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14 沖田惣次郎
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のどかな春の日射しである。
山口と前澤は、甲州道中を、甲府へと向かって歩いていた。
ゆるゆると歩いて府中に泊まり、急ぐ旅ではなし、今日ものんびりと出発した。
日野の渡しで多摩川をわたり、遠く高幡不動の山をのぞむ、見渡すかぎりの田圃を抜け、日野宿にさしかかったのは、まだ午前だった。
ゆっくり歩むそのふたりを、背中に漆塗りのつづらを背負い、剣術道具をくくりつけた男が、飛ぶような勢いで追い抜いてゆく。
石田散薬という幟を、風にはためかせながら、薬売りは、立派な長屋門のなかに入っていった。
「おい、見たか? 今の薬売りの格好を」
前澤が、眼を丸くして、山口に向きなおった。
「とくにめずらしくもあるまい。ここいらへんは、将軍様の御領で、百姓、町人でも、盛んに剣術をやる土地柄だ」
「なるほど……道場も、たくさんありそうだな」
「八王子横山宿には、天然理心流の増田道場、大平真鏡流の塩野道場、北辰一刀流の横川道場、甲源一刀流の比留間道場がある」
「あの比留間半造か……行ったことがあるのか?」
「ああ。以前にな……」
「で、勝ったのか?」
「負けた。相手は、あの比留間半造だぞ。しかも、そのとき俺は、まだ十六の小僧だ……勝てたら驚きだ」
比留間の名は、江戸にまで轟いており、のちに紀州藩支藩の剣術指南役になったほどの腕前である。
「比留間と男谷は、こないだの狸おやじとならんで、別格ってやつか」
前澤の何気ないひと言に、山口は、男谷信友を思い浮かべた。
山口の剣才は際立っていたが、無敗だったわけでは、もちろんなく、何度も負けたことがある。
それは、自分の実力が、どのあたりにあって、相手に勝つためには、こういう努力を、これぐらいしなければならない……。
という、対処法のある負け方だった。
――しかし男谷は、そうではなかった。
男谷の剣は、まるで悪夢のように、つかみどころがなく、どれだけ努力をすれば、そこにたどり着けるのか、それが、まったく見えなかった。
ふたりは、話しながら、二棟並んだ、長屋門を構えた屋敷の前にさしかかる。
堂々たる構えからして、どうやら宿場の本陣らしい。
長屋門の東室は、道場になっているようだが、まだ大工が普請しているらしく、鋸をひく音がきこえている。庭で剣術を稽古しているのか、竹刀を打ちあう音が、遠くから響いていた。
竹刀の音に、山口がちらりと視線をおくるが、そのままとおりすぎた。
その長屋門は、日野宿脇本陣のものである。通称、下佐藤こと、名主の佐藤彦五郎の屋敷であった。
先年の火事で焼けてしまい、先ごろ新築したばかりなので、檜の香りが漂ってくるような、汚れひとつない建物だ。
屋敷の庭では、井上松五郎をはじめ、日野宿に住む天然理心流の門弟たちが、竹刀で打ちあっている。
その様子を、いかつい顔のたくましい男が、腕を組みながら、厳しい眼差しで見つめていた。
鑿で岩を荒っぽく削ったような顔に、底光りした目の、ゴツゴツしたこの男は、宮川勝太。のちの近藤勇である。
「かっちゃん、来てたのか。周助先生は、どうしたんだ?」
先ほど門に飛びこんでいった、剣術道具をくくりつけた男が、大きな声できいた。もちろん、歳三である。
「おお、トシ。義父は、脚の具合が悪くてな……しばらくは、俺が稽古をつけるよ。なんだ、いま商いの帰りか。家に寄らなくていいのか?」
「なあに、かまうもんか。兄貴の説教を喰らうより、竹刀で叩かれたほうがマシさ」
「トシ……いい加減、誓紙をだして正式に入門したらどうだ?」
「かっちゃんが、四代目を継いだらそうするよ」
