坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第二章:悪霊の目覚め

第二章:悪霊の目覚め 10

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 しばらく見ていると視線に気が付いたのか、ふいにこちらへ顔を向けてきた。

 持っていた煙草を足元に捨てて踏み消すと、ゆっくりとした足取りで近づいてくる。

「災難だな。まさか、こんなことが起きるなんて」

 苦い表情でそう言葉を切り出し、俺たちを見回す。

「煙草……」

 ぼそりと蓮田が告げ、無感情な瞳で昇さんを見やる。

「ん?」

「ここは一応、事件現場です。煙草を捨てたりするのは、得策ではないかと」

 たった今踏み潰した吸殻を指差す彼女に、昇さんは困ったように頭へ手をやった。

「ああ、そうか。警察が来たら疑われるか」

 慌てて戻り煙草を拾うと、車の中に捨て直す。

「それにしても、よりによって碧さんが殺されるとは、ちょっと意外だったな」

 再び戻ってくると、昇さんはそう話を続けてきた。

「どういう意味ですかそれ? なんか、他の人なら殺されても驚かない、みたいに聞こえますけど」

 相手の言い方に引っかかるものを感じ、俺は訊いてみる。

「いや、爺さん……ああ、村長なんかは、一部の村人に嫌われてたりするからよ」

「嫌われて?」

 一瞬、昨日のことがフラッシュバックする。吉田と言う男と、剣呑な雰囲気になっていた。

 村の今後のことについて考え方が食い違っていたようだが、そういう対立がもっと大々的に起きているということだろうか。

「まぁ、お気楽爺さんだからな。本人は気にしてないみたいだけど、邪険にされてたりもするのが現実だよ」

 上から、晴也さんの泣き声が聞こえてくる。

 枝橋さんが何かを指示しているようだが、はっきりとは聞き取ることができなかった。

「でも、これからどうなるのかしら……」

 不安気な呟きを足元に落とし、由奈さんは口を引き結ぶ。

「あ、それなら大丈夫じゃねぇかな。亀田かめださん家の息子が警察呼ぶために下に向かったから、すぐにでも何とかしてくれるだろ」

 亀田とは、村人のことだろう。下に向かったということは、電話の繋がるエリアまで行けば、そのまま警察に連絡ができるわけで。

 そうなれば、遅くとも昼前後にはここらにパトカーが押し寄せる計算になる。

 当然、俺と蓮田は死体の第一発見者として、事情聴取を受けることになるのだろう。

 場合によっては、明日には家へ帰されることもあり得るかもしれない。

「警察が来てくれるなら安心ですね。こんな平和な村で殺人事件が起きるなんて、想像もしてなかったわ」

 昇さんの言葉に安堵しつつも、由奈さんは強張らせた表情を完全には崩さなかった。

 薄暗い周囲を改めて見回し、居心地が悪そうに身を竦める。

「……いつ来ても不気味な場所。二人とも、何なら先に宿に戻る? 今ここにいても、気分が落ち着かないでしょ?」

 陰鬱な雰囲気に嫌気でもさしたように俺たちへ向き直ると、由奈さんはそう告げた。

「え? 歩いて、ですか?」

 こんなことが起きた直後で、この薄暗い山道を徒歩で下るというのはさすがに気が進むものではない。

 ましてや蓮田と並んでなど、まるで真昼の肝試しだ。

「まさか。車借りるわよ。いくら朝だからって、こんな道歩いてなんか戻るつもりないって」

 胸の前で広げた手を横に振り、昇さんが運転していた車を指差す由奈さん。
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