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第二章:悪霊の目覚め
第二章:悪霊の目覚め 7
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それだけ、目の前の光景が強烈だったとも言える。
上に立っていると思っていた人物は、空中に浮かんでいた。
いや、正確には上から吊られていたというべきか。
一番手前にある赤い鳥居。そのちょうど真ん中から伸びる一本のロープが、女性の首へと続いている。
言葉が出なかった。
何が起きているのか、それを理解することを脳が拒む。
突然、生温い風が周囲を包んだ。同時に、上に吊るされた女性が小さくゆらゆらと揺れる。
そこまでが限界だった。
俺は情けない悲鳴を上げながら元来た道を引き返し走る。
端から見れば、途中石段から足を踏み外すのではないかと思われるような足取りだっただろうが、そんなことを気にする余裕などどこにもない。
「あ、あの……! う、上に人が!」
まだ車の前に渡辺さんたちがいるのを見つけ、俺は助けを求めて声を絞り出す。
「どうしたんだい、そんな慌てて。幽霊でも見たかい?」
事情を知らない二人が、笑いながらパニックになる俺を見つめる。
代表するように渡辺さんが側に来ると、落ち着かせようと軽く肩に手をかける。
「こんな朝から幽霊なんていないさ。たぶん、小動物か何かじゃ――」
相手の話はまともに聞かず、俺は渡辺さんの腕を引く。
いきなりの行為に驚いたようで、これには渡辺さんも目を丸くしながらたたらを踏む。
「お、おいおい、ちょっと危ないよ」
困惑する渡辺さんを、石段の前まで連れてくる。そして、俺は視線を伏せたまま上を指差した。
「あ、あれを……」
「え? いったいなに――」
訳もわからぬまま顔を上げた渡辺さんが、声を詰まらせる。
「あれは……、まさか、そんな……」
呆然と呟いたかと思うと、渡辺さんはすぐに昇さんへ振り返り大声で叫ぶ。
「昇さん! 確か、車の運転できましたよね?」
「は? あ、ああ、そりゃできるけど、いきなり何です?」
まだ状況の掴めない彼だけは、呑気な声を返してきた。
「今すぐ戻って、誰か人を呼んできて下さい!」
言いながら、渡辺さんは神社を振り仰ぐ。
「上で、梅木さんが死んでる!」
「は? 何言ってんですか、渡辺さん。そんな馬鹿みたいな冗談――」
「いいから、早く人を!」
固い笑みを貼り付ける昇さんへ、渡辺さんが一喝しながら車の鍵を投げ渡す。
「村長にも連絡をして下さい! 急いで!」
「あ、ああ……。わ、わかった」
切羽詰まった様子にやっと冗談でないことを悟ったのか、昇さんはまだ少し戸惑いながらも車に乗り込み引き返していく。
それを見送る間もなく、渡辺さんは石段の最上部へと身体を向けると、驚いたように目を見開き大声を飛ばした。
「きみ! 何してるんだ! こっちに戻って!」
はっとして、俺も反射的に首を捻り見上げると、取り残してしまっていた蓮田が、吊るされた人物の側で立ち尽くしている光景が目に飛び込んだ。
――あいつは何をやってるんだ?
恐慌状態に陥りかけたとはいえ、彼女を一人残したのは失敗だった。
一度こちらを振り向いた蓮田が、そのままさらに奥へと歩いていく。
「おい、そこにいちゃ駄目だ!」
意を決したように、渡辺さんが石段を駆け上がる。
「あ……」
上に立っていると思っていた人物は、空中に浮かんでいた。
いや、正確には上から吊られていたというべきか。
一番手前にある赤い鳥居。そのちょうど真ん中から伸びる一本のロープが、女性の首へと続いている。
言葉が出なかった。
何が起きているのか、それを理解することを脳が拒む。
突然、生温い風が周囲を包んだ。同時に、上に吊るされた女性が小さくゆらゆらと揺れる。
そこまでが限界だった。
俺は情けない悲鳴を上げながら元来た道を引き返し走る。
端から見れば、途中石段から足を踏み外すのではないかと思われるような足取りだっただろうが、そんなことを気にする余裕などどこにもない。
「あ、あの……! う、上に人が!」
まだ車の前に渡辺さんたちがいるのを見つけ、俺は助けを求めて声を絞り出す。
「どうしたんだい、そんな慌てて。幽霊でも見たかい?」
事情を知らない二人が、笑いながらパニックになる俺を見つめる。
代表するように渡辺さんが側に来ると、落ち着かせようと軽く肩に手をかける。
「こんな朝から幽霊なんていないさ。たぶん、小動物か何かじゃ――」
相手の話はまともに聞かず、俺は渡辺さんの腕を引く。
いきなりの行為に驚いたようで、これには渡辺さんも目を丸くしながらたたらを踏む。
「お、おいおい、ちょっと危ないよ」
困惑する渡辺さんを、石段の前まで連れてくる。そして、俺は視線を伏せたまま上を指差した。
「あ、あれを……」
「え? いったいなに――」
訳もわからぬまま顔を上げた渡辺さんが、声を詰まらせる。
「あれは……、まさか、そんな……」
呆然と呟いたかと思うと、渡辺さんはすぐに昇さんへ振り返り大声で叫ぶ。
「昇さん! 確か、車の運転できましたよね?」
「は? あ、ああ、そりゃできるけど、いきなり何です?」
まだ状況の掴めない彼だけは、呑気な声を返してきた。
「今すぐ戻って、誰か人を呼んできて下さい!」
言いながら、渡辺さんは神社を振り仰ぐ。
「上で、梅木さんが死んでる!」
「は? 何言ってんですか、渡辺さん。そんな馬鹿みたいな冗談――」
「いいから、早く人を!」
固い笑みを貼り付ける昇さんへ、渡辺さんが一喝しながら車の鍵を投げ渡す。
「村長にも連絡をして下さい! 急いで!」
「あ、ああ……。わ、わかった」
切羽詰まった様子にやっと冗談でないことを悟ったのか、昇さんはまだ少し戸惑いながらも車に乗り込み引き返していく。
それを見送る間もなく、渡辺さんは石段の最上部へと身体を向けると、驚いたように目を見開き大声を飛ばした。
「きみ! 何してるんだ! こっちに戻って!」
はっとして、俺も反射的に首を捻り見上げると、取り残してしまっていた蓮田が、吊るされた人物の側で立ち尽くしている光景が目に飛び込んだ。
――あいつは何をやってるんだ?
恐慌状態に陥りかけたとはいえ、彼女を一人残したのは失敗だった。
一度こちらを振り向いた蓮田が、そのままさらに奥へと歩いていく。
「おい、そこにいちゃ駄目だ!」
意を決したように、渡辺さんが石段を駆け上がる。
「あ……」
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