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第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 34
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【8】
時刻は午後の三時半を過ぎた。
優先すべき問題があるせいか、説教や尋問を受ける気配は全くないまま、俺と蓮田は藤美荘へ戻された。
昇さんは渡辺さんへ車の鍵を返却するとそのまま村長の家に戻っていき、俺と蓮田は出迎えた由奈さんに先導されるかたちで部屋へと帰還していた。
桜は幾分落ち着いた様子を見せていたが、まだ顔色は悪い。
しばらくはあまり無理をさせずにそっとしといてあげようと部長に提案され、拒否をする理由もないので賛成しておく。
それから、俺と蓮田が体験してきた一部始終を部長に伝え、後々枝橋さん辺りから説教が飛んでくる可能性があることを言い添えておいた。
「それじゃあ、竜久さんの死体見つけられなかったの?」
お互いに一通りのやり取りを済ませた矢先、桜の側に身を寄せて話を聞いていた由奈さんが、苦い表情で口を開いてきた。
「はい。一応、自警団の人たちと昇さんで、周囲を調べてたみたいなんですけど、結局何も発見できなかったようです。この後も捜索はしてみる予定らしいですけど」
己の持ち得るなけなしの情報を提供しながら、俺は神妙に頷く。
「そっかぁ、じゃあこらからはさらに村中が物々しくなっちゃうのかな……。犯人、どこに死体持っていったんだろ。その辺に遺棄されてるの見つけちゃったりしたら、わたし声でなくなりそう」
苦渋の色を浮かべてそう告げてから、由奈さんははっとしたようにして桜の方を見る。
「あ、ごめんね。こんな話されたら気分悪いよね」
「……いえ、大丈夫です。これでも結構落ち着いてきてますから」
ゆっくりと由奈さんへ首を向け、桜はぎこちなく笑う。
どう見ても大丈夫な状態とは言い難いが、それでも会話ができるくらいに回復しているのは事実なので少し安心する。
「しかし、あれだね。ちょっと予想外の展開になってきちゃったかもしれないね」
一通りの説明を聞き終えてから、何事か考え込むように俯き沈黙していた部長が、おもむろに口を動かした。
「予想外? 何がよ?」
小首を傾げて問うてくる従姉をチラリと一瞥し、部長は一度お茶を口に含み息をつく。
「碧さんを刺した包丁は、この藤美荘の厨房に保管してあるものだった。しかも、予備の包丁であったため、普段はどこかの引き出しにしまわれていたって、渡辺さんから聞いている。そして、晴也さんが殺されたのは自宅の蔵で、凶器はそこに置いてあった鎌だ。これらのことから僕たちは、犯人は藤美荘と村長宅の両方に繋がりがある人物の可能性が高いんじゃないかって想像してたわけ」
「はぁ? ちょっと待ちなさいよ。孝介、あんたまさかわたしまで容疑者扱いしてるんじゃないでしょうね?」
面食らった表情で従弟を見返し、由奈さんは疑うような声をあげる。
「いや、してるよ」
だが、部長はそんなことには動じる様子もなく、あまりにも淡泊な口調で言葉を投げ返して由奈さんを直視する。
「なっ……!」
心外だと言わんばかりに、由奈さんの顔が僅かに引きつった。
「……孝介、それ、本気で言ってるならマジで怒るよ? わたしが人殺したとか考えてんの?」
「ちょっと……由奈さん。部長も変なこと言わないでくださいよ」
時刻は午後の三時半を過ぎた。
優先すべき問題があるせいか、説教や尋問を受ける気配は全くないまま、俺と蓮田は藤美荘へ戻された。
昇さんは渡辺さんへ車の鍵を返却するとそのまま村長の家に戻っていき、俺と蓮田は出迎えた由奈さんに先導されるかたちで部屋へと帰還していた。
桜は幾分落ち着いた様子を見せていたが、まだ顔色は悪い。
しばらくはあまり無理をさせずにそっとしといてあげようと部長に提案され、拒否をする理由もないので賛成しておく。
それから、俺と蓮田が体験してきた一部始終を部長に伝え、後々枝橋さん辺りから説教が飛んでくる可能性があることを言い添えておいた。
「それじゃあ、竜久さんの死体見つけられなかったの?」
お互いに一通りのやり取りを済ませた矢先、桜の側に身を寄せて話を聞いていた由奈さんが、苦い表情で口を開いてきた。
「はい。一応、自警団の人たちと昇さんで、周囲を調べてたみたいなんですけど、結局何も発見できなかったようです。この後も捜索はしてみる予定らしいですけど」
己の持ち得るなけなしの情報を提供しながら、俺は神妙に頷く。
「そっかぁ、じゃあこらからはさらに村中が物々しくなっちゃうのかな……。犯人、どこに死体持っていったんだろ。その辺に遺棄されてるの見つけちゃったりしたら、わたし声でなくなりそう」
苦渋の色を浮かべてそう告げてから、由奈さんははっとしたようにして桜の方を見る。
「あ、ごめんね。こんな話されたら気分悪いよね」
「……いえ、大丈夫です。これでも結構落ち着いてきてますから」
ゆっくりと由奈さんへ首を向け、桜はぎこちなく笑う。
どう見ても大丈夫な状態とは言い難いが、それでも会話ができるくらいに回復しているのは事実なので少し安心する。
「しかし、あれだね。ちょっと予想外の展開になってきちゃったかもしれないね」
一通りの説明を聞き終えてから、何事か考え込むように俯き沈黙していた部長が、おもむろに口を動かした。
「予想外? 何がよ?」
小首を傾げて問うてくる従姉をチラリと一瞥し、部長は一度お茶を口に含み息をつく。
「碧さんを刺した包丁は、この藤美荘の厨房に保管してあるものだった。しかも、予備の包丁であったため、普段はどこかの引き出しにしまわれていたって、渡辺さんから聞いている。そして、晴也さんが殺されたのは自宅の蔵で、凶器はそこに置いてあった鎌だ。これらのことから僕たちは、犯人は藤美荘と村長宅の両方に繋がりがある人物の可能性が高いんじゃないかって想像してたわけ」
「はぁ? ちょっと待ちなさいよ。孝介、あんたまさかわたしまで容疑者扱いしてるんじゃないでしょうね?」
面食らった表情で従弟を見返し、由奈さんは疑うような声をあげる。
「いや、してるよ」
だが、部長はそんなことには動じる様子もなく、あまりにも淡泊な口調で言葉を投げ返して由奈さんを直視する。
「なっ……!」
心外だと言わんばかりに、由奈さんの顔が僅かに引きつった。
「……孝介、それ、本気で言ってるならマジで怒るよ? わたしが人殺したとか考えてんの?」
「ちょっと……由奈さん。部長も変なこと言わないでくださいよ」
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