「まったく、おまえは……」
歳三が、その話には、触れてほしくないようなので、勝太は話題をかえた。
「ところで、きいたかトシ。例の盗賊が、また出たって話を……」
「ああ、それなら、小野路の橋本ん家に行ったとき、噂になってたよ。八王子八木宿の絹問屋が狙われて、用心棒が、斬り死にしたらしいじゃねえか」
「おかげで金蔵は、無事だったそうだが、殺られたのは、なんと、北辰一刀流の免許らしいぞ」
「おっかねえな。盗賊んなかに、剣術の得意なやつがいるとはよ」
歳三が、少しも怖くなさそうな声で言う。
「ふん。俺が用心棒なら盗人なんぞ、全員返り討ちにしてやるんだが」
「ああ、かっちゃんは、盗人をやっつけてるもんなあ……」
嘉永二年のことである。
勝太は十六歳。天然理心流に入門して間もないころの話だ。
調布の上石原にある勝太の家に、父親の留守を狙って、盗賊が押し入った。
それに気づいた、同じころ入門した兄の粂太郎が、刀をとって、盗賊に斬りかかろうとすると……。
「兄ちゃん。賊は、盗みに入ったばかりで気が立ってる……いま俺たちが出ていったら、必死で抵抗するはずだ。
やつらが逃げるときなら、もう安心して油断しているから、その機会に仕掛けるのが兵法だ」
この言葉に納得した粂太郎は、勝太に従い、賊が獲物を抱え、まさに逃げようとしたとき、
「待てっ!」
と、声をかけ、斬りかかった。
あわてたのは、盗賊である。
すっかり安心したところで反撃にあい、獲物を投げだして、ほうほうの体で逃げてゆく。
勝太は、なおも追撃しようとする粂太郎に向かって、
「兄ちゃん、深追いは禁物だ。やつらも必死のはず……窮鼠猫を噛むのたとえがある。このへんで、やめておこう」
と、諫めた。
この話は、たちまち近隣にひろがり、近藤周助の耳に達し、感動した周助が、是非にと、勝太を将来養子に迎ることに決めた。
「トシ、やめろよ……昔の話だ」
勝太は、顔を赤くして、照れ笑いを浮かべた。それまでのいかつい顔が嘘のような、人懐っこい笑顔だった。
「あれぇ、トシさん、帰っていたんですか」
陽気な声に、歳三が振り向くと、総髪の若い男が、幼子と手をつなぎ、ニコニコ笑いながら立っていた。
笑うと、若いというよりも、むしろ幼い印象をあたえる、ひょろっと背が高いこの男は、沖田惣次郎、のちの沖田総司である。
「惣次郎……おめえ、稽古もしねぇで、なにしに日野にきたんだよ」
「ちがいますよ。さっきまで稽古していたんですが、りきちゃんが遊ぼうって、うるさいから……」
「――ちっ」
思わず歳三が舌打ちする。
りきちゃんとは、歳三の姉のぶが嫁いだ、佐藤彦五郎の次男の力之介のことで、つまり、歳三の甥にあたる。
「トシさん、舌打ちなんて、武士のすることではありませんよ」
ケラケラと惣次郎が笑う。
「うるせえ、それは、おめえが……まあいいや。ちょうどいいところにきた。一本勝負だ!」
「かまいませんけど、りきちゃんが見ていても、手加減なんてしませんからね」
「ふん。のぞむところだ……てめえこそ、覚悟しやがれ!」
歳三は、そう言うと、荷物にくくりつけた剣術道具を外し、身につけはじめた。
歳三は、惣次郎の剣が苦手だった。というより、勝てる気がしなかった。
天才とは、まさにこの男のためにある言葉だろう。
技というものは、何度も何度も繰り返し型を覚え、その要蹄を抽出して、ようやく身につくものだ。
ところが、惣次郎は、一度見ただけで、ほとんどの技を再現してしまう。
サヴァン症候群と呼ばれる、一度見た景色を、細部まで完全に記憶している症例がある。
惣次郎の場合は、映像ではなく、一度見た動きを、細部まで記憶するだけではなく、それを正確に再現する、身体能力を持っているのが脅威だった。
「さあ、いいぜ……かっちゃん、行司をたのむ」
