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第二章:悪霊の目覚め
第二章:悪霊の目覚め 30
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【9】
「事務室に行ってどうするつもりなの?」
足音だけが反響していた廊下に、桜の声が混じる。
「状況確認みたいなもんかな。村から出る方法とか、誰か思いついてたりしたらラッキーだろ?」
事務室へは、結局三人で行くことになった。
一人でいても暇だからと加わった幼なじみは、まだ若干眠そうな雰囲気を滲ませているが、蓮田の方はいつもと変わらぬポーカーフェイス。
あくびを噛み殺す素振りすら見せやしない。
「あ、それあるかもね。何だかんだ言っても、この村にいるのってほとんど高齢者だし、そういう知恵とか知識持っててもおかしくない気がする」
僅かに下がって歩いていた桜が、歩調を早めて隣へ並ぶ。それほど広くない廊下を、三人が横一列で歩くかたちになった。
階段を下りて一階へ。
昇ったばかりの太陽が所々を優しく照らす中、事務室の前まで移動しドアをノックする。
一拍の間を置いて、中から返事が聞こえてきた。
「おはようございます」
挨拶をしながらドアを開ける。
「あら、きみたちか。おはよう、ちゃんと眠れ……たようには見えないね」
事務室の中、奥にあるデスクに座っていた流森さんが椅子ごとこちらを向いて、困ったような笑みを浮かべそう言ってきた。
「はい。夜中に何度も目を覚ましたりしてました。由奈さんたちはいないんですか?」
答えながら室内を見回すが、流森さん以外に人の姿はない。
「由奈さんなら村長の家に行ってるよ。渡辺さんは厨房で朝食の準備中で、女将は……今日はこっちに来ないかも。碧さんのこと、かなりショック受けてたみたいだから」
「ああ……そうらしいですね。あの、警察とかに連絡とかは? 相変わらず駄目ですか?」
「無理だね。電話線直せる人いないし、手詰まりなまま」
諦めを滲ませながら首を振り、流森さんは立ち上がる。
「良かったらコーヒーでもどう?」
部屋の隅に置かれていたコーヒーメーカーを指差す流森さんへ、俺と桜は一瞬目を合わせてから頷きを返した。
「すみません、いただきます」
ちょうど良い眠気覚ましだ。素直にありがたい。
「オッケー。適当に座っててよ」
言って立ち上がると、戸棚から人数分のコーヒーカップを取り出し、流森さんは準備を始めたが、そこでふと何かに気づいたように手を止めて、こちらに首を曲げてきた。
「そういえば、もう一人の子は? 部長くんがいないけど」
「彼ならまだ寝てます。情けないことに低血圧らしくて」
答えたのは桜だ。
「へぇ、あの子朝弱いんだ?」
含み笑いを浮かべながら顔を戻し、流森さんは作業を再開する。
その間に、俺たちは手近な場所に置かれた客用ソファーへ腰を下ろした。
「部長、目を覚ましてあたしたちいないのに気がついたら慌てるかな?」
真ん中に陣取った桜が、いたずらをする子供のようなノリで訊ねてくる。
「ないだろ。あの部長がそんなことで取り乱すなんて、想像できねぇし。気楽に茶でも飲んでそうだけどな」
「そっかぁ。……あの人本気で驚かせる方法って何かあるのかな? 階段で背後から押してみるとか」
「朝っぱらから何を言ってんだお前は?」
馬鹿なことを言い出す桜を横目で睨み付け、低く呻く。
「はい、お待たせ」
「事務室に行ってどうするつもりなの?」
足音だけが反響していた廊下に、桜の声が混じる。
「状況確認みたいなもんかな。村から出る方法とか、誰か思いついてたりしたらラッキーだろ?」
事務室へは、結局三人で行くことになった。
一人でいても暇だからと加わった幼なじみは、まだ若干眠そうな雰囲気を滲ませているが、蓮田の方はいつもと変わらぬポーカーフェイス。
あくびを噛み殺す素振りすら見せやしない。
「あ、それあるかもね。何だかんだ言っても、この村にいるのってほとんど高齢者だし、そういう知恵とか知識持っててもおかしくない気がする」
僅かに下がって歩いていた桜が、歩調を早めて隣へ並ぶ。それほど広くない廊下を、三人が横一列で歩くかたちになった。
階段を下りて一階へ。
昇ったばかりの太陽が所々を優しく照らす中、事務室の前まで移動しドアをノックする。
一拍の間を置いて、中から返事が聞こえてきた。
「おはようございます」
挨拶をしながらドアを開ける。
「あら、きみたちか。おはよう、ちゃんと眠れ……たようには見えないね」
事務室の中、奥にあるデスクに座っていた流森さんが椅子ごとこちらを向いて、困ったような笑みを浮かべそう言ってきた。
「はい。夜中に何度も目を覚ましたりしてました。由奈さんたちはいないんですか?」
答えながら室内を見回すが、流森さん以外に人の姿はない。
「由奈さんなら村長の家に行ってるよ。渡辺さんは厨房で朝食の準備中で、女将は……今日はこっちに来ないかも。碧さんのこと、かなりショック受けてたみたいだから」
「ああ……そうらしいですね。あの、警察とかに連絡とかは? 相変わらず駄目ですか?」
「無理だね。電話線直せる人いないし、手詰まりなまま」
諦めを滲ませながら首を振り、流森さんは立ち上がる。
「良かったらコーヒーでもどう?」
部屋の隅に置かれていたコーヒーメーカーを指差す流森さんへ、俺と桜は一瞬目を合わせてから頷きを返した。
「すみません、いただきます」
ちょうど良い眠気覚ましだ。素直にありがたい。
「オッケー。適当に座っててよ」
言って立ち上がると、戸棚から人数分のコーヒーカップを取り出し、流森さんは準備を始めたが、そこでふと何かに気づいたように手を止めて、こちらに首を曲げてきた。
「そういえば、もう一人の子は? 部長くんがいないけど」
「彼ならまだ寝てます。情けないことに低血圧らしくて」
答えたのは桜だ。
「へぇ、あの子朝弱いんだ?」
含み笑いを浮かべながら顔を戻し、流森さんは作業を再開する。
その間に、俺たちは手近な場所に置かれた客用ソファーへ腰を下ろした。
「部長、目を覚ましてあたしたちいないのに気がついたら慌てるかな?」
真ん中に陣取った桜が、いたずらをする子供のようなノリで訊ねてくる。
「ないだろ。あの部長がそんなことで取り乱すなんて、想像できねぇし。気楽に茶でも飲んでそうだけどな」
「そっかぁ。……あの人本気で驚かせる方法って何かあるのかな? 階段で背後から押してみるとか」
「朝っぱらから何を言ってんだお前は?」
馬鹿なことを言い出す桜を横目で睨み付け、低く呻く。
「はい、お待たせ」
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