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上弦の章 帝国内乱
ダリアこそが世界を照らすの♪ 1
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「眠れない……………………」
俺は骨組みに布を掛けて紐で縛った1人用簡易拠点から這い出した。
今日は目が冴える。
「それにとてつもない尿意…………」
そうだ。
夜に御馳走になった、やたら濃い紅茶を飲んだからだ。
あれの銘柄は、五等分に割り振ったランクの中でも茶葉ではなく茎をふんだんに使った最低ランク、エスデスト・フェイン。
茶葉に含まれる風味よりも茎の成分による興奮作用、利尿作用を重視する分、戦地での士気高揚や医薬品としても使えるので実用的ではあるが、
「苦いだけで全く美味しくない…………」
のが俺の感想だ。
寝る前に飲んだのが失敗だったな。
寝床から少し離れて尿を足す。
目が冴えてる影響なのか、月の光がとても明るく感じる。
おかしいくらいに。
「……………ヘッ………クシッ!」
夜風も冷たい。
早く戻ろう。
そう思ったが、
「~♪…………」
歌が聞こえた。
寂しく、今にも消えそうな、けれど何かを呼んでいるような歌。
「~♪~~♪~…………」
目が冴えてるが、その歌は遠く離れた場所から聞こえてくるので、さすがにそこまでは見えない。
俺は音のする方角に歩き出す。
それは自分の意思なのか、誘われたのかは判断できない。
「~~♪~♪~♪~♪…………」
そして、疑問に思う部分があった。
「俺はこの曲を…………知っている?」
かすかに聞こえるこの曲に聞き覚えがある。
いつ?
どこで?
次第に歩みは速くなる。
気付けば俺は走っていた。
「~~♪~♪~~~♪…………」
ふいに、歌が止まる。
それから足音が近付いてきた。
「ルンルンルン♪」
謎の気配の発する音律が暗闇に溶ける。
気配が縮まる度に心臓の鼓動が高まった。
そして、
「え……………………?」
相手は姿を現した。
「…………」
少女だった。
この国には珍しい宗教儀式的な服装。
月の光を反射させる銀色の髪の毛と色白な肌。
幼い小柄な体。
均整のとれた顔立ち。
ビスクドールのような………。
「…………」
瞳が俺の目を捉える。
おかしい、何でだ?
どうして?
似ている。
似すぎている。
いや、同じだ。
エメラルド色の瞳を除けば…………、
姿そのものがあの時のソフィーと瓜二つだった。
相手は俺の反応を知ってかあまりにも明るい笑顔を浮かべる。
何を笑っている?
この状況で何を?
本能が囁く。
目の前にいるこいつは危険だ!
だが、
「みぃつけた♪ アタシのカイン♪」
カインと言う聞き慣れない未知の用語に思考が鈍り、肉体の動作が追い付かなかった俺は、
「……………………!?」
左頬を揺さぶる重い衝撃をまともに食らい、物理的に真横にふっ飛ばされた。
「アハッ♪ 久しぶりだねカイン♪ 暫く見ない内に大分大きくなったねっ♪」
「お前っ!」
「怒ること無いよね♪ だっていつものカインならこのくらい避けれたじゃん♪」
「さっきからカイン、カインって誰だよ! 俺にはアベルって言う歴とした名前がある!」
俺はすかさず剣を抜き、その勢いのまま左下から右上に斬りあげるが、
「ふーん♪ ア・ベ・ル、ねぇ♪」
その剣を軽々と止める。
なんと親指と中指だけで。
「!?」
「思い出せないの? 君はアベルなんて名前じゃなくてカインだよ♪ 自分の名前くらい覚えなよ♪」
笑顔のまま、二本の指で鉄製の頑丈な剣を曲げていく。
その指はあまりに華奢なのに現実は違った。
「君はアルベール・ヴァルツァーとしての生涯を終えたんだ♪ せっかくカインとして動いてたのによりにもよってアベル。心残りがあるのかな♪ いつまでヴァルトの事を引きずってるんだい♪」
「なっ!? どう言うことだ!」
どうしてこいつが俺を知っている?
そもそも今の話からすると、カインとは間違いなく俺を指しているのだが、全くその記憶はない。
失われた記憶と関係しているのか?
