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第二章:悪霊の目覚め
第二章:悪霊の目覚め 16
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最後の方はどこか皮肉めいたニュアンスを含ませながら、流森さんはそう締めくくった。
「……まぁ、混乱を防ぐって意味では、確かに一理あるかもね。一応、村長として考えてるってことかな」
「部長、そういう言い方失礼ですよ」
納得したように頷いている部長へ、棘のある口調で桜がたしなめる。
「ごめんごめん。でも、電話が突然通じなくなっちゃってるのはおかしいね。固定電話が使えなかったら、最悪救護ヘリも呼べないわけか」
「救護ヘリ? あんた、そんなの呼ぼうとまで考えてたの?」
「いや、打開策の一つとして、頭に留めておこうかと思ってただけだよ。橋が通じないなら、空から来てもらうしかないでしょ?」
従姉の視線を笑って受け流し、部長は肩を竦める。
「あ、たぶんそれ無理だと思うな」
しかし、そんな打開策の一つをあっさり叩き落とす流森さんの一言に、全員が顔をそちらへ向けた。
「誰だったかなぁ……。たぶん、村長か女将さんだったと思うけど、この辺りは地形だか気流だかの関係で、飛行機が飛ぶのは結構厳しいって教えてくれたことあって。だから、きっと空からの助けとかは難しいかもしれないよ?」
「それ、わたしは初耳ですね。でも、言われてみればここに来てから、飛行機とか見てないかも」
思い返すように天井を見やりながら由奈さんが言うと、部長は平和ボケしたような顔を引き締める。
「だとしたら、尚更本当に橋が無くなってるのか確認しないと。これじゃ予定通りに帰れなくなりそうだ」
「……じゃあ、ちょっと橋の状態確かめてみる? 何だか、わたしが村に招待した責任も出てきそうだし」
決まりが悪そうにそう言うと、由奈さんは流森さんへ苦笑しながら手を合わせた。
「すみません、流森さん。わたし、ちょっとこの子たちと橋見てきますから、代わりに渡辺さんの車返してきてもらえませんか?」
「別にオッケーだよ、それくらい。自分もあっちの様子気になってたし」
二つ返事で頷いて、流森さんは車の鍵を受けとる。
「じゃあ、ちょっと行って来ようか」
「うん、ありがとう」
従姉に先導され部長が歩き、俺たち部員がその後に続く。
「ねぇ、雄治」
残る流森さんを一瞥するように振り向いてから、隣を歩く桜が耳に口を近づけ囁いてきた。
「あたしたち、ホントに閉じ込められちゃってたら、犯人と一緒に村で生活しなきゃいけないってことだよね?」
「知るかよ。犯人、とっくに逃げてるかもしんねぇし」
「え?」
思いつきで口にした言葉だったが、桜は不安気にひそめていた眉を元に戻しながら反応を返してきた。
「犯人が逃走を有利にするために、橋渡ってから火を点けたとか、そういう可能性だってあんだろ?」
「あ、なるほど。……うん、そっちの方が信憑性ありそうな気がするかも」
人は自分の都合の良いことに対して素直に納得しやすい傾向があるとたまに考えるが、まさにこういう部分がそうかもしれない。
幼なじみから視線を外し、そんなことを思う。
とは言え、自分もそうであってほしいと願っているのが本音だが。
――いや、一番は橋が無事で無難に帰れることなんだよな。
それこそ、望みの薄い期待でしかないとわかっていても。
皮肉に口元を歪め、息をつく。
橋が落ちて救助が呼べないという時点で、燃えたのはあの巨大橋だ。
そんなことは、たぶんここにいる全員わかっている。
それでも自分の目で確かめ、本当にどうすることもできないくらい酷い状態なのか、見定めなければ気持ちが落ちつかない。
現場を見て向こう側へ渡る方法を発見できるような、そんな奇跡もあるかもしれない。
「じゃあ、適当に乗っちゃって」
車の鍵を開けた由奈さんが、首だけで振り向きそう言った。
昨日と全く同じ配置で乗り込み、由奈さんが車をスタートさせる。
「やっぱり、自分の車が一番だわ」
場を和ませる意味合いも含めてか、エンジンをかけアクセルを踏んだ由奈さんは安堵したように呟く。
ふと横を見ると、蓮田が普段以上にぼんやりとした気配を放ちながら、じっと自分の足に視線を落としていた。
「どうした蓮田? 具合でも悪くなったのか?」
気になり声をかけてみると、一瞬だけこちらに目をやってからすぐに小さく首を振ってみせた。
「いえ、少し考え事を……」
