坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第一章:隔離された村

第一章:隔離された村 20

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「それで、顔とか洗い終わって、そういえば乃亜ちゃんが普段読んでる本ってどんな内容なの~? なんて声かけながら振り向いたら……、いつの間にか乃亜ちゃんいなくなってるの」

 そこで何故か、桜は俺の腕を叩く。

「誰もいない浴場でさ、あたし一人で喋りまくってたのよ? それに気づいたあの瞬間の虚しさと言ったら、あぁ……」

 つまりは、自分の失態が恥ずかしく自己嫌悪していたのだろう。

 深いため息をつきながら手で顔を覆う桜に、俺は努めて優しい口調で言葉を送る。

「お前はよくやった。まぁ、明日も頑張れよ」

「明日はもう一人で入るからどうでも良い……」

 顔を伏せながら投げやりに告げ、桜はちろりと後輩に目を向けた。

「上がるなら上がるで、普通お先に失礼しますとか言いなさいよ。これでも一応先輩だっていうのに」

「あんまふてくされんなって。蓮田だってああいう性格なだけで、別に無視したり軽蔑したりしてるわけじゃないんだろうしさ」

 膨れっ面になりかける幼なじみの頭をぽんぽんと撫で、諭すように言い聞かせておく。

「そういう問題じゃないのよこれは」

「二人で何を話してるんだい?」

 反論しようとする桜の声が届いたか、部長が横から身を乗り出してきた。

 咄嗟に言葉を飲み込み、一度口を閉ざす桜。

「別になんでもありませんよ。部長には無関係な話です」

 突っぱねるようにそう言って、桜は自分の席へ戻っていく。

「……長沢くん、薄々感じ始めてるんだけど、僕って桜くんに嫌われてたりするのかな?」

 つれない態度の後輩を遠い目をして見つめながら、今度は部長が耳元で囁いてくる。

「さぁ……。たまたま機嫌が悪いだけかと思いますけど」

 どう返せば良いか少し悩んでから、無難にそう答えておく。

「……そうか。なら良いけど。数少ない部員同士、できれば仲良くやっていきたいからね」

 言って、困ったように笑いながら部長は顔を引っ込めた。

 それから盛り上がる会話のないまま数分が経過して――。

「はーい、お待たせ。育ち盛りの若者諸君!」

 ガラリとドアを開けて、流森さんが元気な声をあげながら入ってきた。その後ろには、由奈さんと碧さん、そしてもう一人見たことのない男性が続く。

 流森さんと由奈さんが、料理の乗せられたカートを押して入ってくる。

渡辺わたなべさんが、今夜は特別メニュー用意してくれたよ。わざわざ遊びに来てくれた学生さんたちへのサービスメニューだってさ」

 テーブルのど真ん中にガスコンロを置き、流森さんはにこやかに告げる。

「え? 渡辺さん?」

 それは誰と言いたげに、疑問符を浮かべたのは部長だった。

「渡辺さんは藤美壮の料理長をしてる人。ちなみに、こちらにいるのがご本人」

 一緒に入ってきた男性を手を差し出すようにして示し、由奈さんが教えてくれる。

「どうも、はじめまして。ここの料理を担当してる渡辺わたなべ弥一やいちです。料理に関して何かあった際には、遠慮しないで言ってください」

 紹介された男性、渡辺さんは気さくに笑いながら軽く会釈をしてみせた。

 衛生面への配慮か、上下共に白で統一さた服装で頭はまさかのスキンヘッド。

 とは言え、比較的小柄な体格と温厚そうな見た目が相まって、怖そうな雰囲気などは一切感じない。印象としては、四十代前後くらいか。
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