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Ⅳ
迷子用の行燈各種取り揃えております
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ヒルダは猿ぐつわを用意するのも面倒で、切り取った衣服の端を塊にして口にそのまま突っ込んだ。
真っ赤に染まった手袋を脱いで申し訳なく見下ろしたが、やっぱり弁償だろうなと肩を落とした。喉を突かれて絶息した大男の懐から短剣の鞘をベルトごと外してヒルダの腰に付け直すと、外側にぶら下げられた紋章に、視界の端で元ピエロが喘いだ。
「……スートライトの、家紋付きの短剣だと!?」
「……本当に知らなかったんですね」
嘆息とともに再び懐をまさぐり、奪われた宝飾品を全て回収する。こちらは汚れておらずほっとした。テーブルクロスを勝手に貰い受けることとして、一緒くたになるが丁寧に包んで、ジュストに向き直った。
「ジュストさま、申し訳ありません。さっきの者が言ったことと同じではありますが、こちらの方で一旦鉾を収めてはいただけませんか」
「君の怪我はないのか」
「ああ、全部返り血ですから、ご安心を」
「少しは拭け。水差しもそこにあったな。皮膚に血をつけたままでは不衛生だ」
「……ありがとうございます」
ハンカチをもらって礼を言ったヒルダだが、その場から動こうとはしない。ジュストはそれにむっとしたようで、ハンカチを取り上げて水で濡らし、ヒルダの顔をごしごしと拭き始めた。
「これ以上を見逃せというのは、君の兄が今日、報奨を授かったからか」
「そ、そう、です。ちょ、と、強いですジュストさま」
「む、すまない」
離してくれたので自分で顔を拭いたヒルダは、少しさっぱりした気分で首を振り、腰を抜かしている元ピエロと従僕を振り返った。
「今、この場で選んでください。バルメルク公爵家の嫡男とあたしを拐ってくるよう唆した者を守るか、それとも裏切るか。これだけの騒ぎが起こりながら、まだ誰もこの部屋には来ないということは、あなた方でも人員を掌握しきれていないということ。この者たちのように、あなた方を見捨てようとした輩が外には大勢いるのでしょう」
「もうすぐ我が家の騎士も到着するだろう。城の兵も来ているかもしれんが」
「……そんな、なぜ!?」
従僕が蒼白な顔で叫ぶが、なぜと言いたいのはヒルダとジュストの方だ。対策していなければ素直に拉致されたりなんてしない。
「あなた方はもはやここから逃げることができません。ですが、今はまだ、『なかったこと』にはできるんです。夜会で話の合ったジュストさまはこの家に招かれただけ。そこにこの無頼漢が闖入してきた、と……。ドルフさまはご嫡男を危険に晒したあなた方を疑うでしょうが、あなた方に心当たりがあるのであれば、それを素直にお話しいただけば、それに耳を傾けない方ではありません」
黒幕への忠誠を貫くか、黒幕を裏切って、情報源としてバルメルク家の保護下に組み入れられるか。前者の場合は罪人として公に晒され、後者の場合ではバルメルク家の内々で処理される。情報如何では酌量もある。
とはいえ、こうまで粗雑に「使われ」たのだ。黒幕への忠誠心を抱き続けられる者はいるだろうか。案の定、元ピエロはほとんど迷わなかった。
「……公子に、全てお話しします」
「そうですか。ジュストさま、騎士や兵士の方々にこの方に配慮をしていただくようお口添えをお願いできますか」
「どこまで当てになるやらだな」
「もちろん、証は立ててもらわなくてはなりません。方々がいらっしゃるまでに情報の精査や取捨はジュストさまにお任せしますが、あたしとしては手っ取り早く、ジュストさまの御身を守っていただくことをお願いしたいのです」
言いながら、ヒルダは短剣を抜いた。拭いてもわずかに曇った剣の切っ先は、椅子から立てない元ピエロの鼻先に突きつけられる。元ピエロと従僕がひっと息を呑んだ。
