坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

文字の大きさ
67 / 173
第三章:藤花に消えた死体

第三章:藤花に消えた死体 2

しおりを挟む
          【2】

 朝食を終えたのは、午前九時を過ぎた頃だった。

 肉や魚類は買い出しが不可能のために在庫が無くなってきているらしく、出てきたものは山菜関係がメインとなっていたが、それでも渡辺さんの作る料理は美味しかった。

 梅木家では、あれからどんな進展があったのか。藤美荘にとどまっているこの状況では、まったく把握することができていない。

 一応、窓から村長の家を確認することはできるのだが、人の出入りが多いこと以外得られる情報がないのだ。

「……そういえば、僕渡辺さんに訊きたいことがあったんですけど、良いですか?」

 全員食事が終わり、ひとまず部屋へ戻ろうかと思い始めた矢先。

 由奈さんたちと共に食器の片付けに来ていた渡辺さんへ、そう話しかけたのは部長だった。

「ん? 何だい?」

 動かしていた手を止め、渡辺さんは微笑を浮かべて振り返る。

「渡辺さん、藤守神社の社殿に納められていた白い像について、何か知っていることとかあります?」

「……ああ、あれか」

 白い像、という言葉に反応し、渡辺さんはほんの一瞬表情を曇らせる。

 それでも、すぐに元の柔和な顔に戻ると、少しだけ困ったようなニュアンスで口を開いてきた。

「以前、村長から教えてもらったことなんだけどね。つまらない話だよ?」

「構いません。迷惑でなければ、是非とも教えてください」

 前置きする渡辺さんへにこやかに頷き、部長は先を促した。

「きみたちが調べてる言い伝えに出てくる村娘。その怨霊を、あの社殿の中に封印してるっていう話でね。その依り代にするため用意されたのが、中に納められた白い女性の像なわけさ。壊されていたのに気づいたときは驚いたよ。言い伝えの悪霊が出てきたんじゃないかってね。実際、そんなお伽噺が本当にあるわけないのにさ」

 最後は自嘲気味に言って、渡辺さんは白い歯を見せる。

 どうやら、あの像に関しての推測は部長の想像した通りで間違いなかったようだ。当の本人も、渡辺さんの説明に満足したように笑みを浮かべている。

「確か、藤守神社ってもともとその悪霊を封じ込めるための場所なんですよね」

 由奈さんに教えられた話を思い返しながらだろう、桜が言った。

「そう……、藤の悪霊を封印して村を守るための神社って意味で名付けられた場所だよ。何も知らない人なら、村のシンボルの巨大藤を守る神様でも祀ってると思うんだろうね」

 名前だけで判断すれば、大抵は勘違いするだろう。最初は、自分も間違えて解釈していたから断言できる。

「やっぱり、白い像は村の言い伝えに関わる物だったわけですね。あの、ついでにもう一つだけ訊いても大丈夫ですか?」

 目の前の会話が一段落しかけたところで、すかさず部長は話を進める。

「良いよ。何が聞きたいんだい?」

 嫌な顔もせず頷く渡辺さんを確認すると、部長はほがらかな表情のまま物騒な話題を口にした。

「碧さんの殺された場所や時間って、渡辺さんは教えられてたりしてますか?」

 そのあまりにストレートな訊き方に、俺と桜は驚いたように部長を見つめた。

 側で片付けをしていた由奈さんも、ほんの一瞬手の動きを止め従弟を一瞥する。

 しかし、質問をした本人は周りを気にする風でもなく、渡辺さんの返事を待つだけだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小説探偵

夕凪ヨウ
ミステリー
 20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。  男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。  そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。  小説探偵、と。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~

水無月礼人
ミステリー
 子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。  故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。  嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。  不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。 ※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。  【アルファポリス】でも公開しています。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...