坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

文字の大きさ
65 / 173
第二章:悪霊の目覚め

第二章:悪霊の目覚め 35

しおりを挟む
 満身創痍に近い状態の晴也さんの背後から、首にロープを巻く犯人を想像する。

 あり得ない話ではないし、むしろ納得できる推測だ。

 そんなことを考えている間に、晴也さんの身体が床に横たえられた。

 大人二人がかりで寝かせた後には、首に巻かれたロープを外す作業。

 本来なら警察が来るまではへたにいじらない方が良いのかもしれないが、現状そうは言っていられない。

 村長や千賀子さんに関しては、自分の息子がいつまでも首を絞められてままでいるのは心苦しいだろう。

「あぁ! 晴也……晴也ぁ……!」

 老人に背中をさすられながら、千賀子さんが嗚咽を漏らす。

 初めて会ったときの悠然としたイメージはなく、今はただ無力なだけの老女といった感じがした。

「蓮田……?」

 立ち止まって中を眺めていた蓮田が、蔵から顔を背け元来た道を戻りだす。

「戻れと言われたので、そろそろ……」

「……そうか」

 素直になるのは良いことだ。これ以上目をつけられる前に戻れるなら、それにこしたことはない。

 どこまでも自分のペースを崩さない蓮田に振り回されているのを自覚しつつ、俺もまた入口である門へと引き返していく。

「あれ? きみたち、どうしてここに?」

 ちょうど蓮田が門の外へ出たのに合わせるように、枝橋さんが現場へ駆けつけてきた。そのすぐ後ろには、彼を呼びに行っていた昇さんの姿もある。

「あ、いえ……。村長の家、何か大変なことになってるって聞いて、心配になって。その、昨日のこともありますし」

 咄嗟のことにうまい言い訳も浮かばず、しどろもどろな口調になってしまう。

 主犯格であるはずの蓮田は、相変わらずしれっとした表情でそっぽを向いており、対応は全て丸投げしてくれている。

「ああ……まぁ、心配になる気持ちはわかるけど、二人は宿に戻っていた方が良いよ。こっちは少しばたばたするだろうし」

 平静を装うように、枝橋さんは言った。

 元は警察だというだけあり、こういう場面には慣れている感じがする。

「はい、邪魔してすみません」

 自分一人で頭を下げ、大人二人に道を開ける。

 駆けていく枝橋さんたちを見送ってから、蓮田を睨む。

「お前も謝れよな」

「……? すみません」

「いや、俺にじゃなくてよ……」

 何故謝罪を求められているのだろう。

 そう言いたそうな様子で僅かに首を俯かせる相手へ、俺はため息をついて苦笑を返した。

「まぁ、今更か。さっさと戻ろうぜ。部長、来る気配ないから部屋で待ってんだろうし」

「はい」

 素直に頷き歩みを再開する蓮田を確認して、俺はもう一度蔵の方へ視線を向ける。

 寝かされた晴也さんの側に、枝橋さんが膝まづいているのが小さく見えた。たぶん、死体の状況を確認しているのか。

 その平和な朝日の中で展開される非現実的で禍々しい光景に、あらためて憂鬱感が込み上げる。

 碧さんと晴也さんを殺した犯人は、同一人物。それは即ち、この村に殺人鬼が紛れている証明。

 誰が二人を殺したのか。

 まだ、悲劇は続くのか。

 明確にならない不安と謎だけが増え、俺は平穏だった村の中に見えない漆黒の影が広がっていくような、そんな感覚に襲われた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小説探偵

夕凪ヨウ
ミステリー
 20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。  男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。  そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。  小説探偵、と。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~

水無月礼人
ミステリー
 子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。  故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。  嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。  不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。 ※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。  【アルファポリス】でも公開しています。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...