「この部屋で、助けが来るまでジュストさまを守り抜いてください。何が来ようとも、絶対に明け渡してはなりません。できなければ、今ここで、あなた方を斬ります」
単なる脅しにしては、傍らに死体と死体未満が転がっている。そして、それを作ったのはこのヒルダだった。女の身で、たった一人で男二人を簡単に倒せる腕前。
瞳を覗き込めば深淵が広がっている。笑おうとして失敗したように 変に歪んだ口角。血塗れの肢体。ひたりと揺るがぬ切っ先。
「承諾をお願いします」
元ピエロが必死に頷いたのを見て、ヒルダは短剣をしまった。
「この部屋に窓がなくてよかった。敵が来るとしたら扉からです。あたしが出たあと、閉めた扉の前にこの人たちを置いてください。時間稼ぎには丁度いいでしょう」
「君が出たあと?なにをするつもりだ」
大男の体をあちこち探って、ヒルダは短剣以外に素性のわかりそうなものがないか確認した。
「もうじきここに集う方々にはスートライトの関与を悟られては、今夜陛下が授けてくださった名誉が台無しになってしまいます。バルメルク家としても、この方の証言の立証を優先するべきでしょう」
「あいにくと、私はまだ一切合切承認したわけではないぞ」
ジュストを見上げれば、とんでもなく苦い顔をしていた。ヒルダはにやりとしたかったのに、また笑うのに失敗した。
「巻き込んでしまったのはあたしの方だったようですね。申し訳ありません」
「話を聞け」
「どうやら、スートライトはジュストさまではなくあたしだけに用があるみたいですし、ちょっと掃除してきます」
「スートライトとは縁が切れている君が、わざわざ出向く必要はない。君は我が家の者だ。ここで一緒に待っていればいい。どうせ陛下も父もスートライトの痕跡など見なかったふりをする」
ああ、どうして笑えないくせに泣きそうにはなるのだろう。ヒルダは立ち上がって、ジュストに深く深く頭を下げた。
「ご嫡男を危険に晒すような者ではいけませんでしょう。せっかく前向きに考えさせていただいていたのに、骨を折ってくださったあなたにも、ドルフさまにも他の方々にも、大変申し訳なく思っています」
「ヒルディア嬢!」
「ルフマンにも謝っておいてくれませんか。こんなあたしでは姉にはなれません……なにもかも精算していかないといけなかったのに、こんな様で、なにを偉ぶっていたんでしょうね……」
ふらりと扉へ向けて歩き出したヒルダの胴に、ジュストはとっさに腕を回した。肩を掴まなかったのは振り払われそうだったからだ。
「今のうちに扉を塞げ!」
「ジュストさま、行かせてください」
「暴れるなよ、ヒルディア嬢。私はひ弱だからな。君にふっ飛ばされたら怪我するからな。……人間でなくても椅子でもテーブルでもなんでもいいから早く運べ!」
「時と場合があると思います」
元ピエロと従僕がおろおろと動き始めたのを見たヒルダがいっそう強くもがき始めたので、ジュストはその目を覆い隠して肩に後頭部を押し付けた。これでヒルダが血塗れでなければ、背中に覆い被さって睦言を囁いているようにも見えただろうか。だがジュストは今度こそハルトに首を引っこ抜かれるなんて悠長に考えていられないほど必死だった。
行かせてはならないと直感が叫んでいた。
「ヒルディア嬢、君がなんと言おうと、父と私が決めた以上はバルメルク家との縁は切れないと思え。大体精算とはなんだ。父が君を受け入れたのだろうが。その時から全部承知の上だ」
はじめは時勢に流されるばかり、できることといえば逃げることくらいの、意志薄弱な娘だと思っていた。しかし折れても立ち上がる強さがあり、柳に風と受け流すしなやかさを持っていた。隙を見れば反撃もためらいなく。勝負心にもなると女性にしておくには惜しいほど。
