坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第三章:藤花に消えた死体

第三章:藤花に消えた死体 15

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 そもそも、彼らに話を聞くため外へ出たわけでもない。単に成り行きと、部長の独断でこういう流れになってしまっただけのこと。

 村長宅はいろいろと人手が必要なのかもしれないし、もし手伝いをしてるなら、俺たちと話をしているよりは確実に優先度が高いだろう。

「んなこと気にすんなって。言ったろ? 俺たちはその手伝いが嫌だから外出たんだよ」

「威張るように言うなっての」

 またもや桜のぼやきが耳に届く。

 さすがにこれは聞こえなかったようで、昇さんは気にすることもなく口を動かし続ける。

「引っ張り回すみたいであれだけど、何ならきみらも来るか? 村長の家ん中、見物するチャンスだぜ?」

「え? 良いんですか?」

 避けたい誘いに、真っ先に食いついたのは当然ながら部長だ。

 下げていた顎をぱっと上げ、昇さんを見つめる。

「ああ、周りの邪魔しなきゃ平気だろ。もし何か言われたら、適当にあしらってやるよ」

「それなら、行くだけ行ってみようかな」

「ちょっと部長……」

 咄嗟に腕を伸ばしかけ、桜が押し留めるような声をあげる。

「大丈夫だよ、桜くん。責任は部長である僕が持つ」

「いや、そういう問題じゃなくて……」

 間髪入れずに突っ込んで、桜は部長を睨む。

 しかし、そんなことで怯むような相手でないことは、メンバー全員が理解している。

「気が進まないなら、ここで待っているといい。あ……でも一人になるのは、さすがに得策じゃないか。由奈さんたちに頼んで、側においてもらう? たぶん、厨房にいるはずだし」

 一方的に話を進めだす部長に、幼なじみの口が閉口する。

 何を言っても聞いてもらえない。諦めたような表情が、そう物語っていた。

「……行きますよ。でも、蔵に入ろうとかは勘弁してくださいよ? それだけは嫌ですからね、絶対に」

「もちろん。と言うより、そこは入れてもらえないでしょ。夜中にでも忍び込まなきゃ」

 不穏な言葉を付け足しながらにこりと笑い、部長が立ち上がる。

「じゃあ、みんなで行こうか」

「悪いな、行ったり来たりさせちまって」

 言う内容とは裏腹に、全く悪びれた気配もなく告げながら、昇さんは廊下へ向かう。

「いえいえ、どうせ暇してますから」

 あっけらかんと答えながら、その後に続く部長の背に恨めしげな視線を突き刺し、桜も立ち上がる。

「……」

 無言の蓮田も動き出すのを確認して、俺も腰を上げ廊下へ向かった。

「あたしたち、何やってんだろ」

「たぶん、馬鹿をやってるってことになるんじゃないか?」

「もう帰りたいな……」

 隣でぼやく桜に同情の視線を送り。

「俺たちが戻らなきゃ、親が異変に気づくだろ。そうしたらすぐに警察へ連絡がいくさ。それまでの辛抱だ。大丈夫、きっともう何も起きねぇよ」

 そんなありきたりな励ましを口にしておく。

「うん……。そうじゃなきゃ困るけどね」

 嘆息しながら苦笑して桜は頷く。

 こんなやり取りなど、所詮気休めとすら呼べないとはわかっていたが。




 事実、このとき既に、犯人による第三の惨劇が進行していたのだが、そのことに気づける者などまだ一人もいなかった。

 当然俺自身も、この後に三人目の犠牲者を目撃するはめになるなど思えるわけもなく。

 ましてや、あんな不可思議な現象を目の当たりにするなんて、微塵も想像できるわけがなかった――。
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