防具をつけると、歳三が言った。
面金をとめる紐が深紅なのが、やけに目立つ。
それは、この男なりのダンディズムだった。
「では、いきますよ」
惣次郎が晴眼に構える。
しかし、その構えからは、殺気や圧迫感が一切感じられず、相変わらず飄々とした空気をまとっている。
(これが曲者なんだよな……)
普通は、勝負の場に立てば、どんなに上手く隠しても、知らず知らずのうちに、闘気が漏れ出るものだ。
また、そうでなくては、相手を威圧し、圧倒することなどは、できるものではない。
現に、勝太と向かいあうと、思わず身がすくむような、凄まじい重圧を感じずには、いられない。
ところが、惣次郎には、それがまったくなかった。
まるで、子どもの手を引いているときと同じような、日常的な雰囲気から、唐突に、苛烈な技がくり出されるのだ。
歳三は、やや腰を落とすと、晴眼に構え、剣先を右に開くように、意図的に正中線を空けた。
新陰流などに見られる、相手の攻撃を誘う構えだ。新陰流では、構えとは言わず、位というが……。
「あれぇ、トシさん。どうしたんですか? 柳生の真似なんかして」
「うるせえ、きやがれ!」
「ふふっ、いきますよ」
そう言ったとたん、空気が摩擦で、きな臭い匂いを放つような、惣次郎の鋭い突きが歳三を襲う。
得意の三段突きだった。
(かかりやがったな!)
歳三は、これを誘ったのだ。
惣次郎の三段突きは、誰に習ったわけでもなく、自得したものである。
突きといえば、とかく後ろ足で地面を蹴り、身体ごと飛びこむような印象があるが、惣次郎の突きは、そういう単純な攻撃ではない。
惣次郎は、まず膝を抜き、身体を垂直に落とす古武術特有の身体操作を使い、地面を蹴ることなく、一歩前に、滑るように間合いを詰める。
縮地と呼ばれる、この最初の動きが、手で突くことなく、身体の移動が、自然に最初の突きになっていた。
歳三はこれを、何度も喰らっているので、よどみなく後退して、なんなくかわす。
だが、厄介なのは、このあとだった。
惣次郎も、最初の突きが簡単に決まるとは、思っていない。
縮地により、間合いを詰めた位置から、今度は、はじめて本当に突きをだすのだ。
突き技の最大の欠点は、当たり前だが、突いたら引かねばならないことにある。
どんなに速く突いた手を引いても、それは、やはり無駄な動きで、心得のあるやつには、つけ入られてしまう。
しかし、この第二の突きまで、惣次郎は、一度も引く動作を入れていない。
もちろん、突いた瞬間にあわせ、後の先でカウンターを入れることができれば、それに越したことはないが、あまりにも唐突な攻撃の起こりを捉えるのは、至難の技だった。
したがって、一度めの突きをかわしても、次の突きで、たいていの相手は、体勢を崩し、なんなく三度めの突きの餌食となってしまうのだ。
歳三は、二撃めの突きにタイミングを合わせ、無造作に竹刀を突きだし、惣次郎の竹刀に沿わせた。
(来る! 次が本命だ)
普通なら、ここで竹刀を引く動作を入れなければ、さらに突くことはできない。
惣次郎の天才の所以は、この先にあった。
縮地により間合いを詰め、それでまず一撃、腕を突きだして二撃、そして三撃めは……。
惣次郎は、竹刀を引く動作を入れず、半身を直角に水平移動することにより、腕の位置を変えた。
――これが三撃めの突きだ。
つまり相手と正対したとき、正面を向いていた身体を、正中線を動かすことなく、横に向けることによって生じた位置の差、身体の半身ぶんの、わずかな移動が、結果的に、突きに転換されるのだ。
歳三は、沿わせた竹刀をそのままに、後ろにも下がらず、かといって避けもせず、一撃めの突きの動作と同じように、さらに間合いを詰めた。
惣次郎の三撃めは、歳三の竹刀に誘導され、わずかに方向を変えて、虚しく空を突いた。