なによりも驚き戦慄したのは、大事に囲い大事に奉じている兄妹を「使う」ことにためらいも誤魔化しもなかったこと。最善のためには掌から出して机上に移してみせ、他の条件と同列に扱う。そして、兄妹自身が、ヒルダに使われることにはなんら拒絶を見せなかった。
驕りもなく遠慮もなく、冷徹なまでに微笑む姿に、鳥肌すら立った。父が認めたことを理解したと同時に、ジュスト自身が否が応でも認めてしまったのだ。名目だけでなく、実際のバルメルク家後継者候補として。
「君は私の要請に従って夜会に出たんだろう。ここはその延長線だ。君自身が付き添いしかしないと言って徹底しておいて、今さら反故にするつもりか?」
「それこそ時と場合です。全部、あたしが自分ではなにも成さなかったツケがここに来てることが問題なんですよ。最初の最後まで、あたしは責任から逃げ回っていた……あの人や兄上、ドルフさまに押し付けて、あたしは仕事をした気になっていた。表に立てないからって、そんな言い訳を本気で思っていて、なんて馬鹿らしい」
「暴れるな!大人しくできないなら養子縁組すっ飛ばして私の嫁にしてやろうか!?」
ジュストの手のひらに瞼が何度も擦れる感触があった。密着しているせいでヒルダの様子が全身から伝わってくる。喘ぐように大きい呼吸も、わずかな震えですらも。
「ヒルディア嬢。君がまだ行くと言うならば、私は保護された瞬間に君との結婚を宣言してやる。これで君は晴れてバルメルク家の一員だ。我が家の総力を上げて君を囲い込んでやる。二度とスートライトなどに手出しもさせないようにな」
「……ご、ごじょう、だんを」
「冗談?父から下働きまで、全員が飛び上がって喜ぶことは間違いないぞ。ついぞ私の口から嫁にしたい娘の名前など一人も出てこなかったのだからな。その日のうちに挙式だなんだと大騒ぎだ。あの父の喜びの舞を見てみたくはないか?」
泣くルフマンをあやすのと同じように、柔らかく、温かく。ただそこに注ぐ熱はルフマンへのものとは種類が違う。両手が塞がっているので、声で愛撫するしかない。
「ヒルディア嬢――ヒルダ」
力が弱まったように感じた瞬間だった。
がたんと音がして、全員がはっとした。続いてがたがたと揺する音が鳴り、視線が即席のバリケードを築いている途中の扉へと向かう。微妙に隙間が空いていて、そこから「あ、ここかな」と声が漏れた。
一拍の空白。
盛大な破壊音とともに、扉の前の重厚な椅子数脚が吹っ飛んだ。
近くにいた元ピエロと従僕が腰を抜かした。ゴトゴトと転がっていく椅子の向こう、無理やりぶち開けられた扉から、こつりと靴音が鳴り入る。
「……なにこの状況。ディア、それ怪我……返り血っぽいね。でもちゃんと無傷?」
刺繍も装飾品もない、簡素なシャツにズボンにブーツ。あまりにも軽装すぎる身なりと軽すぎる口調、年若い容貌。
誰もが声を失う中、ヒルダは滲む瞼の裏側で、その声の主を正確に描いた。
「ラス」
ニコラスという名前しか知らない。得体のしれない変態で、他国の間者で。
「ラス、来て」
そして、ヒルダを堕落させようと甘露な毒を囁く悪魔だ。
その影を捕まえるように腕を伸ばす。見えなくてもそこにいるとわかっている。届かないならあちらから近づいてくれる。だけどそれじゃあ足りない。「ラス」とまた呼んだ。ジュストの体がへばりついたまま、ヒルダはじりじりと足を踏み出した。
ヒルダの方から欲することになるなんて、これまで思いもしていなかった。悪魔との契約は地獄への第一歩だ。けれど、そうしなくてはならないから契約する者は絶えないのだと、ヒルダは頭の片隅で納得した。
この温かく泣き縋ってしまいそうな腕から今すぐ逃れて、行かなくてはならない場所がある。
やらなくてはならないことがある。
それさえ済んだら、地獄へ堕ちたって文句はない。
そう思う者に、悪魔は応えてくれる。
「あなたの国にでもどこにでもついていってあげるから、あたしをここから奪い去って。――スートライト領に、今すぐ、連れて行って!」
