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第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 5
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従業員同士で顔を見合わせ、渡辺さんは苦笑した。
「うーん……それじゃあ、村長の家に入り込もうと思った場合、理屈上誰でも忍び込める状態ではあった。という解釈で良いのかな」
「うん、そういうことになるね。他には、聞きたいことあるかい? ないなら仕事に戻るけど」
話している間に、食器の片付けはほぼ終わりかけていた。これから厨房で洗い物となるのだろう。
「はい、ひとまずこれくらいで。すごく参考になりました」
「うん。……もう一回言っておくけど、あまり厄介事には関わらない方が良いからね。事件に関しては、村の人たちが何とかしてくれるはずだから」
最後にそう念を押すように告げて、渡辺さんは由奈さんたち女性二人を促し部屋を後にしようと背を向ける。
俺たちも部屋に戻る頃合いだろう。そう思い部長へ視線を送る俺の後ろを、おもむろに立ち上がった蓮田が通り過ぎていった。
「あれ? 乃亜ちゃん、部屋に戻るなら一緒に――」
追いかけようと腰を浮かせかけた桜の声を無視して、蓮田は渡辺さんの背後へ歩み寄る。
「あの……」
そのまま、摘まむようにして渡辺さんの服を掴むと、抑揚の無い呟きを漏らした。
「ん? どうしたの?」
彼女に声をかけられることは、さすがの渡辺さんも予想外だったらしく、少し意外そうな面持ちになっている。
「……包丁は、どこのものでしたか?」
振り向いた渡辺さんをじっと見つめるように見上げ、蓮田が言った。
「え? 包丁?」
「碧さんの背中に刺さっていた包丁です。どこにあったものなのか、特定はできましたか?」
怪訝そうに聞き返す相手へそう言い直し、蓮田が一度こちらへ目を向ける。
それにどんな意味があったのかは知らないが、あのとき一緒にいた俺にも聞かせようと意識しての行為だったのかもしれない。
ともあれ、問われた渡辺さんは今までで一番困惑した表情を浮かべ、蓮田の顔から床に視線を逸らしていた。
「それかぁ……。正直、ちょっとしてほしくない質問だったなぁ」
ぎこちない微笑をみせ、それから何かを確認するように俺たちメンバーを一瞥する。
「……あの包丁は、ここの厨房から持ち出されたものだったよ」
「え? ここの?」
重い口を開くといった様子の渡辺さんの言葉に、桜が不快気に眉を寄せる。
「それじゃあ、犯人は厨房に出入りする人ってことですか?」
「いや、そうは言い切れないよ」
即座に否定し、桜の疑問にまったをかける渡辺さん。
「使われたのは、予備で保管していた新品の包丁。普段は棚の中にしまっていたから、ぼくとしてもいつの間に盗まれたのかはちょっとわからないんだ。厨房……というか、この藤美荘自体も基本的に日中なら出入りは自由にできちゃうし、監視カメラとかもないからね。そこにきて従業員も少ないだろ? 忍び込んで包丁を盗むくらい、タイミングさえはかれば誰にでもチャンスはある。枝橋さんにもこのことは話してあるし、納得してくれてるよ」
自分に変な疑いを持たれることを危惧してか、渡辺さんは若干捲し立てるようにしてそこまで告げた。
「うーん……それじゃあ、村長の家に入り込もうと思った場合、理屈上誰でも忍び込める状態ではあった。という解釈で良いのかな」
「うん、そういうことになるね。他には、聞きたいことあるかい? ないなら仕事に戻るけど」
話している間に、食器の片付けはほぼ終わりかけていた。これから厨房で洗い物となるのだろう。
「はい、ひとまずこれくらいで。すごく参考になりました」
「うん。……もう一回言っておくけど、あまり厄介事には関わらない方が良いからね。事件に関しては、村の人たちが何とかしてくれるはずだから」
最後にそう念を押すように告げて、渡辺さんは由奈さんたち女性二人を促し部屋を後にしようと背を向ける。
俺たちも部屋に戻る頃合いだろう。そう思い部長へ視線を送る俺の後ろを、おもむろに立ち上がった蓮田が通り過ぎていった。
「あれ? 乃亜ちゃん、部屋に戻るなら一緒に――」
追いかけようと腰を浮かせかけた桜の声を無視して、蓮田は渡辺さんの背後へ歩み寄る。
「あの……」
そのまま、摘まむようにして渡辺さんの服を掴むと、抑揚の無い呟きを漏らした。
「ん? どうしたの?」
彼女に声をかけられることは、さすがの渡辺さんも予想外だったらしく、少し意外そうな面持ちになっている。
「……包丁は、どこのものでしたか?」
振り向いた渡辺さんをじっと見つめるように見上げ、蓮田が言った。
「え? 包丁?」
「碧さんの背中に刺さっていた包丁です。どこにあったものなのか、特定はできましたか?」
怪訝そうに聞き返す相手へそう言い直し、蓮田が一度こちらへ目を向ける。
それにどんな意味があったのかは知らないが、あのとき一緒にいた俺にも聞かせようと意識しての行為だったのかもしれない。
ともあれ、問われた渡辺さんは今までで一番困惑した表情を浮かべ、蓮田の顔から床に視線を逸らしていた。
「それかぁ……。正直、ちょっとしてほしくない質問だったなぁ」
ぎこちない微笑をみせ、それから何かを確認するように俺たちメンバーを一瞥する。
「……あの包丁は、ここの厨房から持ち出されたものだったよ」
「え? ここの?」
重い口を開くといった様子の渡辺さんの言葉に、桜が不快気に眉を寄せる。
「それじゃあ、犯人は厨房に出入りする人ってことですか?」
「いや、そうは言い切れないよ」
即座に否定し、桜の疑問にまったをかける渡辺さん。
「使われたのは、予備で保管していた新品の包丁。普段は棚の中にしまっていたから、ぼくとしてもいつの間に盗まれたのかはちょっとわからないんだ。厨房……というか、この藤美荘自体も基本的に日中なら出入りは自由にできちゃうし、監視カメラとかもないからね。そこにきて従業員も少ないだろ? 忍び込んで包丁を盗むくらい、タイミングさえはかれば誰にでもチャンスはある。枝橋さんにもこのことは話してあるし、納得してくれてるよ」
自分に変な疑いを持たれることを危惧してか、渡辺さんは若干捲し立てるようにしてそこまで告げた。
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