歳三の竹刀は、そのまま……。
――したたかに総司の面を打っていた。
「一本! それまで!!」
勝太が高らかに宣告した。
「――そっ、そんな」
惣次郎は、愕然としていた。
今まで、誰にも返されたことのない突きを、あっけなく返されたのが、衝撃的だった。
「ふふふっ、惣次郎。残念だったな……俺だって、やるときは、やるんだぜ」
勝ち誇ったように、歳三がふんぞり返った。
「ま、待ってください。よりによってトシさんに、こんなに簡単に負けるなんて……お願いします。もう一本」
「おいっ、なにがよりによってだ! 見苦しいぜ。最初に一本勝負と言ったはずだ。
俺は、朝から走りっぱなしで疲れた……これまでだ。寝る!」
歳三は、一方的に宣言すると、防具を外し、縁側の隅っこに、ごろりと横になった。
「ちょ、トシさん。お願いしますよお……」
駄々っ子のように、頬を膨らませながら、惣次郎が歳三に詰め寄るが、当の歳三は、もう安らかに寝息をたてていた。
「惣次郎。おまえの負けだ」
勝太が優しい声で言った。
「でも……なんか、すっきりしないなあ……」
「トシの喉元をよく見てみろ」
着物をはだけて寝息をたてる、歳三の鎖骨から喉のあたりには、無数の青あざができていた。
「こいつ……おまえに勝てないのが、よほど悔しかったんだろう。どこかで、こっそり修行していたようだ」
勝太の言うとおりだった。
歳三は、突き技を得意とする、友人である登戸の千人同心、戸倉又兵衛の家に、わざわざ何度となく立ち寄り、突きに対する特訓をしてきたのだ。
しかも、又兵衛と総司の腕前の差を考慮して、槍で突かせて、それを竹刀で捌いていた。
そもそも、剣と槍では、間合いがまったくちがう上に、槍は、突きの動作に特化しており、捌きにくさは、剣の比ではない。
又兵衛は、剣術こそ歳三と、どっこいの腕前だが、槍は、佐分利流免許皆伝だった。
これは、とてもまともに試合になるような、レベルの差ではない。
しかし、歳三は、その無理を承知で、間合いを征する練習をしていたのだ。
「見ろよ、惣次郎。この楽しそうな寝顔。まったくトシってやつはよ……」
嬉しそうに、勝太が目を細めた。
「ふふっ、まるで子どもみたいですね」
つられて惣次郎も笑った。
歳三が起きていたら、どっちが子どもだ。と、怒鳴り返していたにちがいない。
「惣ちゃん、もっと遊ぼうよ」
いつの間にか、力之介が、弟の漣一郎といっしょに、総司にまとわりついていた。
惣次郎は、無邪気な微笑みを浮かべると、
「よし。じゃあ、上堰で鮠釣りしようか」
と、ふたりの手を引いて、屋敷の裏手の日野用水に向かって、歩きだした。
勝太は、ため息をつき、黙ってそれを見送る。
暖かい陽射しを浴びて、縁側の歳三は、相変わらずぐっすり眠ったままだった。
山口と前澤は、甲州道中を、甲府へと向かって歩いていた。
ゆるゆると歩いて府中に泊まり、急ぐ旅ではなし、今日ものんびりと出発した。
日野の渡しで多摩川をわたり、遠く高幡不動の山をのぞむ、見渡すかぎりの田圃を抜け、日野宿にさしかかったのは、まだ午前だった。
ゆっくり歩むそのふたりを、背中に漆塗りのつづらを背負い、剣術道具をくくりつけた男が、飛ぶような勢いで追い抜いてゆく。
石田散薬という幟を、風にはためかせながら、薬売りは、立派な長屋門のなかに入っていった。
「おい、見たか? 今の薬売りの格好を」
前澤が、眼を丸くして、山口に向きなおった。
「とくにめずらしくもあるまい。ここいらへんは、将軍様の御領で、百姓、町人でも、盛んに剣術をやる土地柄だ」
「なるほど……道場も、たくさんありそうだな」
「八王子横山宿には、天然理心流の増田道場、大平真鏡流の塩野道場、北辰一刀流の横川道場、甲源一刀流の比留間道場がある」
「あの比留間半造か……行ったことがあるのか?」