ぱしっと手を取られ、引っ張られた。晴れた視界にニコラスの顔がいっぱいに映り込んでいる。ものすごく嬉しそうに笑っていて、迷惑がるどころじゃなかった。
「酷い殺し文句言うなあ。で?故郷にはどんな寄り道?」
「……ヒルディア・スートライトの、息の根を止めてくる」
ヒルダが堕ちるのを、地の底で両手を広げて待つような人だ。事情なんてどうでもいいことは聞かないで、本当に堕ちてきてくれるかだけを確かめる甘く冷ややかな声に、ヒルダは息を整えてから返した。
絶縁なんて甘っちょろい真似で、なぜ過去のヒルダはやりきった気分になっていたのだろう。近い未来に破綻してくれることを願う前に、どうしてヒルダは自ら手を下さなかったのだろう。
ヒルダは無冠であったけれど無位ではない。もう頑張れないからと全部放り捨てたけれど――そんなだから、「ヒルディア・スートライト」の責任が、無駄に生き永らえている。
「全部壊して、更地にするの。復興だけで済むなら兄上にとってそれが一番楽だわ。アデルだってこれ以上脅かされずに済む」
政治的配慮によって、この夜のスートライトの所業は明るみには出ない。ヒルダもこれからこの屋敷のスートライトの痕跡を全て消し去るつもりだ。
でも、公にできないからとなにもなかったことにしてしまえば、これまでと同じだ。だからといっても、兄もアデルも、他の誰でも、目立つから動けない。
たった一人を除いて。
「あたしの得意分野よ。時間はかけない」
「手伝いはいる?」
「連れて行ってくれるだけで大丈夫」
「……ヒルディア嬢!行くなと言っているだろうが!」
「ジュストさま、そういうことですので。結婚宣言したら、直後に花嫁に逃げられた不名誉まで公表しちゃうことになりますから、おすすめしません」
「ええ、あんた求婚されてんの?おれからもされといてなにそれすんごい罪作り」
「不満?」
「いーや、掻っ攫うには丁度いい役どころで大満足。ってのはちょっと早いかな。未練が来てるよ」
ヒルダが聞き返す前に、荒々しい足音がどんどんと近づいてくるのに気づいた。大勢の、武装した物音もする。ジュストの救援が来たのだ。
ヒルダは焦った。この屋敷に潜り込んだスートライトの者をまだ始末しきれていない。うまく逃げられるならまだしも、包囲からの制圧がこういう場合の基本、その網を掻い潜ることは困難だ。すなわち、ヒルダもまたここから出られなくなる。
「ラス、あなたなら出られる?」
「もっちろんって言いたいとこなんだけど。未練を相手にすんのは厄介だよね、しつこくて」
一番早くこの部屋にたどり着いたのは、バルメルク家の騎士でも城の兵士でもなく、セシルの従者兼護衛として夜会のときも別室で待機していたはずのシドだった。
「ヒルダ!公子!」
駆けつけた一瞬で敵を捕捉したシドは、抜き手も見せぬ速さと鋭い踏み込みでニコラスに斬りかかった。ヒルダでさえ反応が遅れたのに、ニコラスはヒルダを抱き上げる余裕まで見せて素早く躱した。
「彼女を離しなさい」
「ちょっと無理」
「では死ね」
いつも落ち着いた物腰で冷静に言葉を選ぶシドが、烈火のごとく目を燃やして追いすがった。扉を背後に取っているところだけが残っている理性かもしれない。ヒルダ一人ではこれを越えることは無理だ。武術の腕前もさることながら、大事な兄の手足で、ヒルダの数少ない友人の一人だ。攫われたヒルダのために、商会関係だとこじつけてでも兄が送り出してくれたのだと嫌でも察した。また泣きたくなった。
「どうする、ディア?」
「ラス……お願い」
行ってと言おうとした声が、喉の奥で消えた。かわりになんでと声が漏れそうになって、すぐに理解に塗りつぶされる。
ニコラスでもさすがに危うく、飛んできたナイフを弾き飛ばした。
「『落星』まで揃ったか。張り切ってんね」
シドを兄が仕向けたなら、夜会に全く関係ないはずの商会の傭兵の彼らは誰に?
