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第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 14
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――俺らとは訳が違うはずなのにな……。
「家を継ぐのは面倒で嫌だけど、遺産だけは譲り受けたい、か」
「都合の良い話だよね」
ぼそりと嫌味を言いつつコーヒーを飲む桜を別段気にする風でもなく、昇さんはソファーにもたれかかりながら窓の外を眺めやった。
「……しかし、噂をされてるご本人は何してんだろうな。部屋に物取りに行くだけで何分かかってんだよ」
愚痴るようにぼやいて、壁にかけられた時計を確認する。
「ひょっとしたら、自警団の連中にでも捕まって、こきつかわれてんじゃねぇだろうな」
「探し物が見つからなくて、手間取ってるだけかもしれませんよ?」
不満そうに腕組みをする村長の甥へ笑みをみせ、部長が口を開いた。
「ところで、昇さんは村長の甥にあたるんでしたよね?」
「あ? ああ、そうだな。爺さんの兄貴が俺の親父さ。三年前に交通事故で母親共々くたばっちまって、それでまぁ、ここに来た。唯一の親族だしな」
部長の薄ら笑いをつまらなそうに眺め、昇さんはそう返答をする。
「唯一? 他に親戚とかはいないんですか?」
「いない。親父の兄弟は爺さん一人だけだし、その親、つまり俺の爺さんと婆さんは二人ともだいぶ前に死んでる。母親の方に関しては、孤児院出身だからな。余計に親族なんかいないさ」
「昇さんのお母さんが、孤児院出身? 何だか、大変な人生を歩まれていた感じですね」
「さぁ。そこら辺は俺が生まれる前の話だし。いちいち興味ねぇよ」
本当にどうでも良さげな口調で告げて、昇さんはテーブルに置かれていたキャンディを一つ摘まんだ。
「昇さんは――」
「――ごめんなさい、流森さん。ちょっと……って、あれ、みんなこんな所に集まってたの?」
尚も何かを訊ねようとした部長の声に被せるようなタイミングで、由奈さんが室内に入ってきた。
意外なものでも見るような目で俺たちを見渡し、最後に昇さんを視界に捉えて僅かに表情を固くする。
「うん、暇だったから雑談をね」
従姉を見上げて、部長が言う。
「そう……。確かに、部屋でじっとしてても退屈だもんね」
同情するように苦笑して、由奈さんは流森さんへ顔の向きを変えた。
「流森さん、渡辺さんが手を貸してほしいから厨房にって」
「うん、わかった。えっと、ちょっといなくなるけど、みんなは自由にくつろいでて良いからね。たぶん、すぐ戻ると思うけど」
「はい、すみません」
申し訳なさそうに手を合わせる流森さんへ返事して、部長は女性二人が部屋を出ていくのを見つめる。
最後、由奈さんがドアを閉める瞬間俺たちへ心配そうな眼差しを向けてきたが、何も言わぬまま去ってしまった。
きっと、昇さんと一緒にしておくことに不安があったのかもしれない。
周囲が静寂に包まれる。
部長のコーヒーをすする音だけが頼りなく響き、それが居心地の悪さを助長した。
そのまま会話が途切れて約五分。
「やっぱり遅ぇなあいつ。悪いけど、俺ちょっと呼んでくるわ。手伝いでもさせられてんなら、終わるの待ってらんねぇし」
突然痺れを切らしたように立ち上がると、昇さんが俺たちを見回しそう言ってきた。
「いや、別に忙しいなら無理に俺らに付き合わなくても良いんですよ?」
「家を継ぐのは面倒で嫌だけど、遺産だけは譲り受けたい、か」
「都合の良い話だよね」
ぼそりと嫌味を言いつつコーヒーを飲む桜を別段気にする風でもなく、昇さんはソファーにもたれかかりながら窓の外を眺めやった。
「……しかし、噂をされてるご本人は何してんだろうな。部屋に物取りに行くだけで何分かかってんだよ」
愚痴るようにぼやいて、壁にかけられた時計を確認する。
「ひょっとしたら、自警団の連中にでも捕まって、こきつかわれてんじゃねぇだろうな」
「探し物が見つからなくて、手間取ってるだけかもしれませんよ?」
不満そうに腕組みをする村長の甥へ笑みをみせ、部長が口を開いた。
「ところで、昇さんは村長の甥にあたるんでしたよね?」
「あ? ああ、そうだな。爺さんの兄貴が俺の親父さ。三年前に交通事故で母親共々くたばっちまって、それでまぁ、ここに来た。唯一の親族だしな」
部長の薄ら笑いをつまらなそうに眺め、昇さんはそう返答をする。
「唯一? 他に親戚とかはいないんですか?」
「いない。親父の兄弟は爺さん一人だけだし、その親、つまり俺の爺さんと婆さんは二人ともだいぶ前に死んでる。母親の方に関しては、孤児院出身だからな。余計に親族なんかいないさ」
「昇さんのお母さんが、孤児院出身? 何だか、大変な人生を歩まれていた感じですね」
「さぁ。そこら辺は俺が生まれる前の話だし。いちいち興味ねぇよ」
本当にどうでも良さげな口調で告げて、昇さんはテーブルに置かれていたキャンディを一つ摘まんだ。
「昇さんは――」
「――ごめんなさい、流森さん。ちょっと……って、あれ、みんなこんな所に集まってたの?」
尚も何かを訊ねようとした部長の声に被せるようなタイミングで、由奈さんが室内に入ってきた。
意外なものでも見るような目で俺たちを見渡し、最後に昇さんを視界に捉えて僅かに表情を固くする。
「うん、暇だったから雑談をね」
従姉を見上げて、部長が言う。
「そう……。確かに、部屋でじっとしてても退屈だもんね」
同情するように苦笑して、由奈さんは流森さんへ顔の向きを変えた。
「流森さん、渡辺さんが手を貸してほしいから厨房にって」
「うん、わかった。えっと、ちょっといなくなるけど、みんなは自由にくつろいでて良いからね。たぶん、すぐ戻ると思うけど」
「はい、すみません」
申し訳なさそうに手を合わせる流森さんへ返事して、部長は女性二人が部屋を出ていくのを見つめる。
最後、由奈さんがドアを閉める瞬間俺たちへ心配そうな眼差しを向けてきたが、何も言わぬまま去ってしまった。
きっと、昇さんと一緒にしておくことに不安があったのかもしれない。
周囲が静寂に包まれる。
部長のコーヒーをすする音だけが頼りなく響き、それが居心地の悪さを助長した。
そのまま会話が途切れて約五分。
「やっぱり遅ぇなあいつ。悪いけど、俺ちょっと呼んでくるわ。手伝いでもさせられてんなら、終わるの待ってらんねぇし」
突然痺れを切らしたように立ち上がると、昇さんが俺たちを見回しそう言ってきた。
「いや、別に忙しいなら無理に俺らに付き合わなくても良いんですよ?」
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