「ああ。以前にな……」
「で、勝ったのか?」
「負けた。相手は、あの比留間半造だぞ。しかも、そのとき俺は、まだ十六の小僧だ……勝てたら驚きだ」
比留間の名は、江戸にまで轟いており、のちに紀州藩支藩の剣術指南役になったほどの腕前である。
「比留間と男谷は、こないだの狸おやじとならんで、別格ってやつか」
前澤の何気ないひと言に、山口は、男谷信友を思い浮かべた。
山口の剣才は際立っていたが、無敗だったわけでは、もちろんなく、何度も負けたことがある。
それは、自分の実力が、どのあたりにあって、相手に勝つためには、こういう努力を、これぐらいしなければならない……。
という、対処法のある負け方だった。
――しかし男谷は、そうではなかった。
男谷の剣は、まるで悪夢のように、つかみどころがなく、どれだけ努力をすれば、そこにたどり着けるのか、それが、まったく見えなかった。
ふたりは、話しながら、二棟並んだ、長屋門を構えた屋敷の前にさしかかる。
堂々たる構えからして、どうやら宿場の本陣らしい。
長屋門の東室は、道場になっているようだが、まだ大工が普請しているらしく、鋸をひく音がきこえている。庭で剣術を稽古しているのか、竹刀を打ちあう音が、遠くから響いていた。
竹刀の音に、山口がちらりと視線をおくるが、そのままとおりすぎた。
その長屋門は、日野宿脇本陣のものである。通称、下佐藤こと、名主の佐藤彦五郎の屋敷であった。
先年の火事で焼けてしまい、先ごろ新築したばかりなので、檜の香りが漂ってくるような、汚れひとつない建物だ。
屋敷の庭では、井上松五郎をはじめ、日野宿に住む天然理心流の門弟たちが、竹刀で打ちあっている。
その様子を、いかつい顔のたくましい男が、腕を組みながら、厳しい眼差しで見つめていた。
鑿で岩を荒っぽく削ったような顔に、底光りした目の、ゴツゴツしたこの男は、宮川勝太。のちの近藤勇である。
「かっちゃん、来てたのか。周助先生は、どうしたんだ?」
先ほど門に飛びこんでいった、剣術道具をくくりつけた男が、大きな声できいた。もちろん、歳三である。
「おお、トシ。義父は、脚の具合が悪くてな……しばらくは、俺が稽古をつけるよ。なんだ、いま商いの帰りか。家に寄らなくていいのか?」
「なあに、かまうもんか。兄貴の説教を喰らうより、竹刀で叩かれたほうがマシさ」
「トシ……いい加減、誓紙をだして正式に入門したらどうだ?」
「かっちゃんが、四代目を継いだらそうするよ」
「まったく、おまえは……」
歳三が、その話には、触れてほしくないようなので、勝太は話題をかえた。
「ところで、きいたかトシ。例の盗賊が、また出たって話を……」
「ああ、それなら、小野路の橋本ん家に行ったとき、噂になってたよ。八王子八木宿の絹問屋が狙われて、用心棒が、斬り死にしたらしいじゃねえか」
「おかげで金蔵は、無事だったそうだが、殺られたのは、なんと、北辰一刀流の免許らしいぞ」
「おっかねえな。盗賊んなかに、剣術の得意なやつがいるとはよ」
歳三が、少しも怖くなさそうな声で言う。
「ふん。俺が用心棒なら盗人なんぞ、全員返り討ちにしてやるんだが」
「ああ、かっちゃんは、盗人をやっつけてるもんなあ……」
嘉永二年のことである。
勝太は十六歳。天然理心流に入門して間もないころの話だ。
調布の上石原にある勝太の家に、父親の留守を狙って、盗賊が押し入った。
それに気づいた、同じころ入門した兄の粂太郎が、刀をとって、盗賊に斬りかかろうとすると……。
「兄ちゃん。賊は、盗みに入ったばかりで気が立ってる……いま俺たちが出ていったら、必死で抵抗するはずだ。
やつらが逃げるときなら、もう安心して油断しているから、その機会に仕掛けるのが兵法だ」
この言葉に納得した粂太郎は、勝太に従い、賊が獲物を抱え、まさに逃げようとしたとき、