そんなの考えなくてもわかる。商会関係者とこじつけるなら、シドよりも傭兵の方がふさわしい。取りこぼしを拾うように、隙間を埋めるように補佐する。それがなんでも優秀すぎる兄の秘書に求められる仕事だとヒルダは教えてもらった。
「アレン」
ジャックとセイルが、シドの両脇から襲いかかってきた。
ーーー
元ピエロと従僕は部屋の隅で全力で空気中。
セルシェン→セイル
真っ赤に染まった手袋を脱いで申し訳なく見下ろしたが、やっぱり弁償だろうなと肩を落とした。喉を突かれて絶息した大男の懐から短剣の鞘をベルトごと外してヒルダの腰に付け直すと、外側にぶら下げられた紋章に、視界の端で元ピエロが喘いだ。
「……スートライトの、家紋付きの短剣だと!?」
「……本当に知らなかったんですね」
嘆息とともに再び懐をまさぐり、奪われた宝飾品を全て回収する。こちらは汚れておらずほっとした。テーブルクロスを勝手に貰い受けることとして、一緒くたになるが丁寧に包んで、ジュストに向き直った。
「ジュストさま、申し訳ありません。さっきの者が言ったことと同じではありますが、こちらの方で一旦鉾を収めてはいただけませんか」
「君の怪我はないのか」
「ああ、全部返り血ですから、ご安心を」
「少しは拭け。水差しもそこにあったな。皮膚に血をつけたままでは不衛生だ」
「……ありがとうございます」
ハンカチをもらって礼を言ったヒルダだが、その場から動こうとはしない。ジュストはそれにむっとしたようで、ハンカチを取り上げて水で濡らし、ヒルダの顔をごしごしと拭き始めた。
「これ以上を見逃せというのは、君の兄が今日、報奨を授かったからか」
「そ、そう、です。ちょ、と、強いですジュストさま」
「む、すまない」
離してくれたので自分で顔を拭いたヒルダは、少しさっぱりした気分で首を振り、腰を抜かしている元ピエロと従僕を振り返った。
「今、この場で選んでください。バルメルク公爵家の嫡男とあたしを拐ってくるよう唆した者を守るか、それとも裏切るか。これだけの騒ぎが起こりながら、まだ誰もこの部屋には来ないということは、あなた方でも人員を掌握しきれていないということ。この者たちのように、あなた方を見捨てようとした輩が外には大勢いるのでしょう」
「もうすぐ我が家の騎士も到着するだろう。城の兵も来ているかもしれんが」
「……そんな、なぜ!?」
従僕が蒼白な顔で叫ぶが、なぜと言いたいのはヒルダとジュストの方だ。対策していなければ素直に拉致されたりなんてしない。
「あなた方はもはやここから逃げることができません。ですが、今はまだ、『なかったこと』にはできるんです。夜会で話の合ったジュストさまはこの家に招かれただけ。そこにこの無頼漢が闖入してきた、と……。ドルフさまはご嫡男を危険に晒したあなた方を疑うでしょうが、あなた方に心当たりがあるのであれば、それを素直にお話しいただけば、それに耳を傾けない方ではありません」
黒幕への忠誠を貫くか、黒幕を裏切って、情報源としてバルメルク家の保護下に組み入れられるか。前者の場合は罪人として公に晒され、後者の場合ではバルメルク家の内々で処理される。情報如何では酌量もある。
とはいえ、こうまで粗雑に「使われ」たのだ。黒幕への忠誠心を抱き続けられる者はいるだろうか。案の定、元ピエロはほとんど迷わなかった。
「……公子に、全てお話しします」
「そうですか。ジュストさま、騎士や兵士の方々にこの方に配慮をしていただくようお口添えをお願いできますか」
「どこまで当てになるやらだな」
「もちろん、証は立ててもらわなくてはなりません。方々がいらっしゃるまでに情報の精査や取捨はジュストさまにお任せしますが、あたしとしては手っ取り早く、ジュストさまの御身を守っていただくことをお願いしたいのです」
言いながら、ヒルダは短剣を抜いた。拭いてもわずかに曇った剣の切っ先は、椅子から立てない元ピエロの鼻先に突きつけられる。元ピエロと従僕がひっと息を呑んだ。
