坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第一章:隔離された村

第一章:隔離された村 2

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 話をしている間にも、車は藤美荘への距離を縮めていく。

 元は校門であったはずの場所には、学校名が外され紫の文字で藤美荘と書かれた看板が付けられていた。

「ここは元々、藤美小学校って名前だったの。少子化や過疎化が原因で廃校になって、今いる村の子供たちはみんな町の学校まで通ってる状態」

 元は教職員用の駐車場だったであろう場所に車を入れながら、由奈さんは藤美荘について簡単な説明をしてくれる。

「基本的に従業員はわたしの他にあと二人。それ以外は梅木家の人たちがメインで働いてる感じかな」

「梅木家?」

 初めて耳にする名前に、俺は聞き返す。

「あ、梅木家っていうのは村長さんの家族のこと。こんな村じゃ働き手なんかまともに集まらない。かと言って、仮に集まったとしてもお客さん自体がほとんど来ないから、逆に人手が余る。そういうややこしい事情を抱えてるから、いっそのこと最低限の労働力だけ確保して、足りない部分は自分たち身内で何とかしようって考えみたい」

「確かに、農業とかならまだしも、サービス業が流行るような環境じゃとてもないよね」

 エンジンが止まり、車が停車する。

 一番に外へ降りた部長が、藤美荘と周囲の景色を見比べながら、納得するような声を漏らした。

「て言うか、ここは年にどれくらい、お客さんが来るんですか?」

 少し遅れて車から出た桜が、胡散臭げな眼差しを宿に向け訊ねる。

 正直、この疑問は俺も感じていた。

 知名度も無いに等しい言い伝えと、これから見せてもらう予定の巨大藤。

 それくらいしか取り柄のないこの村へ、頻繁に観光客が来るなどあり得そうもない。

 実際、村で暮らす由奈さん自身がほとんど余所者は来ない村だと、ここへ向かう前に言っていたのだ。

 おそらく、訪れる者など数える程度しかいないのだろう。

「えー……、何人だろう。その年にもよるけど、多くてもせいぜい二十人くらい? 少ない年は四人ってときもあったかな。二年前くらいに」

 車のトランクを開け全員の荷物を取り出しながら、由奈さんは肩を竦める。

「四人……。よく潰れませんね」

 顔をひきつらせる桜。

「だから、そこは村長の財力が成せる技よ。ほとんど趣味みたいなものだろうし」

 お金はちゃんと貰えてるから、わたし的には不満はないけどね。

 そう付け加え、由奈さんはそれぞれの荷物を手渡す。

 藤美荘のすぐ裏手は山があり、深い緑がこんもりと広がっている。

 渡された荷物を肩にかけながら裏山を見上げていると、ふいに正面玄関の方から女性の声が聞こえてきた。

「おかえりなさい、由奈さん。その子たちがお客さんね?」

 振り向くと、背の高い女性がこちらに歩いてくるところだった。

 三十代後半くらいに見える。

 健康的に引き締まった体躯に、後ろで一つに纏められた髪。

 こちらを見て笑うその表情からは、人当たりの良さが滲み出ているように感じた。

「こんな若い子たちが泊まりに来るなんて初めて。何も無い所だけど、ゆっくりしていってね」

 俺たちの側まで来て立ち止まると、その女性は丁寧な発音でそう言ってきた。

「どうも、今日から四日間お世話になります。僕はミスオカ研部長の野島 孝介と言います」

 部長が代表するように口を開き、俺たちメンバーを紹介する。

「まぁ、それじゃあ貴方が由奈さんの従弟なのね。言われてみれば、どことなく似てるかも」

 全員の紹介が済むと、女性は由奈さんと部長を見比べながらクスリと笑った。
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