「待てっ!」
と、声をかけ、斬りかかった。
あわてたのは、盗賊である。
すっかり安心したところで反撃にあい、獲物を投げだして、ほうほうの体で逃げてゆく。
勝太は、なおも追撃しようとする粂太郎に向かって、
「兄ちゃん、深追いは禁物だ。やつらも必死のはず……窮鼠猫を噛むのたとえがある。このへんで、やめておこう」
と、諫めた。
この話は、たちまち近隣にひろがり、近藤周助の耳に達し、感動した周助が、是非にと、勝太を将来養子に迎ることに決めた。
「トシ、やめろよ……昔の話だ」
勝太は、顔を赤くして、照れ笑いを浮かべた。それまでのいかつい顔が嘘のような、人懐っこい笑顔だった。
「あれぇ、トシさん、帰っていたんですか」
陽気な声に、歳三が振り向くと、総髪の若い男が、幼子と手をつなぎ、ニコニコ笑いながら立っていた。
笑うと、若いというよりも、むしろ幼い印象をあたえる、ひょろっと背が高いこの男は、沖田惣次郎、のちの沖田総司である。
「惣次郎……おめえ、稽古もしねぇで、なにしに日野にきたんだよ」
「ちがいますよ。さっきまで稽古していたんですが、りきちゃんが遊ぼうって、うるさいから……」
「――ちっ」
思わず歳三が舌打ちする。
りきちゃんとは、歳三の姉のぶが嫁いだ、佐藤彦五郎の次男の力之介のことで、つまり、歳三の甥にあたる。
「トシさん、舌打ちなんて、武士のすることではありませんよ」
ケラケラと惣次郎が笑う。
「うるせえ、それは、おめえが……まあいいや。ちょうどいいところにきた。一本勝負だ!」
「かまいませんけど、りきちゃんが見ていても、手加減なんてしませんからね」
「ふん。のぞむところだ……てめえこそ、覚悟しやがれ!」
歳三は、そう言うと、荷物にくくりつけた剣術道具を外し、身につけはじめた。
歳三は、惣次郎の剣が苦手だった。というより、勝てる気がしなかった。
天才とは、まさにこの男のためにある言葉だろう。
技というものは、何度も何度も繰り返し型を覚え、その要蹄を抽出して、ようやく身につくものだ。
ところが、惣次郎は、一度見ただけで、ほとんどの技を再現してしまう。
サヴァン症候群と呼ばれる、一度見た景色を、細部まで完全に記憶している症例がある。
惣次郎の場合は、映像ではなく、一度見た動きを、細部まで記憶するだけではなく、それを正確に再現する、身体能力を持っているのが脅威だった。
「さあ、いいぜ……かっちゃん、行司をたのむ」
防具をつけると、歳三が言った。
面金をとめる紐が深紅なのが、やけに目立つ。
それは、この男なりのダンディズムだった。
「では、いきますよ」
惣次郎が晴眼に構える。
しかし、その構えからは、殺気や圧迫感が一切感じられず、相変わらず飄々とした空気をまとっている。
(これが曲者なんだよな……)
普通は、勝負の場に立てば、どんなに上手く隠しても、知らず知らずのうちに、闘気が漏れ出るものだ。
また、そうでなくては、相手を威圧し、圧倒することなどは、できるものではない。
現に、勝太と向かいあうと、思わず身がすくむような、凄まじい重圧を感じずには、いられない。
ところが、惣次郎には、それがまったくなかった。
まるで、子どもの手を引いているときと同じような、日常的な雰囲気から、唐突に、苛烈な技がくり出されるのだ。
歳三は、やや腰を落とすと、晴眼に構え、剣先を右に開くように、意図的に正中線を空けた。
新陰流などに見られる、相手の攻撃を誘う構えだ。新陰流では、構えとは言わず、位というが……。
「あれぇ、トシさん。どうしたんですか? 柳生の真似なんかして」
「うるせえ、きやがれ!」
「ふふっ、いきますよ」
そう言ったとたん、空気が摩擦で、きな臭い匂いを放つような、惣次郎の鋭い突きが歳三を襲う。
得意の三段突きだった。
(かかりやがったな!)