「この部屋で、助けが来るまでジュストさまを守り抜いてください。何が来ようとも、絶対に明け渡してはなりません。できなければ、今ここで、あなた方を斬ります」
単なる脅しにしては、傍らに死体と死体未満が転がっている。そして、それを作ったのはこのヒルダだった。女の身で、たった一人で男二人を簡単に倒せる腕前。
瞳を覗き込めば深淵が広がっている。笑おうとして失敗したように 変に歪んだ口角。血塗れの肢体。ひたりと揺るがぬ切っ先。
「承諾をお願いします」
元ピエロが必死に頷いたのを見て、ヒルダは短剣をしまった。
「この部屋に窓がなくてよかった。敵が来るとしたら扉からです。あたしが出たあと、閉めた扉の前にこの人たちを置いてください。時間稼ぎには丁度いいでしょう」
「君が出たあと?なにをするつもりだ」
大男の体をあちこち探って、ヒルダは短剣以外に素性のわかりそうなものがないか確認した。
「もうじきここに集う方々にはスートライトの関与を悟られては、今夜陛下が授けてくださった名誉が台無しになってしまいます。バルメルク家としても、この方の証言の立証を優先するべきでしょう」
「あいにくと、私はまだ一切合切承認したわけではないぞ」
ジュストを見上げれば、とんでもなく苦い顔をしていた。ヒルダはにやりとしたかったのに、また笑うのに失敗した。
「巻き込んでしまったのはあたしの方だったようですね。申し訳ありません」
「話を聞け」
「どうやら、スートライトはジュストさまではなくあたしだけに用があるみたいですし、ちょっと掃除してきます」
「スートライトとは縁が切れている君が、わざわざ出向く必要はない。君は我が家の者だ。ここで一緒に待っていればいい。どうせ陛下も父もスートライトの痕跡など見なかったふりをする」
ああ、どうして笑えないくせに泣きそうにはなるのだろう。ヒルダは立ち上がって、ジュストに深く深く頭を下げた。
「ご嫡男を危険に晒すような者ではいけませんでしょう。せっかく前向きに考えさせていただいていたのに、骨を折ってくださったあなたにも、ドルフさまにも他の方々にも、大変申し訳なく思っています」
「ヒルディア嬢!」
「ルフマンにも謝っておいてくれませんか。こんなあたしでは姉にはなれません……なにもかも精算していかないといけなかったのに、こんな様で、なにを偉ぶっていたんでしょうね……」
ふらりと扉へ向けて歩き出したヒルダの胴に、ジュストはとっさに腕を回した。肩を掴まなかったのは振り払われそうだったからだ。
「今のうちに扉を塞げ!」
「ジュストさま、行かせてください」
「暴れるなよ、ヒルディア嬢。私はひ弱だからな。君にふっ飛ばされたら怪我するからな。……人間でなくても椅子でもテーブルでもなんでもいいから早く運べ!」
「時と場合があると思います」
元ピエロと従僕がおろおろと動き始めたのを見たヒルダがいっそう強くもがき始めたので、ジュストはその目を覆い隠して肩に後頭部を押し付けた。これでヒルダが血塗れでなければ、背中に覆い被さって睦言を囁いているようにも見えただろうか。だがジュストは今度こそハルトに首を引っこ抜かれるなんて悠長に考えていられないほど必死だった。
行かせてはならないと直感が叫んでいた。
「ヒルディア嬢、君がなんと言おうと、父と私が決めた以上はバルメルク家との縁は切れないと思え。大体精算とはなんだ。父が君を受け入れたのだろうが。その時から全部承知の上だ」
はじめは時勢に流されるばかり、できることといえば逃げることくらいの、意志薄弱な娘だと思っていた。しかし折れても立ち上がる強さがあり、柳に風と受け流すしなやかさを持っていた。隙を見れば反撃もためらいなく。勝負心にもなると女性にしておくには惜しいほど。
なによりも驚き戦慄したのは、大事に囲い大事に奉じている兄妹を「使う」ことにためらいも誤魔化しもなかったこと。最善のためには掌から出して机上に移してみせ、他の条件と同列に扱う。そして、兄妹自身が、ヒルダに使われることにはなんら拒絶を見せなかった。
