坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

文字の大きさ
114 / 173
第四章:矛盾の解明

第四章:矛盾の解明 11

しおりを挟む
「趣味悪いわあんた……」

 悪気なく告げる従弟にジト目でぼやき、由奈さんはコーヒーを一口飲む。

「桜たちは、もう起きてたんすね?」

 部長の性格に関しては今更なので軽く受け流し、俺は何となく気になったことを訊ねてみる。

「あ、うん。二人とも起きてたよ。桜くんも昨日より落ち着いた感じだったね。あの様子なら、もう心配はいらないんじゃないかな」

「そうっすか」

 それならば良い。ただでさえ鬱ぎ込みかけていた状態で蓮田と二人きりの環境は結構酷なのではと、若干不安はあったのだが。

「後で朝食も食べるって言ってたから食欲の方も問題なさそうだし、無理さえさせなきゃ大丈夫だろうね」

 最後にそう付け加え、部長は壁の時計を見上げた。

 それから従姉に首を方向転換し、欠伸を噛み殺しながら口を開く。

「由奈さん、パソコンや電話は相変わらず駄目?」

「たぶん駄目だと思う。少なくとも、こことわたしの家は使えないまま」

 部屋のパソコンを横目で見て、由奈さんは肩を竦めて頭を振る。

「由奈さんの家って、藤美荘から近いんですか?」

 ふと浮かんだ疑問を口にすると、由奈さんはコクンと頭を縦に揺らす。

「車で五分くらいかな。村長が用意してくれた家でさ、家賃が安いの。古い家だからあちこちボロいんだけど、それもまた味がある感じで気に入ってるんだけどね」

「でも、一人暮らしですよね? こんな事件が起きてるんじゃ、夜は不安になりませんか?」

「そりゃ怖いわよ。でも仕方ないでしょう? 戸締まりはちゃんとしてるし、とりあえず大丈夫かなとは思うようにしてる。でもまぁ、万が一犯人が襲ってきたら覚悟決めるしかないかもね」

 冗談めかしてそう言って目を伏せる部長の従姉に、俺はどう言葉を続けるべきか判断に迷う。

 そうですよね、とはさすがに言えないし、かと言って大丈夫ですよと言うのも無責任な感じがしてしまう。

 そこからしばらく沈黙が流れ、外から聞こえる雀の鳴き声だけが室内に響いた。

 特に重い雰囲気と感じるようなこともなかったが、そろそろ部屋に戻っておかなければ邪魔になるのではないかと思い始めた頃に。

 遠慮がちなノックの音が、部屋の静寂を破った。

 それからすぐに、馴染みのある声が聞こえドアがゆっくりと開かれていく。

「……おはよぉございます。あ、雄治見つけた」

 どこか警戒するように中を覗き込んできたその正体は、ついさっき話のネタにされたばかりの桜本人だった。

 俺と目が合うや否や一度顔を引っ込めて、改めてドアを開けて中へ入ってくる。

「ここにいたんだ?」

 由奈さんへ会釈をしながら近づいてくる幼なじみへ、

「ああ、部屋にいても息が詰まるからな」

 と返して、それから桜の後に続いて蓮田が姿を見せたのを確認する。

「……」

 こちらは目が合っても目礼のみ。

 ひとまず小さく手を挙げ応え、二人がソファーへ座るのを待つ。

 由奈さんは女子二人のコーヒーを用意するため既に立ち上がっていた。

「部長が雄治探して部屋に来たから、どうかしたのか気になってて。部屋覗いたら誰もいなかったから、こっち来てみた」

「そうだったのか。昨日はあれからすぐ眠れたか?」

 相槌を打ちながら、訊いてみる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小説探偵

夕凪ヨウ
ミステリー
 20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。  男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。  そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。  小説探偵、と。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~

水無月礼人
ミステリー
 子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。  故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。  嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。  不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。 ※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。  【アルファポリス】でも公開しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...