坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第二章:悪霊の目覚め

第二章:悪霊の目覚め 9

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          【3】

 昇さんが村長や枝橋さんを連れて戻ってきたのは、三十分ほど過ぎた頃だった。

 渡辺さんに言われて蓮田と共に石段を下りて待っていると、二台の車がすぐ側に停車した。

 昇さんが運転する車を下りて、真っ先に石段を駆け上がったのは碧さんの旦那である晴也さんだった。

 その後に自分の車で追ってきた枝橋さんが続き、村長と奥さんの千賀子さんが竜久さんに付き添われるかたちで急ぎ足で上へ向かった。

 枝橋さんの車には、俺と蓮田が一緒にいることを告げられたらしい由奈さんが同乗しており、彼女だけは上には行かず真っ直ぐこちらに歩み寄ってくる。

「二人とも大丈夫?」

 心配そうな顔で俺たちを見比べる由奈さんに、俺は小さく頷いてみせた。

「昇さんから話を聞いて驚いたわよ。二人もこっちに残ってるって言うから、慌ててついてきたんだから」

「すみません」

 こちらが無事なのを理解してか、由奈さんは安堵に表情を緩める。

 だが、それも一瞬だけのことだった。

 この位置からは見えないが、由奈さんは石段を見上げるよう顔を上げ、眉をしかめる。

「……どういう状況なの?」

「上の鳥居で、碧さんが首を吊ってるんです」

「自殺ってこと?」

 視線をこちらに戻しながら、由奈さんが問う。

「いえ、背中に包丁が突き刺さっていたんで、たぶん、殺されたのかと」

 思い出して、俺は胃がひきつるのを自覚した。

「殺されたって……、誰に?」

 そんな俺の説明に大きく目を開く由奈さんへ、首を横に振って答える。

「そんなの、俺にはわかりませんよ」

「この村の誰か……」

 ふいに、隣で呟いたのは蓮田だった。

「え?」

「碧さんを殺したのは、この村の誰かだと思います」

 聞き返す由奈さんをつまらなそうに見据え、蓮田はそう告げる。

「この村の……?」

「村のことを知らない部外者なら、わざわざこんな場所に死体を吊るすとは思えませんので」

「あ、そうか。行き当たりばったりの余所者が犯行に及んだなら、こんな場所にある神社を知ってる時点で不自然だよな」

 コクリと首肯しながら、蓮田が言い添える。

「犯人が死体を吊るす場所を求め、ひたすら村内を歩き回っていた、というなら別ですが」

 それはさすがにないだろう、と俺でも思う。

 深夜か早朝かは知らないが、いつ人目につくかわからないまま死体を持ってうろつくなど、普通に考えてちょっとあり得ない。

 そもそも、犯人は碧さんを背後から刺して殺しているのだ。殺すだけなら、それで良かったはず。

 何故わざわざこんな場所に吊るす必要がある?

「碧さんが、自分からここに来たってことも考えられない?」

 蓮田の話に便乗するように、由奈さんが思いつきを口にする。

「呼び出されたってことですか?」

 釈然としない疑問が浮かび上がった思考を中断し、そう問い返す。

「うん、そう。村の人が犯人なら、難しくはないよ」

「確かに、顔見知りなら不自然な話じゃないとは思いますけど……。呼び出された時間帯にもよりますよね」

「ん……そうね」

 僅かに顎を下げる由奈さんから、その背後に視線を向ける。

 停めた車の前に、昇さんが立っていた。

 上に行く気はないようで、落ち着かなさげに足を揺すりながら煙草をふかしている。
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