驕りもなく遠慮もなく、冷徹なまでに微笑む姿に、鳥肌すら立った。父が認めたことを理解したと同時に、ジュスト自身が否が応でも認めてしまったのだ。名目だけでなく、実際のバルメルク家後継者候補として。
「君は私の要請に従って夜会に出たんだろう。ここはその延長線だ。君自身が付き添いしかしないと言って徹底しておいて、今さら反故にするつもりか?」
「それこそ時と場合です。全部、あたしが自分ではなにも成さなかったツケがここに来てることが問題なんですよ。最初の最後まで、あたしは責任から逃げ回っていた……あの人や兄上、ドルフさまに押し付けて、あたしは仕事をした気になっていた。表に立てないからって、そんな言い訳を本気で思っていて、なんて馬鹿らしい」
「暴れるな!大人しくできないなら養子縁組すっ飛ばして私の嫁にしてやろうか!?」
ジュストの手のひらに瞼が何度も擦れる感触があった。密着しているせいでヒルダの様子が全身から伝わってくる。喘ぐように大きい呼吸も、わずかな震えですらも。
「ヒルディア嬢。君がまだ行くと言うならば、私は保護された瞬間に君との結婚を宣言してやる。これで君は晴れてバルメルク家の一員だ。我が家の総力を上げて君を囲い込んでやる。二度とスートライトなどに手出しもさせないようにな」
「……ご、ごじょう、だんを」
「冗談?父から下働きまで、全員が飛び上がって喜ぶことは間違いないぞ。ついぞ私の口から嫁にしたい娘の名前など一人も出てこなかったのだからな。その日のうちに挙式だなんだと大騒ぎだ。あの父の喜びの舞を見てみたくはないか?」
泣くルフマンをあやすのと同じように、柔らかく、温かく。ただそこに注ぐ熱はルフマンへのものとは種類が違う。両手が塞がっているので、声で愛撫するしかない。
「ヒルディア嬢――ヒルダ」
力が弱まったように感じた瞬間だった。
がたんと音がして、全員がはっとした。続いてがたがたと揺する音が鳴り、視線が即席のバリケードを築いている途中の扉へと向かう。微妙に隙間が空いていて、そこから「あ、ここかな」と声が漏れた。
一拍の空白。
盛大な破壊音とともに、扉の前の重厚な椅子数脚が吹っ飛んだ。
近くにいた元ピエロと従僕が腰を抜かした。ゴトゴトと転がっていく椅子の向こう、無理やりぶち開けられた扉から、こつりと靴音が鳴り入る。
「……なにこの状況。ディア、それ怪我……返り血っぽいね。でもちゃんと無傷?」
刺繍も装飾品もない、簡素なシャツにズボンにブーツ。あまりにも軽装すぎる身なりと軽すぎる口調、年若い容貌。
誰もが声を失う中、ヒルダは滲む瞼の裏側で、その声の主を正確に描いた。
「ラス」
ニコラスという名前しか知らない。得体のしれない変態で、他国の間者で。
「ラス、来て」
そして、ヒルダを堕落させようと甘露な毒を囁く悪魔だ。
その影を捕まえるように腕を伸ばす。見えなくてもそこにいるとわかっている。届かないならあちらから近づいてくれる。だけどそれじゃあ足りない。「ラス」とまた呼んだ。ジュストの体がへばりついたまま、ヒルダはじりじりと足を踏み出した。
ヒルダの方から欲することになるなんて、これまで思いもしていなかった。悪魔との契約は地獄への第一歩だ。けれど、そうしなくてはならないから契約する者は絶えないのだと、ヒルダは頭の片隅で納得した。
この温かく泣き縋ってしまいそうな腕から今すぐ逃れて、行かなくてはならない場所がある。
やらなくてはならないことがある。
それさえ済んだら、地獄へ堕ちたって文句はない。
そう思う者に、悪魔は応えてくれる。
「あなたの国にでもどこにでもついていってあげるから、あたしをここから奪い去って。――スートライト領に、今すぐ、連れて行って!」
ぱしっと手を取られ、引っ張られた。晴れた視界にニコラスの顔がいっぱいに映り込んでいる。ものすごく嬉しそうに笑っていて、迷惑がるどころじゃなかった。
「酷い殺し文句言うなあ。で?故郷にはどんな寄り道?」
「……ヒルディア・スートライトの、息の根を止めてくる」
