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第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 13
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震える手で口元を押さえ、千賀子さんは一歩だけ昇さんへ近づくも、即座に枝橋さんに腕を掴まれ止められた。
「ふん、まぁな。俺をここに連れてきてくれたことには感謝してるさ」
憔悴しきった老婆を見下すように見つめ、昇さんはニヤリと笑う。
「それならどうして、みんなを殺したりなんか……」
「どうして? そんなの、単純な話だ。この家にある遺産、それを全部貰ってやろうかと思ってよ。土地や家そのものも含めりゃ、億単位の金が手に入るんだ。欲しいと思うのが当たり前だろ?」
「な……?」
彼の口から告げられた告白に、全員が絶句する。
「俺はガキの頃から、ずっと金に不自由して生きてきたんでね。ここらで人生変えてやろうとしただけだ。梅木家全員ぶっ殺して、枝橋、最後はてめぇも自殺に見せかけて殺して罪被せてやろうと計画してたんだけどな。まさか、こんなかたちで失敗するなんてよ。ったく、ついてねぇよなぁ」
あと二人だったのに。
そう愚痴るように呟いてため息をつく昇さんを、枝橋さんが呆気に取られたように呆然と見つめる。
その視線が問いかける疑問を読み取ってか、昇さんはヒラヒラと手を振り付け足すように言葉を続ける。
「あんたを殺そうと思ったのは、簡単に言えば鬱陶しかったからかな。俺と同じ余所者のくせに、いちいち偉そうにしやがってよ。元は警察だかなんだか知らねぇが、しっかりしろだの協調性持てだの耳障りだったのよ、ぶっちゃけるとな」
「……信じられない。たったそれだけの理由で、あんたは六人もの人間を殺そうとしていたのか?」
苦悶するような面持ちでそう言ったのは、渡辺さんだった。
「それだけの理由? そう言えるのは、てめぇがまともな人生を生きてきたから言えるだけのことだ。俺と同じく惨めな人生送ってみろよ? 人間、当たり前の生活さえ過ごせずに育つと、段々ここにどす黒いもんが溜まってくるのさ」
言って、昇さんは自分の胸を親指で叩く。
「抑えようと思っても、蓄積するスピードの方が上だ。そうなると、後はもうどうしようもない。自分が他人より不幸なら、誰かを蹴落として幸せを奪えば良い、目障りな奴は潰せば良い。そんな考えが当たり前みたいになっちまう」
自虐的に告げて、目を細めて笑う殺人犯。
そんな彼をあっけらかんと見つめたまま、部長は小首を傾げて質問を投げる。
「昇さん、あなたの言うその不幸せな人生って、どんなものだったんですか? 人を、自分の面倒を見てくれた恩人すらも、簡単に殺せてしまえるくらいに追い詰められる人生なんて、ちょっと僕には想像できないんですけど」
その疑問は、この場にいる全員が抱いたものであっただろう。
俺自身、正直気にはなった。
人を殺すことにためらいのない、そんな人格へ歪ませた人生。その内容は、果たしてどんなものなのか。
「くだらねぇことさ、大したことじゃない。ほんのちょっとずつの劣等感が蓄積して、徐々に塊になっていく感じだな。……もともとは、ガキの頃のつまらねぇ嫉妬心とかから始まったんだ」
そう言って話はじめた、殺人に至るまでの経緯。
それを聞き終えたとき、俺たちの心に落ちてきたのは今以上に大きな疑問と不条理感だった。
「ふん、まぁな。俺をここに連れてきてくれたことには感謝してるさ」
憔悴しきった老婆を見下すように見つめ、昇さんはニヤリと笑う。
「それならどうして、みんなを殺したりなんか……」
「どうして? そんなの、単純な話だ。この家にある遺産、それを全部貰ってやろうかと思ってよ。土地や家そのものも含めりゃ、億単位の金が手に入るんだ。欲しいと思うのが当たり前だろ?」
「な……?」
彼の口から告げられた告白に、全員が絶句する。
「俺はガキの頃から、ずっと金に不自由して生きてきたんでね。ここらで人生変えてやろうとしただけだ。梅木家全員ぶっ殺して、枝橋、最後はてめぇも自殺に見せかけて殺して罪被せてやろうと計画してたんだけどな。まさか、こんなかたちで失敗するなんてよ。ったく、ついてねぇよなぁ」
あと二人だったのに。
そう愚痴るように呟いてため息をつく昇さんを、枝橋さんが呆気に取られたように呆然と見つめる。
その視線が問いかける疑問を読み取ってか、昇さんはヒラヒラと手を振り付け足すように言葉を続ける。
「あんたを殺そうと思ったのは、簡単に言えば鬱陶しかったからかな。俺と同じ余所者のくせに、いちいち偉そうにしやがってよ。元は警察だかなんだか知らねぇが、しっかりしろだの協調性持てだの耳障りだったのよ、ぶっちゃけるとな」
「……信じられない。たったそれだけの理由で、あんたは六人もの人間を殺そうとしていたのか?」
苦悶するような面持ちでそう言ったのは、渡辺さんだった。
「それだけの理由? そう言えるのは、てめぇがまともな人生を生きてきたから言えるだけのことだ。俺と同じく惨めな人生送ってみろよ? 人間、当たり前の生活さえ過ごせずに育つと、段々ここにどす黒いもんが溜まってくるのさ」
言って、昇さんは自分の胸を親指で叩く。
「抑えようと思っても、蓄積するスピードの方が上だ。そうなると、後はもうどうしようもない。自分が他人より不幸なら、誰かを蹴落として幸せを奪えば良い、目障りな奴は潰せば良い。そんな考えが当たり前みたいになっちまう」
自虐的に告げて、目を細めて笑う殺人犯。
そんな彼をあっけらかんと見つめたまま、部長は小首を傾げて質問を投げる。
「昇さん、あなたの言うその不幸せな人生って、どんなものだったんですか? 人を、自分の面倒を見てくれた恩人すらも、簡単に殺せてしまえるくらいに追い詰められる人生なんて、ちょっと僕には想像できないんですけど」
その疑問は、この場にいる全員が抱いたものであっただろう。
俺自身、正直気にはなった。
人を殺すことにためらいのない、そんな人格へ歪ませた人生。その内容は、果たしてどんなものなのか。
「くだらねぇことさ、大したことじゃない。ほんのちょっとずつの劣等感が蓄積して、徐々に塊になっていく感じだな。……もともとは、ガキの頃のつまらねぇ嫉妬心とかから始まったんだ」
そう言って話はじめた、殺人に至るまでの経緯。
それを聞き終えたとき、俺たちの心に落ちてきたのは今以上に大きな疑問と不条理感だった。
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