坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

文字の大きさ
6 / 173
第一章:隔離された村

第一章:隔離された村 1

しおりを挟む
          【1】

 山道を抜けて景色が開けると、そこにはひたすらに濃い緑が広がっていた。

 先程上から見た景色とはまた違う、田園風景。

 農道の脇を流れる小川や、個人用なのであろう小さな畑に立てられた、年季の入った案山子。

 ちらほらと目に入る民家の庭には、ペットボトルで作られた風車のような物もあった。

 青空の下、どこまでも続く田舎独特の平穏な空気と、それらを包み込むように村を囲みそびえる山々が、ここが自分たちの普段暮らしている環境とは全く別の世界であるのだと強く認識させてくる。

 上空を、トンビが大きく旋回しながら飛んでいるのに気づく。

 窓から見えるそれらの景観をぼんやり眺めていると、車は緩やかに減速して細い砂利道に入り込んだ。

 前方に顔を向けて行き先を確かめると、白い長方形の建物が建てられているのが見えた。

「さぁ、着いたよ。あそこが今日から四日間みんながお世話になる宿泊先、藤美荘」

 ガタガタと揺れる車体の中、由奈さんが明るい声をあげる。

 その声につられ前方を覗き込むように身体を屈ませた桜は、建物を認識した途端に戸惑うような反応をみせた。

「……どこに泊まる場所があるんですか?」

 目を細めながら食い入るように先を眺めるその声音は、わかりやすいくらいに強張っている。

「どこって、この先建物は一つしかないじゃない。あそこが藤美荘だよ」

 ハンドルを握ったまま由奈さんが指差すのは、長方形の白い建物。

 二階建てで、パッと見た限りでも二十以上は部屋がある。

「藤美荘って……、あれどう見ても学校にしか見えないんですけど」

 一通り藤美荘なる建物を眺め回して、桜はバックミラーに映る由奈さんの顔に視線を注ぐ。

「見た目はね。確か、十年くらい前に廃校になったって言ってたかな。それで、五年前に村長さんの提案で、観光客が来た時のための宿泊施設として再利用しようって話になったの」

「五年前って言うと、由奈さんがこの村に引越した年だよね?」

 相槌をうちながら部長が訊ねると、由奈さんはそうだよ、と頷いた。

「わたしがこの村に来るきっかけになったのが、この藤美荘だからね。たまたま従業員を募集してるのを職安で見つけてさ、定員一名だったから急いで面接希望したのよ」

「わざわざこんな場所で探さなくても、別によかったんじゃないですか?」

 余程就職先に困っていたのかどうかは知らないが、こんな辺鄙な村にまで仕事を求めしかも即決で面接を希望するなど、俺の感覚ではありえない。

 しかしそんな俺の疑問に、由奈さんはにんまりとしながら首を振った。

「逆よ、逆。こんな田舎だからこそ、好きで選んだの。わたし、ずっと田舎暮らしに憧れててね。もうこれは絶好のチャンスだって思って。それに……」

 そこで一度言葉を切り、勿体ぶるように間を空ける。

「ここの仕事、楽な上にかなりお給料良いんだよね。村長さんが経営者なんだけど、凄いお金持ちみたいでさ。噂じゃ、億単位の財があるとか何とか」

「億!?」

 すっとんきょうな声を出したのは桜だ。

「うん、この村の敷地ほとんどが村長の持ち物らしいし、まぁかなりの富豪なのは確かね。思いつきで学校を旅館にして経営するとか、ちょっと酔狂なところもあるけど」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小説探偵

夕凪ヨウ
ミステリー
 20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。  男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。  そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。  小説探偵、と。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~

水無月礼人
ミステリー
 子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。  故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。  嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。  不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。 ※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。  【アルファポリス】でも公開しています。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...