歳三は、これを誘ったのだ。
惣次郎の三段突きは、誰に習ったわけでもなく、自得したものである。
突きといえば、とかく後ろ足で地面を蹴り、身体ごと飛びこむような印象があるが、惣次郎の突きは、そういう単純な攻撃ではない。
惣次郎は、まず膝を抜き、身体を垂直に落とす古武術特有の身体操作を使い、地面を蹴ることなく、一歩前に、滑るように間合いを詰める。
縮地と呼ばれる、この最初の動きが、手で突くことなく、身体の移動が、自然に最初の突きになっていた。
歳三はこれを、何度も喰らっているので、よどみなく後退して、なんなくかわす。
だが、厄介なのは、このあとだった。
惣次郎も、最初の突きが簡単に決まるとは、思っていない。
縮地により、間合いを詰めた位置から、今度は、はじめて本当に突きをだすのだ。
突き技の最大の欠点は、当たり前だが、突いたら引かねばならないことにある。
どんなに速く突いた手を引いても、それは、やはり無駄な動きで、心得のあるやつには、つけ入られてしまう。
しかし、この第二の突きまで、惣次郎は、一度も引く動作を入れていない。
もちろん、突いた瞬間にあわせ、後の先でカウンターを入れることができれば、それに越したことはないが、あまりにも唐突な攻撃の起こりを捉えるのは、至難の技だった。
したがって、一度めの突きをかわしても、次の突きで、たいていの相手は、体勢を崩し、なんなく三度めの突きの餌食となってしまうのだ。
歳三は、二撃めの突きにタイミングを合わせ、無造作に竹刀を突きだし、惣次郎の竹刀に沿わせた。
(来る! 次が本命だ)
普通なら、ここで竹刀を引く動作を入れなければ、さらに突くことはできない。
惣次郎の天才の所以は、この先にあった。
縮地により間合いを詰め、それでまず一撃、腕を突きだして二撃、そして三撃めは……。
惣次郎は、竹刀を引く動作を入れず、半身を直角に水平移動することにより、腕の位置を変えた。
――これが三撃めの突きだ。
つまり相手と正対したとき、正面を向いていた身体を、正中線を動かすことなく、横に向けることによって生じた位置の差、身体の半身ぶんの、わずかな移動が、結果的に、突きに転換されるのだ。
歳三は、沿わせた竹刀をそのままに、後ろにも下がらず、かといって避けもせず、一撃めの突きの動作と同じように、さらに間合いを詰めた。
惣次郎の三撃めは、歳三の竹刀に誘導され、わずかに方向を変えて、虚しく空を突いた。
歳三の竹刀は、そのまま……。
――したたかに総司の面を打っていた。
「一本! それまで!!」
勝太が高らかに宣告した。
「――そっ、そんな」
惣次郎は、愕然としていた。
今まで、誰にも返されたことのない突きを、あっけなく返されたのが、衝撃的だった。
「ふふふっ、惣次郎。残念だったな……俺だって、やるときは、やるんだぜ」
勝ち誇ったように、歳三がふんぞり返った。
「ま、待ってください。よりによってトシさんに、こんなに簡単に負けるなんて……お願いします。もう一本」
「おいっ、なにがよりによってだ! 見苦しいぜ。最初に一本勝負と言ったはずだ。
俺は、朝から走りっぱなしで疲れた……これまでだ。寝る!」
歳三は、一方的に宣言すると、防具を外し、縁側の隅っこに、ごろりと横になった。
「ちょ、トシさん。お願いしますよお……」
駄々っ子のように、頬を膨らませながら、惣次郎が歳三に詰め寄るが、当の歳三は、もう安らかに寝息をたてていた。
「惣次郎。おまえの負けだ」
勝太が優しい声で言った。
「でも……なんか、すっきりしないなあ……」
「トシの喉元をよく見てみろ」
着物をはだけて寝息をたてる、歳三の鎖骨から喉のあたりには、無数の青あざができていた。
「こいつ……おまえに勝てないのが、よほど悔しかったんだろう。どこかで、こっそり修行していたようだ」
勝太の言うとおりだった。
歳三は、突き技を得意とする、友人である登戸の千人同心、戸倉又兵衛の家に、わざわざ何度となく立ち寄り、突きに対する特訓をしてきたのだ。
しかも、又兵衛と総司の腕前の差を考慮して、槍で突かせて、それを竹刀で捌いていた。
そもそも、剣と槍では、間合いがまったくちがう上に、槍は、突きの動作に特化しており、捌きにくさは、剣の比ではない。
又兵衛は、剣術こそ歳三と、どっこいの腕前だが、槍は、佐分利流免許皆伝だった。
これは、とてもまともに試合になるような、レベルの差ではない。
しかし、歳三は、その無理を承知で、間合いを征する練習をしていたのだ。
「見ろよ、惣次郎。この楽しそうな寝顔。まったくトシってやつはよ……」
嬉しそうに、勝太が目を細めた。
「ふふっ、まるで子どもみたいですね」
つられて惣次郎も笑った。
歳三が起きていたら、どっちが子どもだ。と、怒鳴り返していたにちがいない。
「惣ちゃん、もっと遊ぼうよ」
