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第二章:悪霊の目覚め
第二章:悪霊の目覚め 17
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【5】
現実で映画のワンシーンを見ているような、しっくりこない気分を味わったというのが正直な感想だった。
由奈さんの運転する車が橋へ到着したとき、まず全員が言葉を失った。
最初に車を下りたのは由奈さん。それに倣うように、俺たちが続いた。
昨日まで確かに存在していたはずの巨大橋。
亀田という村人が言っていた通り、それは完全に焼け落ちてしまい、向こう側に打ち込まれた杭に僅かに焼け残った部分が垂れ下がっているだけの状態だった。
断絶された道を呆然と見ていた桜が、ふらりとした足取りで崖と化した焼け跡に近づく。
「おい、危ねぇぞ」
万が一落ちれば命はない。
後ろから桜に寄り添い、俺は眼下を見下ろした。
遥か下には川が流れ、太陽の光を反射させ輝いている。
「これは、さすがにどうしようもないね。ここまで完璧に燃えちゃってるんじゃ、僕たちには手の打ちようがない」
ポリポリとこめかみを掻きつつ、背後に立つ部長が呟いた。
「由奈さん、町へ下りる道は本当にここしかないの?」
「ないよ。あるなら亀田さんが引き返してくるわけないし。……本当にこんなことになってるなんて、どうしよう」
途方にくれるよう腰に両手をやりながら、由奈さんは落ちた橋の向こうを見つめる。
「やっぱり、碧さんを殺した犯人が、逃げるときに火を点けたのかな?」
俺へと振り向き、言ってくる桜。
「かもな」
断定することもできず、曖昧に頷く。
死体を見て、さらにこんな光景だ。俺自身、夢の中にいるような非現実感がまとわりついて、これらにどう対処して良いのかわからない。
「……でも、あれだね」
微妙な空気になりはじめた周囲に、部長が努めて陽気な口調で声をかけた。
「これだけどうしようもない状況なら、自力で下山は不可能だっていうのがわかったし、残された手段は村の人に警察へ通報してもらう以外は無いってことになるよね」
「そうね、さすがに村長も駄目だなんて言わないと思うし。さぁ、それじゃあ戻りましょ? ここであれこれ悩んでても――」
ぐるりと俺たちを見回しかけた由奈さんだったが、蓮田の姿を視界に捉えると怪訝そうに口を止めた。
それに誘導されるように、ミスオカ研メンバーも蓮田を見つめる。
橋があった場所の近くに土下座するように座り込み、何故かじっとしている。腹痛でうずくまる体勢にも見てとれるが、体調不良というわけではあるまい。
「……乃亜ちゃん、何してるの?」
若干引いたような様子で声をかける桜へ、蓮田は身体を起こしゆっくりと振り返った。
「……おそらく、外れだと思われます」
桜の瞳を直視して、呟く。
「は、外れって、何が?」
「先輩が言った、犯人逃走の仮説です。犯人は、どこへも逃げていません」
視線を足元に戻し、蓮田は橋の焼け跡を示す。
「向こう側の橋が一部燃えないまま垂れ下がっているわけですから、火はこちら側から点けられたと考えるのが妥当です。その証拠に――」
淡々と言いながら、蓮田はまた土下座するように顔を地面に近づけた。
「土から灯油が浸み込んでいる匂いがします。犯人が撒いていたものかと」
「……ちょっとごめんね」
確認するために、部長も蓮田の側に屈み地面に鼻を近づける。
現実で映画のワンシーンを見ているような、しっくりこない気分を味わったというのが正直な感想だった。
由奈さんの運転する車が橋へ到着したとき、まず全員が言葉を失った。
最初に車を下りたのは由奈さん。それに倣うように、俺たちが続いた。
昨日まで確かに存在していたはずの巨大橋。
亀田という村人が言っていた通り、それは完全に焼け落ちてしまい、向こう側に打ち込まれた杭に僅かに焼け残った部分が垂れ下がっているだけの状態だった。
断絶された道を呆然と見ていた桜が、ふらりとした足取りで崖と化した焼け跡に近づく。
「おい、危ねぇぞ」
万が一落ちれば命はない。
後ろから桜に寄り添い、俺は眼下を見下ろした。
遥か下には川が流れ、太陽の光を反射させ輝いている。
「これは、さすがにどうしようもないね。ここまで完璧に燃えちゃってるんじゃ、僕たちには手の打ちようがない」
ポリポリとこめかみを掻きつつ、背後に立つ部長が呟いた。
「由奈さん、町へ下りる道は本当にここしかないの?」
「ないよ。あるなら亀田さんが引き返してくるわけないし。……本当にこんなことになってるなんて、どうしよう」
途方にくれるよう腰に両手をやりながら、由奈さんは落ちた橋の向こうを見つめる。
「やっぱり、碧さんを殺した犯人が、逃げるときに火を点けたのかな?」
俺へと振り向き、言ってくる桜。
「かもな」
断定することもできず、曖昧に頷く。
死体を見て、さらにこんな光景だ。俺自身、夢の中にいるような非現実感がまとわりついて、これらにどう対処して良いのかわからない。
「……でも、あれだね」
微妙な空気になりはじめた周囲に、部長が努めて陽気な口調で声をかけた。
「これだけどうしようもない状況なら、自力で下山は不可能だっていうのがわかったし、残された手段は村の人に警察へ通報してもらう以外は無いってことになるよね」
「そうね、さすがに村長も駄目だなんて言わないと思うし。さぁ、それじゃあ戻りましょ? ここであれこれ悩んでても――」
ぐるりと俺たちを見回しかけた由奈さんだったが、蓮田の姿を視界に捉えると怪訝そうに口を止めた。
それに誘導されるように、ミスオカ研メンバーも蓮田を見つめる。
橋があった場所の近くに土下座するように座り込み、何故かじっとしている。腹痛でうずくまる体勢にも見てとれるが、体調不良というわけではあるまい。
「……乃亜ちゃん、何してるの?」
若干引いたような様子で声をかける桜へ、蓮田は身体を起こしゆっくりと振り返った。
「……おそらく、外れだと思われます」
桜の瞳を直視して、呟く。
「は、外れって、何が?」
「先輩が言った、犯人逃走の仮説です。犯人は、どこへも逃げていません」
視線を足元に戻し、蓮田は橋の焼け跡を示す。
「向こう側の橋が一部燃えないまま垂れ下がっているわけですから、火はこちら側から点けられたと考えるのが妥当です。その証拠に――」
淡々と言いながら、蓮田はまた土下座するように顔を地面に近づけた。
「土から灯油が浸み込んでいる匂いがします。犯人が撒いていたものかと」
「……ちょっとごめんね」
確認するために、部長も蓮田の側に屈み地面に鼻を近づける。
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