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第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 8
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【3】
朝食を済ませて部屋に戻り、まとまらない話も終わって正午前。時刻は、午前の十一時半になろうとしている。
相変わらず、窓から見える村長宅はバタバタとしており、村人たちの往来が激しい。
動き回っているのは全員自警団なのか、女性の姿はほとんど目にすることはなかった。
由奈さんたちは藤美荘での仕事に従事しているのか、食堂で会ってからは顔を見ていない。
「ものものしい雰囲気だね。僕個人は死体を目の当たりにしたわけじゃないから、まだ少し恐怖感的なものは薄いけど、ああいう光景を見てると現実なんだなって再認識させられるよ」
隣に歩み寄ってきた部長が、外を眺めながらそんなことを言ってきた。
言われてみれば、部長と桜は一度も死体を見ていない。碧さんと晴也さん、両方とも発見役は俺と蓮田だ。
「犯人は、いったいどんな目的で二人を殺したんだろうね」
余計なことを考えている間にも、部長の話は続く。
「あの夫婦に恨みががあったのかな。もしそうなら、犯人の目的は既に達成だ。これ以上、悲劇は起こらない」
普段通りの、微かな笑みを浮かべたまま話すその言葉は、内容とは裏腹に他愛ない世間話をしているようにも聞こえ、どこか不思議な気分になった。
「でも、犯人の目的がまだ達成されていないのなら、話は別だ。このまま進展がなければ、また誰かが狙われる」
ついっと、部長の瞳がこちらを向く。
「誰が狙われているのかわからないから、手もうてない。晴也さん夫婦と関わりのある人たちが狙われるなら、梅木家の人たち全員がターゲットなのかな? それとも、普段から仲が良くて家族ぐるみで付き合っていた村人とか」
「そんなの、俺にだってわかんないっすよ。この村の人間関係、全部調べようとか思ってます?」
さっきまで一緒にいた女子二人は、今は自分たちの部屋へ引き返している。
部長があまりにも事件に関する話題ばかり口にするため、桜が嫌気をさしたのが原因なのだが。
ともあれ、現在室内には部長と俺の二人きり。
「桜は確実に嫌がりますよ。ただでさえ、事件からは距離を置きたがってるみたいなんすから」
「うん、それは僕も気づいているよ」
肩を竦めながら窓の外へ視線を戻し、部長は目に見えてわかるくらいに口角を上げた。
「桜くんは、もう少し積極性が欲しいね。ホラーやミステリーのジャンルに興味はあるけど、自分から実際に関わるのを怖がってる。怖いもの見たさに、ホラービデオを借りてくるだけと同レベルの意識だ。非常にもったいない」
「それが普通でしょう? 別に、この手のジャンルで専門家目指してるってわけでもないですし。あいつとしてはたぶん、手軽に楽しめる部活だと想像して、ここ選んだと思うんすよね。なのに、いきなりこんな村に幽閉されて殺人まで起きたら、それで目を輝かせろ言う方が酷じゃないっすか」
桜の肩を持つつもりではないが、自分の考えを素直に告げる。
結局、桜は単なる怖いもの好き。彼女はまだ自分の目で死体を見ていないから、あそこまで落ち着いた状態を保てているが、そうでなければ今頃、食事も喉を通らなくなるくらいには鬱ぎ込んでしまっていたかもしれない。
「そこまで言うつもりはないけど、この状況から目を逸らさないくらいの精神力は持ってほしいってことさ」
朝食を済ませて部屋に戻り、まとまらない話も終わって正午前。時刻は、午前の十一時半になろうとしている。
相変わらず、窓から見える村長宅はバタバタとしており、村人たちの往来が激しい。
動き回っているのは全員自警団なのか、女性の姿はほとんど目にすることはなかった。
由奈さんたちは藤美荘での仕事に従事しているのか、食堂で会ってからは顔を見ていない。
「ものものしい雰囲気だね。僕個人は死体を目の当たりにしたわけじゃないから、まだ少し恐怖感的なものは薄いけど、ああいう光景を見てると現実なんだなって再認識させられるよ」
隣に歩み寄ってきた部長が、外を眺めながらそんなことを言ってきた。
言われてみれば、部長と桜は一度も死体を見ていない。碧さんと晴也さん、両方とも発見役は俺と蓮田だ。
「犯人は、いったいどんな目的で二人を殺したんだろうね」
余計なことを考えている間にも、部長の話は続く。
「あの夫婦に恨みががあったのかな。もしそうなら、犯人の目的は既に達成だ。これ以上、悲劇は起こらない」
普段通りの、微かな笑みを浮かべたまま話すその言葉は、内容とは裏腹に他愛ない世間話をしているようにも聞こえ、どこか不思議な気分になった。
「でも、犯人の目的がまだ達成されていないのなら、話は別だ。このまま進展がなければ、また誰かが狙われる」
ついっと、部長の瞳がこちらを向く。
「誰が狙われているのかわからないから、手もうてない。晴也さん夫婦と関わりのある人たちが狙われるなら、梅木家の人たち全員がターゲットなのかな? それとも、普段から仲が良くて家族ぐるみで付き合っていた村人とか」
「そんなの、俺にだってわかんないっすよ。この村の人間関係、全部調べようとか思ってます?」
さっきまで一緒にいた女子二人は、今は自分たちの部屋へ引き返している。
部長があまりにも事件に関する話題ばかり口にするため、桜が嫌気をさしたのが原因なのだが。
ともあれ、現在室内には部長と俺の二人きり。
「桜は確実に嫌がりますよ。ただでさえ、事件からは距離を置きたがってるみたいなんすから」
「うん、それは僕も気づいているよ」
肩を竦めながら窓の外へ視線を戻し、部長は目に見えてわかるくらいに口角を上げた。
「桜くんは、もう少し積極性が欲しいね。ホラーやミステリーのジャンルに興味はあるけど、自分から実際に関わるのを怖がってる。怖いもの見たさに、ホラービデオを借りてくるだけと同レベルの意識だ。非常にもったいない」
「それが普通でしょう? 別に、この手のジャンルで専門家目指してるってわけでもないですし。あいつとしてはたぶん、手軽に楽しめる部活だと想像して、ここ選んだと思うんすよね。なのに、いきなりこんな村に幽閉されて殺人まで起きたら、それで目を輝かせろ言う方が酷じゃないっすか」
桜の肩を持つつもりではないが、自分の考えを素直に告げる。
結局、桜は単なる怖いもの好き。彼女はまだ自分の目で死体を見ていないから、あそこまで落ち着いた状態を保てているが、そうでなければ今頃、食事も喉を通らなくなるくらいには鬱ぎ込んでしまっていたかもしれない。
「そこまで言うつもりはないけど、この状況から目を逸らさないくらいの精神力は持ってほしいってことさ」
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