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第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 14
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【6】
物心つく頃には、既に俺は劣等感を胸に渦巻かせて生きていた。
周りの同級生が何を買ってもらった、どこへ連れていってもらった。
そんな話を隣で喋られるたびに、どうして自分は欲しい物を買ってもらえないのか、何故自分の家は旅行をしないのか。
子供心ながら、そんなことにすらいちいち不満を抱き漠然と日々を過ごしていた。
住む家はボロいアパートで、食事も常に質素。外食など年に一度あるかないかで、お菓子すら買ってもらえることは稀だった。
父親は寂れた町工場で働き安月給。母親も生活費を工面すべく、パートで働く毎日。
当時は知らなかったことだが、父親にはギャンブル癖がありかなりの借金を抱えていたらしい。
典型的なダメ家族。
それが、俺が属する空間だった。
中学に入ってからは、一気に性格が暗くなった。
他人より劣るという気持ちから人付き合いを避け、誰とも会話をしない日も珍しくはなかったはずだ。
それ故に、胸の中に渦巻く負の感情が大きく育つのは早かったのだろう。
初めて大きな問題を起こしたのは、中学二年のときだったか。
たまたま外を歩いているときに、同じクラスの男子三人と遭遇したことがあった。
不良と呼ばれているような連中で、校内でも問題視されていたような奴らだったのだが、普段から誰とも話をしない俺を、大人しいだけの根暗と勘違いでもして認識していたのだろう。
適当な理由をつけて人目のない場所へ俺を連れ出し、そいつらは有り金を要求してきた。
質の悪いいじめ、と言われるようなものだったわけだが、俺自身そんなものに応じる意思はなかったしなにより金など一銭も持っていなかったのだ。
中学にもなれば、大抵は小遣いくらい貰って当たり前。
そんな概念すら、自分の人生にはなかった。
そして、皮肉なことにそんなくだらないきっかけが、俺の思考回路を歪ませるとどめとなってしまったのだ。
金を要求するクラスメイトを前にして俺が思ったのは、逃げようとか誰かに助けを求めたいなどとは全く別のこと。
――金がないなら、ある奴から取れば良いのか。
驚くほど自然に、そんな発想が頭に浮かんだ。
直後の行動は、自分でも不思議なくらいに躊躇いなくスムーズだったと思う。
気づいたときにはもう、相手は全員蹲っていて軽口をたたく余裕もなくしていただろう。
返り討ちに遭わなかったのも、悪かったのかもしれない。
ここで三人を痛めつけたことで、他人に暴力を奮うことにも自信を持ってしまった。
もちろん、無傷で済んだわけでもないが、受けた痛みなどさして気にもならなかった。
その出来事を境に、人生は歪むスピードを加速させた。
他人を平然と殴り、金が無くなれば無理矢理奪う。
中学を卒業する頃には似たような仲間も集まり、ドラッグにも手をだし見知らぬ女を襲い暴漢することも珍しくなかった。
教師すら脅し留年せぬよう小細工もしたし、本当にやりたい放題だったと言えるだろう。
当然警察の世話になることも多々あったが、その度に両親が上手く話をまとめていた。
自分の前で惨めに頭を下げまくるその背中を、何度見てきただろう。
物心つく頃には、既に俺は劣等感を胸に渦巻かせて生きていた。
周りの同級生が何を買ってもらった、どこへ連れていってもらった。
そんな話を隣で喋られるたびに、どうして自分は欲しい物を買ってもらえないのか、何故自分の家は旅行をしないのか。
子供心ながら、そんなことにすらいちいち不満を抱き漠然と日々を過ごしていた。
住む家はボロいアパートで、食事も常に質素。外食など年に一度あるかないかで、お菓子すら買ってもらえることは稀だった。
父親は寂れた町工場で働き安月給。母親も生活費を工面すべく、パートで働く毎日。
当時は知らなかったことだが、父親にはギャンブル癖がありかなりの借金を抱えていたらしい。
典型的なダメ家族。
それが、俺が属する空間だった。
中学に入ってからは、一気に性格が暗くなった。
他人より劣るという気持ちから人付き合いを避け、誰とも会話をしない日も珍しくはなかったはずだ。
それ故に、胸の中に渦巻く負の感情が大きく育つのは早かったのだろう。
初めて大きな問題を起こしたのは、中学二年のときだったか。
たまたま外を歩いているときに、同じクラスの男子三人と遭遇したことがあった。
不良と呼ばれているような連中で、校内でも問題視されていたような奴らだったのだが、普段から誰とも話をしない俺を、大人しいだけの根暗と勘違いでもして認識していたのだろう。
適当な理由をつけて人目のない場所へ俺を連れ出し、そいつらは有り金を要求してきた。
質の悪いいじめ、と言われるようなものだったわけだが、俺自身そんなものに応じる意思はなかったしなにより金など一銭も持っていなかったのだ。
中学にもなれば、大抵は小遣いくらい貰って当たり前。
そんな概念すら、自分の人生にはなかった。
そして、皮肉なことにそんなくだらないきっかけが、俺の思考回路を歪ませるとどめとなってしまったのだ。
金を要求するクラスメイトを前にして俺が思ったのは、逃げようとか誰かに助けを求めたいなどとは全く別のこと。
――金がないなら、ある奴から取れば良いのか。
驚くほど自然に、そんな発想が頭に浮かんだ。
直後の行動は、自分でも不思議なくらいに躊躇いなくスムーズだったと思う。
気づいたときにはもう、相手は全員蹲っていて軽口をたたく余裕もなくしていただろう。
返り討ちに遭わなかったのも、悪かったのかもしれない。
ここで三人を痛めつけたことで、他人に暴力を奮うことにも自信を持ってしまった。
もちろん、無傷で済んだわけでもないが、受けた痛みなどさして気にもならなかった。
その出来事を境に、人生は歪むスピードを加速させた。
他人を平然と殴り、金が無くなれば無理矢理奪う。
中学を卒業する頃には似たような仲間も集まり、ドラッグにも手をだし見知らぬ女を襲い暴漢することも珍しくなかった。
教師すら脅し留年せぬよう小細工もしたし、本当にやりたい放題だったと言えるだろう。
当然警察の世話になることも多々あったが、その度に両親が上手く話をまとめていた。
自分の前で惨めに頭を下げまくるその背中を、何度見てきただろう。
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