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第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 12
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隣にいる桜の身体が、ビクリと竦むのがわかった。
目だけを動かし周りを見ると、由奈さんと流森さんもまた怖気づいたかのような、怯えた表情で昇さんを眺めていた。
「人をおちょくんのも大概にしろや! 余所者の分際で、何なんだこのくそガキが!」
「あれ、ひょっとして本性出ちゃいました?」
豹変したように怒鳴りだす昇さんを前に、全く動じていないのは蓮田、部長、枝橋さんの三人。
その中でも、部長だけはこの状況を楽しむかのように笑みを浮かべ、昇さんの態度を観察していた。
「まぁ、本性出してくれると、こっちも遠慮することないから楽なんですけどね」
フフッと鼻で息を漏らし、部長はおもむろに昇さんを指差す。
「……んだよ?」
指された意図が掴めずしかめっ面になる相手を見据え、部長は静かな声音で囁いた。
「いえ、証拠ですよ。昇さん、今あなたが着ているその服って、竜久さんが殺されたときにも着てた服ですよね?」
「……それが何だ?」
自分の着る服を一瞥し、昇さんが問う。
今昇さんの着ている服は、俺たちと一緒に竜久さんを探したときと全く同じものだ。
昨日今日の間に、洗濯なんかしている暇や余裕があったとは思えない。
同じ種類の服を複数所持しているというわけでなければ、そのまま着続けていることになる。
「僕の言いたいこと、わかりませんか? あなたが犯人であるならば、その服を着て竜久さんを殺害し池に捨てたということになる。竜久さんは直前まで藤の花に埋もれていた。そんな人をボートに乗せ、重りを付けたロープで縛り池に落したわけですから……当然、ベッタリくっ付いてるはずですよね? その服に藤花の花粉が。ほんの少しなら言い訳ききそうそうですけど、たぶん無理ですよ? 上半身下半身、不自然なくらいまんべんなく付着していると思いますから」
反射的に、昇さんは自分の服に手をやっていた。
「あ、思い当たることあるって反応しましたね。とりあえず、その服洗濯とかしないでくださいね。証拠消されても困るし、逆にあなたが犯人じゃないなら、むしろ僕たちが言ったことが外れだって証明になるから、都合良いはずですよね?」
「その服は、この後こちらで預からせてもらいますよ。それと、この子たちの推理が当たっているとすれば、碧さんか晴也さんの死体から採取した血液を保管していた入れ物がどこかにあるはずだ。容器なのかビニルのような物かはわかりませんが、見つけることができれば新たな証拠にもなるでしょう。これから来る警察には、自分の方から全て説明させてもらいます。逃げ切れるなんてことは、思わない方が良いですよ」
援護射撃のような、枝橋さんの追い討ち。
「どのみち、ここまで真相が明らかになった時点で、あなたに言い逃れる術は残されていないということです。警察が到着するまで、あとはもう大人しくしていてください」
「…………」
唇を噛み、昇さんは項垂れる。
「……どうしてなの?」
そんな彼に、疑問の呟きを投げかけたのは千賀子さんだった。
困惑したその顔は、今にも泣きそうに歪んでいる。
「どうしてあなたがこんなことを……? 晴也たちが何かしたの? 主人だって、あなたのことを心配してこの家に戻してくれたのに……」
目だけを動かし周りを見ると、由奈さんと流森さんもまた怖気づいたかのような、怯えた表情で昇さんを眺めていた。
「人をおちょくんのも大概にしろや! 余所者の分際で、何なんだこのくそガキが!」
「あれ、ひょっとして本性出ちゃいました?」
豹変したように怒鳴りだす昇さんを前に、全く動じていないのは蓮田、部長、枝橋さんの三人。
その中でも、部長だけはこの状況を楽しむかのように笑みを浮かべ、昇さんの態度を観察していた。
「まぁ、本性出してくれると、こっちも遠慮することないから楽なんですけどね」
フフッと鼻で息を漏らし、部長はおもむろに昇さんを指差す。
「……んだよ?」
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「いえ、証拠ですよ。昇さん、今あなたが着ているその服って、竜久さんが殺されたときにも着てた服ですよね?」
「……それが何だ?」
自分の着る服を一瞥し、昇さんが問う。
今昇さんの着ている服は、俺たちと一緒に竜久さんを探したときと全く同じものだ。
昨日今日の間に、洗濯なんかしている暇や余裕があったとは思えない。
同じ種類の服を複数所持しているというわけでなければ、そのまま着続けていることになる。
「僕の言いたいこと、わかりませんか? あなたが犯人であるならば、その服を着て竜久さんを殺害し池に捨てたということになる。竜久さんは直前まで藤の花に埋もれていた。そんな人をボートに乗せ、重りを付けたロープで縛り池に落したわけですから……当然、ベッタリくっ付いてるはずですよね? その服に藤花の花粉が。ほんの少しなら言い訳ききそうそうですけど、たぶん無理ですよ? 上半身下半身、不自然なくらいまんべんなく付着していると思いますから」
反射的に、昇さんは自分の服に手をやっていた。
「あ、思い当たることあるって反応しましたね。とりあえず、その服洗濯とかしないでくださいね。証拠消されても困るし、逆にあなたが犯人じゃないなら、むしろ僕たちが言ったことが外れだって証明になるから、都合良いはずですよね?」
「その服は、この後こちらで預からせてもらいますよ。それと、この子たちの推理が当たっているとすれば、碧さんか晴也さんの死体から採取した血液を保管していた入れ物がどこかにあるはずだ。容器なのかビニルのような物かはわかりませんが、見つけることができれば新たな証拠にもなるでしょう。これから来る警察には、自分の方から全て説明させてもらいます。逃げ切れるなんてことは、思わない方が良いですよ」
援護射撃のような、枝橋さんの追い討ち。
「どのみち、ここまで真相が明らかになった時点で、あなたに言い逃れる術は残されていないということです。警察が到着するまで、あとはもう大人しくしていてください」
「…………」
唇を噛み、昇さんは項垂れる。
「……どうしてなの?」
そんな彼に、疑問の呟きを投げかけたのは千賀子さんだった。
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