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第四章:矛盾の解明
第四章:矛盾の解明 32
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【11】
村の連中はくだらない奴らばかりだ。
梅木昇は胸中で毒づきながら家に上がると、真っ直ぐに千賀子の部屋へと歩いていく。
確か今も、近所に住む婆さんが交代で側に付き添っているはずだ。
――鬱陶しいよな……。
一人にしておくのは心配だからということなのだろうが、大して関わったことのない人物が、四六時中同じ家の中にいるのは正直落ち着かない。
仏頂面のまま廊下を進み、目的地の前で足を止め中の気配を窺う。
人の気配はするが、話し声のようなものは聞こえてこない。
心労がたたって寝ているのか、もしくは口を開く余裕などなくなっているか。
どちらにせよ、自分がどうこうできることは何もない。
昇はノックもなく襖を開け、無遠慮に中を覗き込んだ。
「な、何だい、いきなり……! 入るなら一声くらいかけてからにしなさいな」
突然のことに、付き添っていた老婆が驚いたように昇を振り返る。
「悪ぃな。ちっと叔母さんに伝言があってよ」
睨む老婆を一瞥して、昇は千賀子の姿を視覚に捉える。
千賀子は、敷いた布団の上に座り込んでいた。ぼんやりとした様子で下を向き、顔を上げる素振りもない。
「枝橋さんからの伝言ですよ。うまくいけば、今日か明日には警察が動いてくれるかもしれないということです。もう少しの辛抱ってことですかね」
叔母の様子など気に留めもせず、昇は伝えることだけを簡潔に話す。
「……」
だが千賀子の反応は一切なく、眉一つ動かす気配もない。
代わりに、昇の言葉に反応をみせたのは、付き添いの老婆だった。
「警察って……それ、本当かい?」
僅かに上半身を近づけてくる相手をどうでも良さ気に見返して、昇は頷いた。
「ああ。なんでも、吉田さんが今日帰ってくる予定らしいですよ。だから、そのときに橋が落ちてることに気がつけば、何かしら行動を起こしてくれるだろうって」
「……そう。良かった。あぁ……本当に良かった。千賀子さん、もうすぐ助けが来るって。これで一安心よ。もう大丈夫だわ」
重度の痴呆患者のようになっている千賀子の腕を摩り、老婆はホッとした表情で声をかける。
そんな光景をつまらなそうに眺めてから、昇は
「そんじゃ、俺は部屋に戻ってますんで。こっちはよろしくお願いします」
とだけ告げ返事も待たずに襖を閉めた。
薄暗い廊下を歩きつつ、舌打ちを鳴らす。渡辺や枝橋に言われた言葉が脳裏をよぎる。
梅木家で残っているのは、あと二人。
犯人がこの家そのものに恨みがあるとしたなら、次に狙われるのは千賀子か自分。
「……馬鹿馬鹿しい。何が恨みだ」
根拠も証拠もない憶測や戯言を、知った風に語るあの態度に腹が立つ。
「この俺が死ぬわけねぇだろうが」
ふてくされたような独り言を吐きつつ光が差し込む縁側を見つめ、昇はその眩しさに不快そうに目を細めた。
村の連中はくだらない奴らばかりだ。
梅木昇は胸中で毒づきながら家に上がると、真っ直ぐに千賀子の部屋へと歩いていく。
確か今も、近所に住む婆さんが交代で側に付き添っているはずだ。
――鬱陶しいよな……。
一人にしておくのは心配だからということなのだろうが、大して関わったことのない人物が、四六時中同じ家の中にいるのは正直落ち着かない。
仏頂面のまま廊下を進み、目的地の前で足を止め中の気配を窺う。
人の気配はするが、話し声のようなものは聞こえてこない。
心労がたたって寝ているのか、もしくは口を開く余裕などなくなっているか。
どちらにせよ、自分がどうこうできることは何もない。
昇はノックもなく襖を開け、無遠慮に中を覗き込んだ。
「な、何だい、いきなり……! 入るなら一声くらいかけてからにしなさいな」
突然のことに、付き添っていた老婆が驚いたように昇を振り返る。
「悪ぃな。ちっと叔母さんに伝言があってよ」
睨む老婆を一瞥して、昇は千賀子の姿を視覚に捉える。
千賀子は、敷いた布団の上に座り込んでいた。ぼんやりとした様子で下を向き、顔を上げる素振りもない。
「枝橋さんからの伝言ですよ。うまくいけば、今日か明日には警察が動いてくれるかもしれないということです。もう少しの辛抱ってことですかね」
叔母の様子など気に留めもせず、昇は伝えることだけを簡潔に話す。
「……」
だが千賀子の反応は一切なく、眉一つ動かす気配もない。
代わりに、昇の言葉に反応をみせたのは、付き添いの老婆だった。
「警察って……それ、本当かい?」
僅かに上半身を近づけてくる相手をどうでも良さ気に見返して、昇は頷いた。
「ああ。なんでも、吉田さんが今日帰ってくる予定らしいですよ。だから、そのときに橋が落ちてることに気がつけば、何かしら行動を起こしてくれるだろうって」
「……そう。良かった。あぁ……本当に良かった。千賀子さん、もうすぐ助けが来るって。これで一安心よ。もう大丈夫だわ」
重度の痴呆患者のようになっている千賀子の腕を摩り、老婆はホッとした表情で声をかける。
そんな光景をつまらなそうに眺めてから、昇は
「そんじゃ、俺は部屋に戻ってますんで。こっちはよろしくお願いします」
とだけ告げ返事も待たずに襖を閉めた。
薄暗い廊下を歩きつつ、舌打ちを鳴らす。渡辺や枝橋に言われた言葉が脳裏をよぎる。
梅木家で残っているのは、あと二人。
犯人がこの家そのものに恨みがあるとしたなら、次に狙われるのは千賀子か自分。
「……馬鹿馬鹿しい。何が恨みだ」
根拠も証拠もない憶測や戯言を、知った風に語るあの態度に腹が立つ。
「この俺が死ぬわけねぇだろうが」
ふてくされたような独り言を吐きつつ光が差し込む縁側を見つめ、昇はその眩しさに不快そうに目を細めた。
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