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大事な宝
しおりを挟む「貴様! 止まれ!」
門番共に止められ先に行くことができない。
エルメスが原因だろう。
領主の娘だから、門番が知らなかったらおかしい。
「大丈夫です。 この人は盗賊に襲われた私を助けてくれたんです!」
「なんと!? 領主様の娘を襲う等、愚かな連中だ。 そいつらは今どこに?」
「セツナ様が全員倒してくれました」
面倒くさいので説明は全部エルメスにしてもらい、俺は端の方で待つことにした。
暇なので門の先に広がる異世界の町を眺める。
ヨーロッパ風の世界観で、家は石やレンガで出来ている。
露店等が開かれ、けっこうな人の量で賑わっている事から、いい領地なのが伺える。
せっかく異世界に来たのだから楽しまければ、そんな事を考えていると門番に声をかけられる。
「先程は済まなかった! それとお嬢様を助けてくれて、ありがとう!」
エルメスとの話が終わったようで、俺に対して不信は無くなったみたいだ。
「それと、君には領主様の所まで来てもらう事になったが、その前にここに死体を全部置いていってもらう」
という事は、エルメスの両親に会わなければいけないのか。
面倒事から逃げたい気持ちはあるが、彼女を送り届けるまで、俺の仕事だと思う。
最後までやるか……
門から入って、すぐの所にある広場に【アイテムボックス】から取り出した死体を並べていく。
「くそっ……本当に死んじまうなんて……」
「盗賊なんて許せねえ!」
「皆、俺達の知り合いだ」
仲間の兵士の死体を見て悲しむ門番達。
俺は盗賊を殺しても何とも思わなかったし、エルメスを守る為に死んだ兵士達にも悲しい感情はないが、こうやって仲間が悲しむのを見ると辛いものがあるな。
大事な人を無くす辛さはよく分かる。
「ごめんなさい……私をいつも守ってくれた兵士の皆さん、どうか安らかにお眠り下さい」
命を懸けて守ってくれた兵士にお別れするエルメス。
俺は冷静さを保ちつつ死んだ人の数を数えたが兵士が、30人に対して盗賊は70人。
こんなに盗賊って多いものだろうかと疑問に感じてしまう。
それに、領主の娘を狙うなんてリスクが有り過ぎる。
まるで誰かが計画的に犯行を企てたかのような……いやいや、考えるのは辞めよう。
これ以上、俺は面倒事に関わるつもりはない。
別れを済ませたエルメスと共に領主邸へと向かう。
◆◆◆
「よく娘を助けてくれた! これは、そのお礼だ、受け取ってくれ」
領主エドワード・リミアントが執事に持ってこさせた豪華な宝石箱を、テーブルの上に置く。
俺は了承を得て、宝石箱を開けて中を確かめる。
「金貨100枚入っている」
意匠を凝らした宝箱だけでも凄い価値がありそうなのに、さらに金貨100枚も貰える。
金貨がどれほどの価値があるか分からないが、安くはないだろう。
正直な気持ちとしては、初めて目にするピカピカして綺麗な金貨に目を奪われる。
だが心は奪われてはいない。
「金はいりません!」
「な、何だと!? 受け取らぬというのか?」
「はい! 報酬なら、すでにエルメスから貰っています!」
そう、この世で最も価値ある物。
「それは本当なのかエルメス?」
領主エドワードの隣に座るエルメスが顔を真っ赤にさせてスカートを抑える。
屋敷に帰って来てから、ずっとテーブルで話してたから、まだ下着は履いてない。
「エルメス答えなさい」
「はい……お礼は渡しましたが、そこまで価値のある物ではありません」
「ならば、この金貨も受け取ってくれ! そうでないと私の気がすまん」
俺を甘く見るなよ……報酬はパンティーとかエロい事でしか受け取る気はない!
金なんかで俺の心は動いたりしない!
「エルメスから貰った物は、この世で最も価値のある物! 俺にとって、それ以上の物は存在しない」
金なんて無くても【スキル作成】のチートスキルが有るから生きていける。
だけど、パンティーが無かったら俺は死ぬ……いくらチートスキルが有るとは言え、俺の心を救えるのはパンティーだけだ。
「そこまで娘に惚れているのか?」
何を勘違いしたのか、とんでもない事を言い出した。
誤解だが、このままにしといた方が話しやすいかもしれない。
金で何でも言う事を聞くと思われたくないから。
「ああ! エルメスは俺の女だ!」
「平民の分際で、よく父親の前でそんなセリフを言えるものだ! 本当であれば不敬で罪に問いたいが、娘の命の恩人といことで、今回は見逃そう。」
かなり激怒している。
ここで真実である、エルメスのパンティー貰った事を話したら、もっとブチ切れるだろうな……
「出ていけ! 娘はやらん! とっとと帰れ」
「ふん! 帰ってやるよ」
ふぅ~話が長過ぎて疲れたー
やっと解放された。
貴族なんかと関わると碌な事なさそうだから、これで良かったと思ってる。
国王、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士の順番で偉いらしいのだが、エドワードは3番目に偉い侯爵だ。
そんな偉い奴となんて関わりたくない、一緒に居るだけで気が滅入る。
俺は豪華な屋敷を出て、入って来た時の門へと向かう。
その途中で追いかけて来たエルメスに止められる。
「セツナ様、お待ち下さい!」
「何だよ? 俺は早く帰りたいんだ」
一刻も早くここを出たいのだが……何の用だろうか?
「先程言った事は本当なのでしょうか?」
えーと、何だっけ?
パンティーの事か?
「ああ! 俺の宝だ!!!」
「きゃあっ!」
何だろう何か嬉しそうにモジモジしてるが、パンティーを脱がされたのが、そんなに嬉しかったのだろうか?
それなら今度また貰ってやるか!
「次会ったら、貰ってやるよ」
「はっ、はいっ!」
嬉しそうに小さくガッツポーズするエルメスを放置して、俺は門を出て今日泊まる宿を探しに向かう。
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