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第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 6
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例の包丁に関しては、確かに重要な部分だろう。
そのことを確認したのが蓮田であるという点は特異なことだが、事件の情報としては的を得た発言だ。
それは部長も感じていたようで、どこか関心したように後輩の様子を眺めていた。
「では最近、厨房を荒らされたりしたようなことは?」
「いや、そういうことはなかったかな。少なくとも、普段から利用してるぼくが気づくような変化は何もなかったよ」
「そうですか」
僅かに頷いて、蓮田が摘まんでいた服を離す。
「質問は以上で?」
「はい。……ありがとうございます」
笑顔で問う渡辺さんへ無表情のまま――こちらから顔は見えないが、まず間違いない――首肯して、蓮田は席へ引き返し無言で座った。
「それじゃあぼくたちは行くから、きみたちもそろそろ部屋に戻りなよ?」
「はい、いろいろとありがとうございました。食事、美味しかったです」
部屋を出ていく渡辺さんへ部長が告げて、室内にはミスオカメンバーのみが残される。
「……どうだろう。今の話だけでわかることって何かあるかな?」
大人たち三人の足音が遠ざかるのを聞いてから、部長は俺たち部員を順繰りに見やる。
「何かって言われても……。犯人の行動が少しはっきりした、くらいのことじゃないんですか?」
口を尖らせながら、桜が不満気に言う。
このまま事件の話を継続することに反対したいと言わんばかりの投げやりさが、その表情ににじみ出ている。
「うん、そうだね。とりあえずはそれかな。村長の家に入り込むのも、凶器に使われた包丁を盗みだすのも理論上誰でも可能だった。これだけははっきりしたわけだ」
やる気のない桜へ相槌を打ちながら、部長が言葉をまとめる。
「あの……」
だが、それにあっさりと異を唱える声がすぐ側であがった。
「……犯人は、身近にいると思います」
食器類が全てさげられ何も無くなったテーブルに視線を這わせながら、そう呟いたのは蓮田だ。
「身近って、どういうことだ?」
代表するようなかたちになりつつ俺が訊ねると、蓮田はちろりと瞳だけをこちらに向け、その小さな唇を動かした。
「あくまでも現時点での憶測でしかありませんが、包丁の件に違和感を覚えました」
「包丁?」
「はい。渡辺さんが嘘をついていないのであれば、犯人はわざわざ棚にしまっておいた予備の包丁を持ち出したわけです。普段使用している方ではなく、新品の包丁を」
「……あ、そうか」
そこまで聞いて、俺は蓮田が伝えようとしていることに見当がついた。
「確か、渡辺さんは厨房を荒らされた形跡はないって言ってたよな?」
蓮田の顔を見て確認をすると、彼女は黙って頷く。
「え? 何? 二人して意志疎通しちゃってる?」
今だ話が見えないでいる桜は、俺と後輩を交互に見やりながら眉間に小さな皺を刻む。
そんな幼なじみを一瞥し、俺は蓮田が気づいたであろう不審点を説明する。
「厨房にはおそらく、凶器になったやつの他にも数種類の包丁や凶器になりうる道具があったはずなんだ。そんな環境の中において、犯人はどこかの棚にしまわれていたらしい包丁を持ち出した。いちいちそんなことをしなくても、渡辺さんが普段使っている包丁とかが、もっとわかりやすい場所に管理されていたはずなのに、だ」
「……あ、言われてみればそれちょっと変かも」
そのことを確認したのが蓮田であるという点は特異なことだが、事件の情報としては的を得た発言だ。
それは部長も感じていたようで、どこか関心したように後輩の様子を眺めていた。
「では最近、厨房を荒らされたりしたようなことは?」
「いや、そういうことはなかったかな。少なくとも、普段から利用してるぼくが気づくような変化は何もなかったよ」
「そうですか」
僅かに頷いて、蓮田が摘まんでいた服を離す。
「質問は以上で?」
「はい。……ありがとうございます」
笑顔で問う渡辺さんへ無表情のまま――こちらから顔は見えないが、まず間違いない――首肯して、蓮田は席へ引き返し無言で座った。
「それじゃあぼくたちは行くから、きみたちもそろそろ部屋に戻りなよ?」
「はい、いろいろとありがとうございました。食事、美味しかったです」
部屋を出ていく渡辺さんへ部長が告げて、室内にはミスオカメンバーのみが残される。
「……どうだろう。今の話だけでわかることって何かあるかな?」
大人たち三人の足音が遠ざかるのを聞いてから、部長は俺たち部員を順繰りに見やる。
「何かって言われても……。犯人の行動が少しはっきりした、くらいのことじゃないんですか?」
口を尖らせながら、桜が不満気に言う。
このまま事件の話を継続することに反対したいと言わんばかりの投げやりさが、その表情ににじみ出ている。
「うん、そうだね。とりあえずはそれかな。村長の家に入り込むのも、凶器に使われた包丁を盗みだすのも理論上誰でも可能だった。これだけははっきりしたわけだ」
やる気のない桜へ相槌を打ちながら、部長が言葉をまとめる。
「あの……」
だが、それにあっさりと異を唱える声がすぐ側であがった。
「……犯人は、身近にいると思います」
食器類が全てさげられ何も無くなったテーブルに視線を這わせながら、そう呟いたのは蓮田だ。
「身近って、どういうことだ?」
代表するようなかたちになりつつ俺が訊ねると、蓮田はちろりと瞳だけをこちらに向け、その小さな唇を動かした。
「あくまでも現時点での憶測でしかありませんが、包丁の件に違和感を覚えました」
「包丁?」
「はい。渡辺さんが嘘をついていないのであれば、犯人はわざわざ棚にしまっておいた予備の包丁を持ち出したわけです。普段使用している方ではなく、新品の包丁を」
「……あ、そうか」
そこまで聞いて、俺は蓮田が伝えようとしていることに見当がついた。
「確か、渡辺さんは厨房を荒らされた形跡はないって言ってたよな?」
蓮田の顔を見て確認をすると、彼女は黙って頷く。
「え? 何? 二人して意志疎通しちゃってる?」
今だ話が見えないでいる桜は、俺と後輩を交互に見やりながら眉間に小さな皺を刻む。
そんな幼なじみを一瞥し、俺は蓮田が気づいたであろう不審点を説明する。
「厨房にはおそらく、凶器になったやつの他にも数種類の包丁や凶器になりうる道具があったはずなんだ。そんな環境の中において、犯人はどこかの棚にしまわれていたらしい包丁を持ち出した。いちいちそんなことをしなくても、渡辺さんが普段使っている包丁とかが、もっとわかりやすい場所に管理されていたはずなのに、だ」
「……あ、言われてみればそれちょっと変かも」
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