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第二章:悪霊の目覚め
第二章:悪霊の目覚め 11
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「昇さん、ちょっとだけ車貸してもらえます?」
「いや、あれ渡辺さんのだからなぁ……。まぁ、別に良いか。その子たち送るのに使うんだったら、文句言われることもねぇだろうし」
ちゃんとこっちに戻してくれよと言い添えて、昇さんが鍵を差し出した。
「すみません。後でわたしからも、渡辺さんには言いますので」
鍵を受け取り礼を言うと、由奈さんは俺たちを視線で促し車へ歩きだす。
「蓮田」
まだ石段の方を見ていた後輩に声をかけ、俺は後に続く。
「おう、気をつけてな」
すれ違いざま言われ、返事をしようと振り向くが、昇さんが話しかけたのが蓮田にであると目線で気づき、そのまま無言で通り過ぎておいた。
言われた蓮田も返事をした気配はなく、結果的に二人して目上の人を無視したかたちになってしまったが、蓮田の責任ということでここは割り切ることにする。
「うわ、これマニュアルだ。苦手なんだよねぇ」
鍵を差し込みながら、車内を覗いた由奈さんがぼやきを口にした。
「免許は取ってるんですよね?」
何とはなしに訊ねてみると、苦笑いのおまけつきで頷きが返ってきた。
「一応ね。でも、免許取ってからはオートマしか乗ってなかったから、感覚忘れてるかも」
「……大丈夫ですかそれで」
漠然と不安がせり上がり、少し乗ることに怖じけづきそうになるも、由奈さんは
「大丈夫よ。別に都会の真ん中走るわけでもないし、無茶しないように運転するから。こんな村、対向車とすれ違うかどうかも微妙なとこなんだし。余裕余裕」
と、開き直ったような言葉を返してくるだけだった。
助手席にというのも気が引けたため、蓮田と並んで後部座席に腰を下ろす。
「じゃあ、行きますか。うわぁ、クラッチの加減が……」
ブツブツと何やら言いながら、由奈さんはエンジンをかけて車をだす。
昨日の運転とは別人のような慎重さで細道を進みはじめると、前方に視線を固定したまま由奈さんが問いを投げかけてきた。
「碧さんのこと一番最初に見つけたの、きみたちなんだって?」
「え? はい、そうですけど」
「凄いね、死体なんか見た後なのに、それだけ冷静でいられるなんて」
そこでやっと、一瞬だが由奈さんの視線がバックミラー越しにこちらへ向けられる。
何となく見つめ合うのも躊躇われたので、さりげなく目を逸らしつつ俺は答えた。
「いや、冷静って言うより、いまいち実感が沸かないだけですよ。死体を見たときは凄い驚きましたけど、何か非現実的過ぎて」
「ああ……、それわかるかも」
小刻みに頷く由奈さんに合わせて、車が揺れる。
「そうだよね。ショッキングなもの見ちゃったら、簡単には受け入れられないよね」
それから、細道を抜けるまで会話は途切れた。湿気を纏った薄暗い空気から解放された車内に、朝の陽射しが差し込む。
砂利によって揺れていた感覚が消え、タイヤはアスファルトを走りだす。
前方に見える藤美荘まではせいぜい数分。ようやく安心できる所まで戻ってこれたと、肩の力が抜けかける。
「あら? あの車は……」
前を見つめていた由奈さんの目元が、僅かに細まる。
何だろうかと思い視線の先を追うと、一台の対向車がかなりのスピードで近づいてきているのがすぐにわかった。
「亀田さん? 警察呼びに行ったんじゃなかったの?」
「いや、あれ渡辺さんのだからなぁ……。まぁ、別に良いか。その子たち送るのに使うんだったら、文句言われることもねぇだろうし」
ちゃんとこっちに戻してくれよと言い添えて、昇さんが鍵を差し出した。
「すみません。後でわたしからも、渡辺さんには言いますので」
鍵を受け取り礼を言うと、由奈さんは俺たちを視線で促し車へ歩きだす。
「蓮田」
まだ石段の方を見ていた後輩に声をかけ、俺は後に続く。
「おう、気をつけてな」
すれ違いざま言われ、返事をしようと振り向くが、昇さんが話しかけたのが蓮田にであると目線で気づき、そのまま無言で通り過ぎておいた。
言われた蓮田も返事をした気配はなく、結果的に二人して目上の人を無視したかたちになってしまったが、蓮田の責任ということでここは割り切ることにする。
「うわ、これマニュアルだ。苦手なんだよねぇ」
鍵を差し込みながら、車内を覗いた由奈さんがぼやきを口にした。
「免許は取ってるんですよね?」
何とはなしに訊ねてみると、苦笑いのおまけつきで頷きが返ってきた。
「一応ね。でも、免許取ってからはオートマしか乗ってなかったから、感覚忘れてるかも」
「……大丈夫ですかそれで」
漠然と不安がせり上がり、少し乗ることに怖じけづきそうになるも、由奈さんは
「大丈夫よ。別に都会の真ん中走るわけでもないし、無茶しないように運転するから。こんな村、対向車とすれ違うかどうかも微妙なとこなんだし。余裕余裕」
と、開き直ったような言葉を返してくるだけだった。
助手席にというのも気が引けたため、蓮田と並んで後部座席に腰を下ろす。
「じゃあ、行きますか。うわぁ、クラッチの加減が……」
ブツブツと何やら言いながら、由奈さんはエンジンをかけて車をだす。
昨日の運転とは別人のような慎重さで細道を進みはじめると、前方に視線を固定したまま由奈さんが問いを投げかけてきた。
「碧さんのこと一番最初に見つけたの、きみたちなんだって?」
「え? はい、そうですけど」
「凄いね、死体なんか見た後なのに、それだけ冷静でいられるなんて」
そこでやっと、一瞬だが由奈さんの視線がバックミラー越しにこちらへ向けられる。
何となく見つめ合うのも躊躇われたので、さりげなく目を逸らしつつ俺は答えた。
「いや、冷静って言うより、いまいち実感が沸かないだけですよ。死体を見たときは凄い驚きましたけど、何か非現実的過ぎて」
「ああ……、それわかるかも」
小刻みに頷く由奈さんに合わせて、車が揺れる。
「そうだよね。ショッキングなもの見ちゃったら、簡単には受け入れられないよね」
それから、細道を抜けるまで会話は途切れた。湿気を纏った薄暗い空気から解放された車内に、朝の陽射しが差し込む。
砂利によって揺れていた感覚が消え、タイヤはアスファルトを走りだす。
前方に見える藤美荘まではせいぜい数分。ようやく安心できる所まで戻ってこれたと、肩の力が抜けかける。
「あら? あの車は……」
前を見つめていた由奈さんの目元が、僅かに細まる。
何だろうかと思い視線の先を追うと、一台の対向車がかなりのスピードで近づいてきているのがすぐにわかった。
「亀田さん? 警察呼びに行ったんじゃなかったの?」
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