「そのままの意味だよ♪」
見えない速度の蹴りに反応しきれず、側頭部を蹴飛ばされた。
転がる俺にゆっくりと付いていく。
「あの呪われた家から放逐されたんだからアルベール・ヴァルツァーとしての君は死んだも同然♪ それなのに気がかりなのか名前を忌まわしい帝国の庶民風に文字ってアベルにしたんでしょ♪」
ソフィーそっくりの少女は笑顔を冷酷な笑みに変えた。
「何で思い出せないのか意味がわからないけど、忘れてるなら自己紹介してあげるっ♪」
服の裾を掴み、深々とお辞儀をする。
目を閉じたその顔は、お喋りなことを除けば本当にソフィーだった。
「久しぶり、カイン♪ そして初めまして、アベル♪ ダリア教団、元救済の使徒の一人にして、黙示の賢人の現教主、パンドラです♪」
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
※救済の使徒、黙示の賢人については後述しますが両方ともダリア教団のグループです。
さて、このパンドラ。
アベルにとってはソフィーに瓜二つらしく、力量的にも精神的にも厄介な敵になるのは明白です。彼女の心境を吐露させる際は幕間か後日談で説明する予定です。
俺は骨組みに布を掛けて紐で縛った1人用簡易拠点から這い出した。
今日は目が冴える。
「それにとてつもない尿意…………」
そうだ。
夜に御馳走になった、やたら濃い紅茶を飲んだからだ。
あれの銘柄は、五等分に割り振ったランクの中でも茶葉ではなく茎をふんだんに使った最低ランク、エスデスト・フェイン。
茶葉に含まれる風味よりも茎の成分による興奮作用、利尿作用を重視する分、戦地での士気高揚や医薬品としても使えるので実用的ではあるが、
「苦いだけで全く美味しくない…………」
のが俺の感想だ。
寝る前に飲んだのが失敗だったな。
寝床から少し離れて尿を足す。
目が冴えてる影響なのか、月の光がとても明るく感じる。
おかしいくらいに。
「……………ヘッ………クシッ!」
夜風も冷たい。
早く戻ろう。
そう思ったが、
「~♪…………」
歌が聞こえた。
寂しく、今にも消えそうな、けれど何かを呼んでいるような歌。
「~♪~~♪~…………」
目が冴えてるが、その歌は遠く離れた場所から聞こえてくるので、さすがにそこまでは見えない。
俺は音のする方角に歩き出す。
それは自分の意思なのか、誘われたのかは判断できない。
「~~♪~♪~♪~♪…………」
そして、疑問に思う部分があった。
「俺はこの曲を…………知っている?」
かすかに聞こえるこの曲に聞き覚えがある。
いつ?
どこで?
次第に歩みは速くなる。
気付けば俺は走っていた。
「~~♪~♪~~~♪…………」
ふいに、歌が止まる。
それから足音が近付いてきた。
「ルンルンルン♪」
謎の気配の発する音律が暗闇に溶ける。
気配が縮まる度に心臓の鼓動が高まった。
そして、
「え……………………?」
相手は姿を現した。
「…………」
少女だった。
この国には珍しい宗教儀式的な服装。
月の光を反射させる銀色の髪の毛と色白な肌。
幼い小柄な体。
均整のとれた顔立ち。
ビスクドールのような………。
「…………」
瞳が俺の目を捉える。
おかしい、何でだ?
どうして?
似ている。
似すぎている。
いや、同じだ。
エメラルド色の瞳を除けば…………、
姿そのものがあの時のソフィーと瓜二つだった。
相手は俺の反応を知ってかあまりにも明るい笑顔を浮かべる。
何を笑っている?
この状況で何を?
本能が囁く。
目の前にいるこいつは危険だ!
だが、
「みぃつけた♪ アタシのカイン♪」
カインと言う聞き慣れない未知の用語に思考が鈍り、肉体の動作が追い付かなかった俺は、
「……………………!?」
左頬を揺さぶる重い衝撃をまともに食らい、物理的に真横にふっ飛ばされた。
「アハッ♪ 久しぶりだねカイン♪ 暫く見ない内に大分大きくなったねっ♪」
「お前っ!」
「怒ること無いよね♪ だっていつものカインならこのくらい避けれたじゃん♪」
「さっきからカイン、カインって誰だよ! 俺にはアベルって言う歴とした名前がある!」
俺はすかさず剣を抜き、その勢いのまま左下から右上に斬りあげるが、
「ふーん♪ ア・ベ・ル、ねぇ♪」
その剣を軽々と止める。
なんと親指と中指だけで。
「!?」
「思い出せないの? 君はアベルなんて名前じゃなくてカインだよ♪ 自分の名前くらい覚えなよ♪」
笑顔のまま、二本の指で鉄製の頑丈な剣を曲げていく。
その指はあまりに華奢なのに現実は違った。
「君はアルベール・ヴァルツァーとしての生涯を終えたんだ♪ せっかくカインとして動いてたのによりにもよってアベル。心残りがあるのかな♪ いつまでヴァルトの事を引きずってるんだい♪」
「なっ!? どう言うことだ!」
どうしてこいつが俺を知っている?
そもそも今の話からすると、カインとは間違いなく俺を指しているのだが、全くその記憶はない。
失われた記憶と関係しているのか?
「そのままの意味だよ♪」
見えない速度の蹴りに反応しきれず、側頭部を蹴飛ばされた。
転がる俺にゆっくりと付いていく。
「あの呪われた家から放逐されたんだからアルベール・ヴァルツァーとしての君は死んだも同然♪ それなのに気がかりなのか名前を忌まわしい帝国の庶民風に文字ってアベルにしたんでしょ♪」
ソフィーそっくりの少女は笑顔を冷酷な笑みに変えた。
「何で思い出せないのか意味がわからないけど、忘れてるなら自己紹介してあげるっ♪」
服の裾を掴み、深々とお辞儀をする。
目を閉じたその顔は、お喋りなことを除けば本当にソフィーだった。
「久しぶり、カイン♪ そして初めまして、アベル♪ ダリア教団、元救済の使徒の一人にして、黙示の賢人の現教主、パンドラです♪」
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
※救済の使徒、黙示の賢人については後述しますが両方ともダリア教団のグループです。
さて、このパンドラ。
アベルにとってはソフィーに瓜二つらしく、力量的にも精神的にも厄介な敵になるのは明白です。彼女の心境を吐露させる際は幕間か後日談で説明する予定です。
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