坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第三章:藤花に消えた死体

第三章:藤花に消えた死体 12

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          【4】

 時刻は午後の零時を五分ほど過ぎた。

 呆気なく終えた散歩から戻り、昇さんの指定した管理室に移動した俺たちは、それぞれ応接用のソファーに腰かけ手持ちぶさたに黙り込んでいた。

「あれ、どうしたの? 何かあった?」

 と、引き返してきた俺たちを驚いたように迎え入れた流森さんは、今は事情を理解して全員分のコーヒーを用意してくれている。

 由奈さんは現在、厨房で渡辺さんの手伝い中とのことでこの場には不在。

 少々心細い感もあるが、流森さんが一緒にいてくれるだけでも精神的にはまだマシか。

 これでもし、この部屋にいる大人が昇さん一人だったら、居心地の悪さは数倍増していたことだろう。

「ねぇ……」

 話は竜久さんが来てから、ということで彼が到着するのを待つ。

 そんな最中。遠慮がちに声をひそめた桜が、こちらに身体を近づけてきた。

「ん?」

 特にすることもなく、テーブルの中央に置かれた菓子と灰皿を見ていた俺は、僅かに顔を上げてそれに答える。

「あたし、実はさっき不思議に思ったことがあるんだけど……」

 警戒するように一度昇さんを見て、それから話を再開する。

「竜久さん、自分のお兄さんが亡くなったのに、ずいぶん平然としてなかった? 死体の第一発見者でもあるのに、あの余裕はおかしいなって思わない?」

「……まぁ、そういえばそうだな。つか、手伝いが嫌で家の外歩いてる時点で普通じゃないな」

 ふと考えて、俺は幼なじみの意見に同意を示す。

「でしょう? 薄情って言うかなんていうか、あまりにも普段通りですよって感じだったもんね。まるでさ……」

 焦らすように言葉を止める桜へ、俺は横目で見やる。視線が交差すると、桜は苦い表情で続きを口にした。

「兄弟が死んだこと、何とも思ってないみたいな」

「……」

 遠回しな言い方をしているな、と話し方で理解できた。

 死体を発見したのに動揺もなく、実の兄が亡くなったことにも不自然なくらい、けろっとしていた梅木竜久。

 彼が、犯人の可能性はないのか? 桜はそんな疑問に行き着いたわけだ。

「何か、怪しいよね?」

 探るようなトーンで、そう告げる桜の台詞に。

「そうでもないさ」

「――!」

 前振りも何もなく会話に混ざってきた昇さんの声に、桜がやばいといった様子で目を丸くする。

「あぁ……いえ、すみません。別に、変な意味じゃ……」

 会話を聞かれていたことに狼狽し口ごもる少女を、昇さんはおかしそうに笑って身をのり出す。

「そんな慌てなくても平気だよ。別に気にするような内容でもない。て言うか、あれだよ。あいつが兄貴が死んでも普通でいるのは、元々兄貴が嫌いだったからなんだ」

「え……?」

 批難の一言でも浴びせられるかと身構えていた桜が、間の抜けた声を漏らす。

 俺もまた、その意外な展開に成り行きを見守るような気持ちで昇さんを見る。

「あいつ、兄貴とは仲悪かったからな。いくら次男とはいえ、まともに仕事もしない結婚しようとする気配もない。毎日好き勝手にダラダラ過ごして、飯食ってるだけだろ? そのことでよく説教やら小言を言われて、ムカついてたし」

 可笑しそうに笑いながらそこまで喋り、昇さんは一旦口を閉ざす。

「どうぞ」

 流森さんの淹れたコーヒーが、全員の前に置かれていく。
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