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第四章:矛盾の解明
第四章:矛盾の解明 29
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床に横たわる家族同然だった者たちを無遠慮に指差し、昇は言った。
だが、その話す内容が心からの本心でないことは、薄笑いを浮かべる表情を見れば明らかだ。
「昇さん、そういうことは笑いながら言う台詞じゃないですよ」
まともな注意をしたところで効果が薄いのは明白なため、渡辺はそれだけ言っておく。
「いや、すみません。癖みたいなもんなんで、この顔」
自分の顔を示す村長の甥に肩を竦めて、自警団たちは構うだけ無駄とそっぽを向いてしまう。
仕方なく、渡辺もそれ以上の会話をやめることにして枝橋へ向き直る。
「吉田さんが戻ってきてくれるなら、数日内にこの隔離された状況は改善されるでしょうけど、それまでどう凌ぐかが課題になりますね。万が一犯人がまた誰かを狙っているのなら、これ以上は被害を抑えないと」
「ええ、それはもちろんです。犯人はたぶん、吉田さんが村を留守にすることを計算に入れず村を隔離した可能性が高いですから、もしそれがばれたら犯行を急ぐこともありえます。ですので、この件はなるべく他言無用にしておきましょう」
そう告げる枝橋の指示に、昇以外の全員が頷く。
「だけどよ……」
初老の男が、小さく手を挙げた。
「千賀子さんにゃあ、黙っておくのもあれじゃねぇか? 警察がすぐ来てくれるかもしれんとわかれば、少しくらいは気が落ち着くかもしれねぇし、あの人には隠す話じゃねぇだろ?」
千賀子には、枝橋から村長の死を伝えたと聞いた。
碧、晴也、竜久に続き今度は自分の夫だ。
果たして話を聞き終えたとき、どんな反応を示したものか。
ただでさえ憔悴しきっていたところへの、さらなる訃報である。もはや、普通の精神状態ではなくなっているかもしれない。
――放っておけば、自殺をする可能性もあるか……。
事実上、今この屋敷に残っているのは、妻である千賀子を除けば居候同然の昇だけだ。家族と呼べる存在は、もう誰もいなくなった。
この状態で、年老いた老婆が余生を今まで通り暮らしていけるとは渡辺には思えない。
となれば、自ら命を絶とうと考えることだって十二分にあり得るはず。
「そうですね。それじゃあ千賀子さんには後で連絡をしておくことにしましょう」
思考を巡らす渡辺の側で、枝橋が話を進める。
「なんなら、婆さんには俺から伝えておきましょうか?」
「昇さんが?」
親指で自分を指す村長の甥を、自警団たちが胡散臭げにねめつける。
しかし、そんな相手たちなどどうでも良いといった感じで、昇はにやにやと言葉を続けた。
「ええ、どうせ自分が暮らしてる家だし部屋に戻るついでに。みなさんはこれから、竜久の捜索だってしなくちゃいけないわけでしょう? だったら、それくらいは俺だってやりますよ」
言い方からして、竜久の捜索には手を貸すつもりはないらしい。
普段からよく遊んでいた相手だろうに、薄情なものだ。
「……わかりました。それじゃあ、千賀子さんの件は昇さんにお願いします。自分たちはこの後他のメンバーと合流して、竜久さんの捜索を始めますので」
まともな話もしたくないと思っているのか、単にやり取りは必要ないと判断を下したのか。
比較的あっさりと首肯して、枝橋は昇の申し出を受け入れることにしたようだった。
「任せてください。それじゃあ、ここじゃもうやること無さそうだし、俺は中に戻ります」
だが、その話す内容が心からの本心でないことは、薄笑いを浮かべる表情を見れば明らかだ。
「昇さん、そういうことは笑いながら言う台詞じゃないですよ」
まともな注意をしたところで効果が薄いのは明白なため、渡辺はそれだけ言っておく。
「いや、すみません。癖みたいなもんなんで、この顔」
自分の顔を示す村長の甥に肩を竦めて、自警団たちは構うだけ無駄とそっぽを向いてしまう。
仕方なく、渡辺もそれ以上の会話をやめることにして枝橋へ向き直る。
「吉田さんが戻ってきてくれるなら、数日内にこの隔離された状況は改善されるでしょうけど、それまでどう凌ぐかが課題になりますね。万が一犯人がまた誰かを狙っているのなら、これ以上は被害を抑えないと」
「ええ、それはもちろんです。犯人はたぶん、吉田さんが村を留守にすることを計算に入れず村を隔離した可能性が高いですから、もしそれがばれたら犯行を急ぐこともありえます。ですので、この件はなるべく他言無用にしておきましょう」
そう告げる枝橋の指示に、昇以外の全員が頷く。
「だけどよ……」
初老の男が、小さく手を挙げた。
「千賀子さんにゃあ、黙っておくのもあれじゃねぇか? 警察がすぐ来てくれるかもしれんとわかれば、少しくらいは気が落ち着くかもしれねぇし、あの人には隠す話じゃねぇだろ?」
千賀子には、枝橋から村長の死を伝えたと聞いた。
碧、晴也、竜久に続き今度は自分の夫だ。
果たして話を聞き終えたとき、どんな反応を示したものか。
ただでさえ憔悴しきっていたところへの、さらなる訃報である。もはや、普通の精神状態ではなくなっているかもしれない。
――放っておけば、自殺をする可能性もあるか……。
事実上、今この屋敷に残っているのは、妻である千賀子を除けば居候同然の昇だけだ。家族と呼べる存在は、もう誰もいなくなった。
この状態で、年老いた老婆が余生を今まで通り暮らしていけるとは渡辺には思えない。
となれば、自ら命を絶とうと考えることだって十二分にあり得るはず。
「そうですね。それじゃあ千賀子さんには後で連絡をしておくことにしましょう」
思考を巡らす渡辺の側で、枝橋が話を進める。
「なんなら、婆さんには俺から伝えておきましょうか?」
「昇さんが?」
親指で自分を指す村長の甥を、自警団たちが胡散臭げにねめつける。
しかし、そんな相手たちなどどうでも良いといった感じで、昇はにやにやと言葉を続けた。
「ええ、どうせ自分が暮らしてる家だし部屋に戻るついでに。みなさんはこれから、竜久の捜索だってしなくちゃいけないわけでしょう? だったら、それくらいは俺だってやりますよ」
言い方からして、竜久の捜索には手を貸すつもりはないらしい。
普段からよく遊んでいた相手だろうに、薄情なものだ。
「……わかりました。それじゃあ、千賀子さんの件は昇さんにお願いします。自分たちはこの後他のメンバーと合流して、竜久さんの捜索を始めますので」
まともな話もしたくないと思っているのか、単にやり取りは必要ないと判断を下したのか。
比較的あっさりと首肯して、枝橋は昇の申し出を受け入れることにしたようだった。
「任せてください。それじゃあ、ここじゃもうやること無さそうだし、俺は中に戻ります」
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