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第一章:隔離された村
第一章:隔離された村 22
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「村長がそういうのはよくわからないからって。旦那はやるべきだって言ったりしてた時期があったんだけどね」
旦那、とは長男のことだったか。
ついさっき、昇さんたちの話していた言葉が頭をよぎる。
子供が産めないという碧さん。
それを遠回しに言われた瞬間のぎこちない表情を思い返す限り、旦那は気にしていなくとも本人はかなり気にしているはずだ。
「はぁ……、本当にお気楽な性格なんですね、村長さん。あの吉田っておじさんが不安がるのもわかるかも」
しみじみと言う桜の返しに、碧さんは僅かだけきょとんとした様子になる。
「あら、吉田さんにも会ったんだ?」
「はい、藤の木がある場所でたまたま。村長と少しだけ言い合いをして、すぐ帰っちゃいましたけど」
「あのお二人は仲が悪いって有名だからねぇ。いっそ吉田さんが村長になってくれたら良いのに……」
言いながら、碧さんはほんの一瞬悲しそうな表情を浮かべる。
それから、ごまかすようにまた笑みを作り俺たち全員に箸を渡した。
「それじゃあ、わたしは先に厨房に戻って片付け始めるから。みんなはゆっくり楽しんでね」
前半は従業員である三人に、後半は俺たちへと告げて、碧さんはそそくさと食堂を後にする。
それを無言で見送ってから、部長は小さな声で、
「たぶん、さっきの話だろうね」
と言ってきた。
突然何だろうかと視線で問い返すと、部長は碧さんが出ていったドアを顎で示した。
「あの人が最後に言ってたことだよ。今の村長じゃなくて、吉田って人が村の長を務めたら良いのに。そう言ってたでしょ? つまり、義理の父である村長がその役割を放棄すれば、必然的に自分の跡取りを残せない問題に対する負担や重要性を軽減できるのにって考えてたんだと思うよ」
「……ああ、なるほど」
「僕たちを相手に、意図的ではないにせよ愚痴を言ってしまったようなものだからね。たぶん、それでばつが悪くなったのかな」
流森さんたちにより、料理の準備が整った。
「はい、それじゃあ遠慮なく召し上がってくださいな。時間とかは気にしなくて全然平気だから、焦らないで良いからね」
「ありがとうございます」
部屋いっぱいに広がるような流森さんの声に笑顔でお礼を返すと、部長は先陣を切るように手を合わせる。
「いただきます」
その言葉に続くように俺たちメンバーも箸を取った。
「それじゃあ、わたしたちは戻るから。あとはみんなだけでよろしくやってて。片付けは頃合いみてこっちでやるから、食べ終わってもお椀持ってオロオロしたりしないでね」
「そんなことしないよ」
からかう由奈さんへ呆れたような微笑を返して、部長が言う。
「それじゃあみなさん、また」
そんなやり取りを見守っていた渡辺さんが、軽く手をあげて部屋を出ていく。
その後を追うようにして、他の二人も通路へ姿を消した。
「さぁ、食事を楽しもうか。まさか、こんなご馳走にありつけるなんて、嬉しい誤算だったなぁ」
ゼンマイのごま和えを箸で摘まみ、部長は上機嫌に目を細める。
桜の方は、山菜よりも肉がお好みのようで、真っ先にローストビーフを口へ運ぶ。
「うわ、これめちゃ美味しい!」
顔をほころばせた先輩を横目で一瞥し、沈黙を貫く蓮田も自分のローストビーフを口に入れた。
「……」
しかしこちらは全くの無反応で、静かに口を動かすだけに留まる。その表情からは、口に合うのか合わないのかすら読み取れない。
ひとまず普通に食事を続けているのを見る限り、不服ということはなさそうだが。
――蓮田が笑うのって、どんな時なんだろうな……。
遊園施設にでも連れていけば、喜ぶのだろうか。
そんなありきたりな案を思い浮かべるが、事務的についてくるだけで変化はないだろうとすぐに脳内に結論が下された。
自分が気にする必要もないことより、目前の料理に集中しよう。
一人そんな思考を展開し、俺はたらの芽の天ぷらへと視線を定める。
