だか気持ち良くなる錯覚に陥る。

 甘い感覚もしてきた。

 ただの酸欠のはずなのに。

 ソフィーもそれは同じようで、

「んぷはっ…………はあっ…………はぁ」

 ようやく口を離したときのソフィーは、唾液まみれの口を拭いもせずに、恍惚とした表情を浮かべていた。

 だが、先程の問答は終わらない。

「受け入れてくれるよね…………?」

「うぅっ…………」

「………………………………ね?」

 もう肯定した方が良いような気がしてくる。

「分かったよ…………ソフィー」

 普段は大人しいソフィーなのに、今日はやたら頑固だったな。

 確かに、普段の習慣をいきなり変えろと言っても直すのは大変だし、ここは兄として引き下がろう。

 頭を撫でてやる。

「じゃあ、一緒に寝よ」

 両目の哀愁さは消え、喜びを表していた。

「お休みなさい…………兄さん」

 ソフィーは横に寝転がると、またボクの腕に体を巻き付けて目を閉じた。

 さて、寝るか。

 ボクも目を閉じて、寝る体勢に入った。
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「寝れない……………………」

 結局ボクがこの睡眠方法に慣れるまで、2週間の歳月を要した。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 本業が忙しく、またもやストックを放出します。
( ノ;_ _)ノ
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