「ふぅん? なら良いけど」
どことなく後輩の雰囲気に気がかりなものを感じたが、追求はやめておく。
――いつものこと、か。
そう結論付けることでひとまずは納得し、俺は橋へと向かう山道に意識を戻した。
「……まぁ、混乱を防ぐって意味では、確かに一理あるかもね。一応、村長として考えてるってことかな」
「部長、そういう言い方失礼ですよ」
納得したように頷いている部長へ、棘のある口調で桜がたしなめる。
「ごめんごめん。でも、電話が突然通じなくなっちゃってるのはおかしいね。固定電話が使えなかったら、最悪救護ヘリも呼べないわけか」
「救護ヘリ? あんた、そんなの呼ぼうとまで考えてたの?」
「いや、打開策の一つとして、頭に留めておこうかと思ってただけだよ。橋が通じないなら、空から来てもらうしかないでしょ?」
従姉の視線を笑って受け流し、部長は肩を竦める。
「あ、たぶんそれ無理だと思うな」
しかし、そんな打開策の一つをあっさり叩き落とす流森さんの一言に、全員が顔をそちらへ向けた。
「誰だったかなぁ……。たぶん、村長か女将さんだったと思うけど、この辺りは地形だか気流だかの関係で、飛行機が飛ぶのは結構厳しいって教えてくれたことあって。だから、きっと空からの助けとかは難しいかもしれないよ?」
「それ、わたしは初耳ですね。でも、言われてみればここに来てから、飛行機とか見てないかも」
思い返すように天井を見やりながら由奈さんが言うと、部長は平和ボケしたような顔を引き締める。
「だとしたら、尚更本当に橋が無くなってるのか確認しないと。これじゃ予定通りに帰れなくなりそうだ」
「……じゃあ、ちょっと橋の状態確かめてみる? 何だか、わたしが村に招待した責任も出てきそうだし」
決まりが悪そうにそう言うと、由奈さんは流森さんへ苦笑しながら手を合わせた。
「すみません、流森さん。わたし、ちょっとこの子たちと橋見てきますから、代わりに渡辺さんの車返してきてもらえませんか?」
「別にオッケーだよ、それくらい。自分もあっちの様子気になってたし」
二つ返事で頷いて、流森さんは車の鍵を受けとる。
「じゃあ、ちょっと行って来ようか」
「うん、ありがとう」
従姉に先導され部長が歩き、俺たち部員がその後に続く。
「ねぇ、雄治」
残る流森さんを一瞥するように振り向いてから、隣を歩く桜が耳に口を近づけ囁いてきた。
「あたしたち、ホントに閉じ込められちゃってたら、犯人と一緒に村で生活しなきゃいけないってことだよね?」
「知るかよ。犯人、とっくに逃げてるかもしんねぇし」
「え?」
思いつきで口にした言葉だったが、桜は不安気にひそめていた眉を元に戻しながら反応を返してきた。
「犯人が逃走を有利にするために、橋渡ってから火を点けたとか、そういう可能性だってあんだろ?」
「あ、なるほど。……うん、そっちの方が信憑性ありそうな気がするかも」
人は自分の都合の良いことに対して素直に納得しやすい傾向があるとたまに考えるが、まさにこういう部分がそうかもしれない。
幼なじみから視線を外し、そんなことを思う。
とは言え、自分もそうであってほしいと願っているのが本音だが。
――いや、一番は橋が無事で無難に帰れることなんだよな。
それこそ、望みの薄い期待でしかないとわかっていても。
皮肉に口元を歪め、息をつく。
橋が落ちて救助が呼べないという時点で、燃えたのはあの巨大橋だ。
そんなことは、たぶんここにいる全員わかっている。
それでも自分の目で確かめ、本当にどうすることもできないくらい酷い状態なのか、見定めなければ気持ちが落ちつかない。
現場を見て向こう側へ渡る方法を発見できるような、そんな奇跡もあるかもしれない。
「じゃあ、適当に乗っちゃって」
車の鍵を開けた由奈さんが、首だけで振り向きそう言った。
昨日と全く同じ配置で乗り込み、由奈さんが車をスタートさせる。
「やっぱり、自分の車が一番だわ」
場を和ませる意味合いも含めてか、エンジンをかけアクセルを踏んだ由奈さんは安堵したように呟く。
ふと横を見ると、蓮田が普段以上にぼんやりとした気配を放ちながら、じっと自分の足に視線を落としていた。
「どうした蓮田? 具合でも悪くなったのか?」
気になり声をかけてみると、一瞬だけこちらに目をやってからすぐに小さく首を振ってみせた。
「いえ、少し考え事を……」
「ふぅん? なら良いけど」
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