「ねぇ、雄治のローストビーフちょうだい?」
「アホか」
期待以上の料理に舌鼓をうちながら他愛のない雑談に花を咲かせ、初日の晩餐は平穏に過ぎていった。
旦那、とは長男のことだったか。
ついさっき、昇さんたちの話していた言葉が頭をよぎる。
子供が産めないという碧さん。
それを遠回しに言われた瞬間のぎこちない表情を思い返す限り、旦那は気にしていなくとも本人はかなり気にしているはずだ。
「はぁ……、本当にお気楽な性格なんですね、村長さん。あの吉田っておじさんが不安がるのもわかるかも」
しみじみと言う桜の返しに、碧さんは僅かだけきょとんとした様子になる。
「あら、吉田さんにも会ったんだ?」
「はい、藤の木がある場所でたまたま。村長と少しだけ言い合いをして、すぐ帰っちゃいましたけど」
「あのお二人は仲が悪いって有名だからねぇ。いっそ吉田さんが村長になってくれたら良いのに……」
言いながら、碧さんはほんの一瞬悲しそうな表情を浮かべる。
それから、ごまかすようにまた笑みを作り俺たち全員に箸を渡した。
「それじゃあ、わたしは先に厨房に戻って片付け始めるから。みんなはゆっくり楽しんでね」
前半は従業員である三人に、後半は俺たちへと告げて、碧さんはそそくさと食堂を後にする。
それを無言で見送ってから、部長は小さな声で、
「たぶん、さっきの話だろうね」
と言ってきた。
突然何だろうかと視線で問い返すと、部長は碧さんが出ていったドアを顎で示した。
「あの人が最後に言ってたことだよ。今の村長じゃなくて、吉田って人が村の長を務めたら良いのに。そう言ってたでしょ? つまり、義理の父である村長がその役割を放棄すれば、必然的に自分の跡取りを残せない問題に対する負担や重要性を軽減できるのにって考えてたんだと思うよ」
「……ああ、なるほど」
「僕たちを相手に、意図的ではないにせよ愚痴を言ってしまったようなものだからね。たぶん、それでばつが悪くなったのかな」
流森さんたちにより、料理の準備が整った。
「はい、それじゃあ遠慮なく召し上がってくださいな。時間とかは気にしなくて全然平気だから、焦らないで良いからね」
「ありがとうございます」
部屋いっぱいに広がるような流森さんの声に笑顔でお礼を返すと、部長は先陣を切るように手を合わせる。
「いただきます」
その言葉に続くように俺たちメンバーも箸を取った。
「それじゃあ、わたしたちは戻るから。あとはみんなだけでよろしくやってて。片付けは頃合いみてこっちでやるから、食べ終わってもお椀持ってオロオロしたりしないでね」
「そんなことしないよ」
からかう由奈さんへ呆れたような微笑を返して、部長が言う。
「それじゃあみなさん、また」
そんなやり取りを見守っていた渡辺さんが、軽く手をあげて部屋を出ていく。
その後を追うようにして、他の二人も通路へ姿を消した。
「さぁ、食事を楽しもうか。まさか、こんなご馳走にありつけるなんて、嬉しい誤算だったなぁ」
ゼンマイのごま和えを箸で摘まみ、部長は上機嫌に目を細める。
桜の方は、山菜よりも肉がお好みのようで、真っ先にローストビーフを口へ運ぶ。
「うわ、これめちゃ美味しい!」
顔をほころばせた先輩を横目で一瞥し、沈黙を貫く蓮田も自分のローストビーフを口に入れた。
「……」
しかしこちらは全くの無反応で、静かに口を動かすだけに留まる。その表情からは、口に合うのか合わないのかすら読み取れない。
ひとまず普通に食事を続けているのを見る限り、不服ということはなさそうだが。
――蓮田が笑うのって、どんな時なんだろうな……。
遊園施設にでも連れていけば、喜ぶのだろうか。
そんなありきたりな案を思い浮かべるが、事務的についてくるだけで変化はないだろうとすぐに脳内に結論が下された。
自分が気にする必要もないことより、目前の料理に集中しよう。
一人そんな思考を展開し、俺はたらの芽の天ぷらへと視線を定める。
「ねぇ、雄治のローストビーフちょうだい?」
「アホか」
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