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第二章:悪霊の目覚め
第二章:悪霊の目覚め 8
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自分はどうするべきか。ここで大人しくしているのが最善の策なのかもしれないが、蓮田を放置して逃げた責任もある。
そして、それ以前に一人にされるこの状況が耐えられない。
だからと言って、渡辺さんを追えば死体の下へと向かうことにもなるわけで。
どちらに転んでも安息のない選択肢に迫られながら、俺は次の瞬間には蓮田のいる場所へと走り出していた。
死体に近づくのは怖いが、下で一人待機し万が一不測の事態が起これば、それこそ万事休すだ。
渡辺さんを追いかけるように駆け上がり、頂上へ到着する。
意識して下を向き、目の前にぶら下がる物体を視界から遠ざけた。
「お、おいおい、どうしてきみまで付いてくるんだ。友達を連れて下におりてるんだ」
俺に気づいた渡辺さんが、たしなめるように言ってくる。
無論、そのつもりだった。こんな死体の近くになんか、一秒だっていたくない。
俺は恐る恐る視線を上げ、蓮田の姿を探す。
「おい、蓮田……」
思いのほか近くにいた後輩へ声をかけようとして、すぐにそれをやめる。
蓮田は、じっとこちらを見ていた。目が合った途端、ユラリと左腕を上げ死体の背後を指し示す。
「……長沢先輩。どうやら、碧さんは何者かに殺されたみたいです」
静寂の空間に水滴を落としたような、小さく響く声だった。
「え……?」
そこでやっと、俺は死んでいる人物の名を思い出す。
梅木 碧。村長の長男、晴也さんの奥さんだ。
昨日は初対面の相手が多すぎ、全員の顔と名前を脳が今日に引き継げていなかった。
それに合わせてこの突然の事態による混乱だ。思考回路がまともに処理をしてくれていない。
「お前、何を言ってんだ……?」
呻きながら、俺と渡辺さんは蓮田が示す場所、碧さんの背中が見える位置へと移動する。
「――!」
正面からはわからなかったが、その背中には一本の包丁が突き刺さっていた。
ちょうど心臓の真裏にあたる所だった。
「……背後から襲われて殺害された後、ここに吊り下げられたのかと」
ぽつぽつと蓮田が語る。
身体の奥底がビリビリと痙攣するような、嫌な感覚が背筋を走る。
殺人。
非現実な単語が脳裏をよぎる。
碧さんは、何者かに殺された。
人を殺した人間がこの村に、自分の側に潜んでいる。
「あ……」
そのとき、神社の奥――社殿のある方角を見た渡辺さんが、声を詰まらせたように短く呻いた。
つられて見ると、社殿の扉が壊され、中に納められていたのであろう薄汚れた白い像のような物が、破壊されているのがわかった。
その像が何なのか、ここからでははっきりとは確認できないが、この神社を守る御神体の類であろうとは容易に想像できる。
「悪霊が目覚めた……」
ぼそりと、渡辺さんの呟きが耳に届く。
「悪霊……?」
ふと、言い伝えに出てきた女のことが頭に浮かぶ。
薄暗い周囲を、木々がざわめく音が包む。
言い知れぬ恐怖に心拍数が上がり、心臓が暴れるように脈打つ。まるで、無音の鐘が耳元で鳴らされているように頭が痺れ、視界も揺れる。
これから、自分たちはどうなるのだろう。
足元から這い上がる不安と圧迫感に、俺は震える息を吐き出した。
そして、それ以前に一人にされるこの状況が耐えられない。
だからと言って、渡辺さんを追えば死体の下へと向かうことにもなるわけで。
どちらに転んでも安息のない選択肢に迫られながら、俺は次の瞬間には蓮田のいる場所へと走り出していた。
死体に近づくのは怖いが、下で一人待機し万が一不測の事態が起これば、それこそ万事休すだ。
渡辺さんを追いかけるように駆け上がり、頂上へ到着する。
意識して下を向き、目の前にぶら下がる物体を視界から遠ざけた。
「お、おいおい、どうしてきみまで付いてくるんだ。友達を連れて下におりてるんだ」
俺に気づいた渡辺さんが、たしなめるように言ってくる。
無論、そのつもりだった。こんな死体の近くになんか、一秒だっていたくない。
俺は恐る恐る視線を上げ、蓮田の姿を探す。
「おい、蓮田……」
思いのほか近くにいた後輩へ声をかけようとして、すぐにそれをやめる。
蓮田は、じっとこちらを見ていた。目が合った途端、ユラリと左腕を上げ死体の背後を指し示す。
「……長沢先輩。どうやら、碧さんは何者かに殺されたみたいです」
静寂の空間に水滴を落としたような、小さく響く声だった。
「え……?」
そこでやっと、俺は死んでいる人物の名を思い出す。
梅木 碧。村長の長男、晴也さんの奥さんだ。
昨日は初対面の相手が多すぎ、全員の顔と名前を脳が今日に引き継げていなかった。
それに合わせてこの突然の事態による混乱だ。思考回路がまともに処理をしてくれていない。
「お前、何を言ってんだ……?」
呻きながら、俺と渡辺さんは蓮田が示す場所、碧さんの背中が見える位置へと移動する。
「――!」
正面からはわからなかったが、その背中には一本の包丁が突き刺さっていた。
ちょうど心臓の真裏にあたる所だった。
「……背後から襲われて殺害された後、ここに吊り下げられたのかと」
ぽつぽつと蓮田が語る。
身体の奥底がビリビリと痙攣するような、嫌な感覚が背筋を走る。
殺人。
非現実な単語が脳裏をよぎる。
碧さんは、何者かに殺された。
人を殺した人間がこの村に、自分の側に潜んでいる。
「あ……」
そのとき、神社の奥――社殿のある方角を見た渡辺さんが、声を詰まらせたように短く呻いた。
つられて見ると、社殿の扉が壊され、中に納められていたのであろう薄汚れた白い像のような物が、破壊されているのがわかった。
その像が何なのか、ここからでははっきりとは確認できないが、この神社を守る御神体の類であろうとは容易に想像できる。
「悪霊が目覚めた……」
ぼそりと、渡辺さんの呟きが耳に届く。
「悪霊……?」
ふと、言い伝えに出てきた女のことが頭に浮かぶ。
薄暗い周囲を、木々がざわめく音が包む。
言い知れぬ恐怖に心拍数が上がり、心臓が暴れるように脈打つ。まるで、無音の鐘が耳元で鳴らされているように頭が痺れ、視界も揺れる。
これから、自分たちはどうなるのだろう。
足元から這い上がる不安と圧迫感に、俺は震える息を吐き出した。
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