いつの間にか、力之介が、弟の漣一郎といっしょに、総司にまとわりついていた。
惣次郎は、無邪気な微笑みを浮かべると、
「よし。じゃあ、上堰で鮠釣りしようか」
と、ふたりの手を引いて、屋敷の裏手の日野用水に向かって、歩きだした。
勝太は、ため息をつき、黙ってそれを見送る。
暖かい陽射しを浴びて、縁側の歳三は、相変わらずぐっすり眠ったままだった。
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そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【時代小説】 黄昏夫婦
蔵屋
歴史・時代
江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。
そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。
秋田藩での仕事は勘定方である。
仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。
ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。
そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。
娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。
さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。
「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。
今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。
この風習は広く日本で行われている。
「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。
「たそかれ」という言葉は『万葉集』に
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」
— 『万葉集』第10巻2240番
と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。
「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に
「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」
— 『源氏物語』「夕顔」光源氏
と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。
またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。
漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
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幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
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青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
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裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
江戸の夕映え
大麦 ふみ
歴史・時代
江戸時代にはたくさんの随筆が書かれました。
「のどやかな気分が漲っていて、読んでいると、己れもその時代に生きているような気持ちになる」(森 銑三)
そういったものを選んで、小説としてお届けしたく思います。
同じ江戸時代を生きていても、その暮らしぶり、境遇、ライフコース、そして考え方には、たいへんな幅、違いがあったことでしょう。
しかし、夕焼けがみなにひとしく差し込んでくるような、そんな目線であの時代の人々を描ければと存じます。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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