坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第三章:藤花に消えた死体

第三章:藤花に消えた死体 11

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「ああ、なるほどね」

 バトンを受け取った部長の淀みのない言い分を、昇さんたちは疑う素振りなく真に受ける。

 こういう場面で発揮される部長の才能には、呆れを含むが関心するしかない。

「で? ここから眺めてて、不安は解消されたか?」

 何が面白いのかにやつき顔を作りながら、昇さんは蔵と俺たちを見比べる。

「いえ、残念ながら。犯人とか、見当つく気配はないんですか? 二人も殺しているような凶悪犯なら、村の人たちだって黙って放置しておくことはできないですよね?」

 部長が問うと、昇さんはおどけるように片方の目を細め、まるで言葉の内容を吟味するように俺たちメンバーを観察する。

「自警団の爺さんたちと似たようなこと言うな、きみ。えっと、下の名前は何だっけ? まさか部長くん、じゃないだろ?」

「孝介です。野島孝介。高校三年です」

 最後の情報は割とどうでも良い気がするが、そう思うことの方がどうでも良いと悟りスルーしておく。

「孝介、ね。忘れなきゃ覚えておくよ。野島さんの従弟だって話だしな」

 こちらもまた、最後の一言はどうでも良い。

「もし事件に関して聞きたいことがあるなら、教えてやろうか?」

 唐突に、と言う程のタイミングでもないだろうが、昇さんがそんな提案を口にした。

「え? 良いんですか?」

 これにはさすがの部長も意表を突かれたらしく、素で驚いたような表情になっている。

「別に良いよ。俺らは警察でも自警団でもないし、口止めされてるわけでもない。つーか、家の中があんな状態で、落ち着かなくてな」

 そこでまた、昇さんは蔵へ視線を送る。

「部屋にいても面倒な手伝いさせられそうになるだけだし、二人して外で時間潰してたところなんだよ。だから、きみらの相手をするのは、こっちからしても都合の良い暇つぶし。お互い利害が一致するわけだ」

「いやぁ、助かります。僕たちも話が聞ける人を探してたんで」

 予期せぬ展開に、部長が明るい声をあげる。

「それなら、藤美荘で話をするか。俺らの部屋に招待するには、ちょっと状況が悪いし。それにあんま掃除もしてないから、女の子には印象悪くしちまうかもしれないしな」

 あからさまに女子二人を舐めるような目で見やり、昇さんはにやつきを深めた。

 初見から既に印象を悪くしていることなどはわかっていないようで、悪びれた様子も全く感じない。

 見つめられる桜は、視線を俯かせ無視を決め込み、蓮田に至っては話すら聞かずに、蔵での作業を眺めているだけである。

「僕たちは構いませんよ。すぐに移動します?」

 そんなメンバーたちのことなど微塵も気にかけることなく、部長が藤美荘を指し示す。

「ああ、そっちが問題ないなら」

「あ、ごめん、おれは一回部屋に戻るよ。昇さんは、その子たちと先に行っててもらえるかな?」

 不本意にも話がまとまりかけたところで、そう割り込んできたのは竜久さんだった。

 気を遣っているのか、ぎこちなく笑いながら昇さんを見ると、片手でごめんのジェスチャーをしながら反応を窺っている。

「ん? 別に良いぜ。すぐ戻るんだろ?」

「うん、ちょっと物取りに行くだけだから、そんな時間はかからないよ」

「なら行ってこいよ。俺は先にこの子らと藤美荘に行くから、管理室で合流な」

「わかった。すぐ戻る」

 短く頷いて、竜久さんは小走りに村長宅へ入っていく。

「……さて、行こうか」

 それを見届けて、昇さんは俺たちに宿へ引き返すよう促した。

「はぁ……散歩にもなってないじゃん」

 地面を睨んだまま愚痴る声を間近で聞きながら、俺は先陣を切って歩きだした部長と昇さんの後に続く。

 最後尾を歩く蓮田を気にする意味で背後を確認すると、後輩はまだ立ち尽くしたように蔵の方を凝視していた。

「蓮田、行くぞ?」

「……はい」

 緩慢に頷き、蓮田はこちらへ近づいてくる。

 何気なしに彼女が見ていた蔵へ意識を向けると、その入り口に枝橋さんが立っているのがわかった。

 中での作業を終えて出てきたところなのか、庭をぐるりと眺めるようにして首を巡らせている。

 ふいに、その首がこちらを向いた瞬間、動きが止まった。

「……?」

 ジッととこちらを見ているように映るが、表情までははっきり確認できない。

 どうしたのかと訝しくなるも、わざわざ確かめに足を運ぶのもおかしな話だ。

 たぶん、まだ入り口をうろついている俺たちを不審にでも感じているのかもしれない。

 直感的にそんな可能性を考えながら、俺は罰の悪さを覚え目を背けるとそのままメンバーたち同様、藤美荘へ引き返しはじめた。
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