ヒルダが堕ちるのを、地の底で両手を広げて待つような人だ。事情なんてどうでもいいことは聞かないで、本当に堕ちてきてくれるかだけを確かめる甘く冷ややかな声に、ヒルダは息を整えてから返した。
絶縁なんて甘っちょろい真似で、なぜ過去のヒルダはやりきった気分になっていたのだろう。近い未来に破綻してくれることを願う前に、どうしてヒルダは自ら手を下さなかったのだろう。
ヒルダは無冠であったけれど無位ではない。もう頑張れないからと全部放り捨てたけれど――そんなだから、「ヒルディア・スートライト」の責任が、無駄に生き永らえている。
「全部壊して、更地にするの。復興だけで済むなら兄上にとってそれが一番楽だわ。アデルだってこれ以上脅かされずに済む」
政治的配慮によって、この夜のスートライトの所業は明るみには出ない。ヒルダもこれからこの屋敷のスートライトの痕跡を全て消し去るつもりだ。
でも、公にできないからとなにもなかったことにしてしまえば、これまでと同じだ。だからといっても、兄もアデルも、他の誰でも、目立つから動けない。
たった一人を除いて。
「あたしの得意分野よ。時間はかけない」
「手伝いはいる?」
「連れて行ってくれるだけで大丈夫」
「……ヒルディア嬢!行くなと言っているだろうが!」
「ジュストさま、そういうことですので。結婚宣言したら、直後に花嫁に逃げられた不名誉まで公表しちゃうことになりますから、おすすめしません」
「ええ、あんた求婚されてんの?おれからもされといてなにそれすんごい罪作り」
「不満?」
「いーや、掻っ攫うには丁度いい役どころで大満足。ってのはちょっと早いかな。未練が来てるよ」
ヒルダが聞き返す前に、荒々しい足音がどんどんと近づいてくるのに気づいた。大勢の、武装した物音もする。ジュストの救援が来たのだ。
ヒルダは焦った。この屋敷に潜り込んだスートライトの者をまだ始末しきれていない。うまく逃げられるならまだしも、包囲からの制圧がこういう場合の基本、その網を掻い潜ることは困難だ。すなわち、ヒルダもまたここから出られなくなる。
「ラス、あなたなら出られる?」
「もっちろんって言いたいとこなんだけど。未練を相手にすんのは厄介だよね、しつこくて」
一番早くこの部屋にたどり着いたのは、バルメルク家の騎士でも城の兵士でもなく、セシルの従者兼護衛として夜会のときも別室で待機していたはずのシドだった。
「ヒルダ!公子!」
駆けつけた一瞬で敵を捕捉したシドは、抜き手も見せぬ速さと鋭い踏み込みでニコラスに斬りかかった。ヒルダでさえ反応が遅れたのに、ニコラスはヒルダを抱き上げる余裕まで見せて素早く躱した。
「彼女を離しなさい」
「ちょっと無理」
「では死ね」
いつも落ち着いた物腰で冷静に言葉を選ぶシドが、烈火のごとく目を燃やして追いすがった。扉を背後に取っているところだけが残っている理性かもしれない。ヒルダ一人ではこれを越えることは無理だ。武術の腕前もさることながら、大事な兄の手足で、ヒルダの数少ない友人の一人だ。攫われたヒルダのために、商会関係だとこじつけてでも兄が送り出してくれたのだと嫌でも察した。また泣きたくなった。
「どうする、ディア?」
「ラス……お願い」
行ってと言おうとした声が、喉の奥で消えた。かわりになんでと声が漏れそうになって、すぐに理解に塗りつぶされる。
ニコラスでもさすがに危うく、飛んできたナイフを弾き飛ばした。
「『落星』まで揃ったか。張り切ってんね」
シドを兄が仕向けたなら、夜会に全く関係ないはずの商会の傭兵の彼らは誰に?
そんなの考えなくてもわかる。商会関係者とこじつけるなら、シドよりも傭兵の方がふさわしい。取りこぼしを拾うように、隙間を埋めるように補佐する。それがなんでも優秀すぎる兄の秘書に求められる仕事だとヒルダは教えてもらった。
「アレン」
ジャックとセイルが、シドの両脇から襲いかかってきた。
ーーー
元ピエロと従僕は部屋の隅で全力で空気中。
セルシェン→セイル
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