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第五章:幕引きと抵抗
第五章:幕引きと抵抗 21
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言いながら、昇さんは蓮田の身体をきつく抱き、ナイフを持つ手にも力を込め周囲を牽制する。
「このガキの命が惜しいなら、さっさと出口を開けろよ。万が一おかしな動きをしたら、容赦なくこいつの首切り裂いてやるからな」
「もうやめて! こんなことをしてもどうにもならないのよ昇!」
「うるせぇよ、クソババァ。てめぇみてぇなカスが、俺に説教する権利あると思ってんのか? 身の程わきまえろや」
千賀子さんと言葉を交わしている間に、全員が部屋の入口から距離をとった。
それを確かめて、昇さんはジリジリと警戒するように入口の前へ移動し、改めて室内にいるメンバーを見回した。
「いいか? 余計なこと考えて、俺の後を追ってこようなんて思うなよ? もしんなことしたら、こいつの命は本当にねぇからな」
そんな冗談にならない捨て台詞を残し。
昇さんは、慎重な態度を崩さぬまま部屋から出ていった。
「どうするんです部長? このままじゃ蓮田が」
解決に繋がるような知恵も無く、俺は部長に指揮を仰ぐ。
「わかってるよ。もちろん、蓮田くんは助けないと」
頷いて、部長は枝橋さんへ振り返る。
「見捨てたり、なんてありませんよね?」
普段のようにニコリと笑う部長だが、その目の奥がまったく笑えていないことに気づく。
枝橋さんも、それはすぐに気づいたのだろう。
「もちろん。放っておけるわけがないよ」
真剣な様子で頷くと、すぐに近くにいた自警団へ何事かを指示した。
「乃亜ちゃん、大丈夫かな? もし何かあったらどうしよう……」
「馬鹿、変なこと考えんなよ。大丈夫だ、絶対に助かる」
泣き出しそうな声で腕にしがみ付く幼なじみにそう告げて、俺は安心させるために頭に手を置く。
昇さんにとって、蓮田は逃げ延びるために必要な貴重なカードだ。そう簡単に捨てるわけがない。
捨てるとすれば、確実に自身の安全が確保された瞬間。
それまでにはまだ時間はある。
この近辺に土地勘のある自警団が中心になって追走すれば、どうにかできる可能性も残されているだろう。
ましてや、今はまだ日中。条件としては悪くない。
「枝橋さん、外に待機してたメンバーが、昇が裏山に入ってくの確認したってよ!」
中年の男が、急ぐように部屋へと駆けこんできた。
「わかりました。もたもたしていたら日が暮れて追跡が困難になる。その前に、なんとしても彼女を助け出しましょう」
「長沢くん、僕たちも行こうか? 大事な仲間を他人任せにはできないよね?」
自警団のやり取りを聞きながら、部長が静かに耳打ちしてきた。
「桜くんは、由奈さんに任せよう」
「……はい」
素直に頷いて、ちらりと桜の顔を見る。
話は当然聞こえていただろう。心細そうに強張る瞳が、上目遣いにこちらを見つめていた。
「心配しなくても無理はしねぇよ。こんな場面で無理できるほど器用じゃねーし」
昇さんを止めることはできなくても、追って姿を捉えるくらいはできる。その程度の協力だ。
枝橋さんたち数人が、部屋を飛び出していく。
「……よし、僕たちも頑張ってみようか」
言ってくる部長に小さく頷き、そっと桜の身体を離す。
「雄治……」
呼び止めるように囁く彼女に微笑を向け、もう一度頭に手をやった。
「心配しなくても平気だって」
努めて平静を装ってそう告げて、俺は部長に目配せをした。
お互いそれで通じ合い、部屋を飛び出す。
「え? あ、ちょっと、あんたたちどこに――!」
突然のことに慌てたような由奈さんの声が背中にぶつかってくるが、当然足を止めることはない。
そのまま玄関へと向かい靴をはくと、俺と部長は枝橋さんたちを追って外へと駆けだした。
「このガキの命が惜しいなら、さっさと出口を開けろよ。万が一おかしな動きをしたら、容赦なくこいつの首切り裂いてやるからな」
「もうやめて! こんなことをしてもどうにもならないのよ昇!」
「うるせぇよ、クソババァ。てめぇみてぇなカスが、俺に説教する権利あると思ってんのか? 身の程わきまえろや」
千賀子さんと言葉を交わしている間に、全員が部屋の入口から距離をとった。
それを確かめて、昇さんはジリジリと警戒するように入口の前へ移動し、改めて室内にいるメンバーを見回した。
「いいか? 余計なこと考えて、俺の後を追ってこようなんて思うなよ? もしんなことしたら、こいつの命は本当にねぇからな」
そんな冗談にならない捨て台詞を残し。
昇さんは、慎重な態度を崩さぬまま部屋から出ていった。
「どうするんです部長? このままじゃ蓮田が」
解決に繋がるような知恵も無く、俺は部長に指揮を仰ぐ。
「わかってるよ。もちろん、蓮田くんは助けないと」
頷いて、部長は枝橋さんへ振り返る。
「見捨てたり、なんてありませんよね?」
普段のようにニコリと笑う部長だが、その目の奥がまったく笑えていないことに気づく。
枝橋さんも、それはすぐに気づいたのだろう。
「もちろん。放っておけるわけがないよ」
真剣な様子で頷くと、すぐに近くにいた自警団へ何事かを指示した。
「乃亜ちゃん、大丈夫かな? もし何かあったらどうしよう……」
「馬鹿、変なこと考えんなよ。大丈夫だ、絶対に助かる」
泣き出しそうな声で腕にしがみ付く幼なじみにそう告げて、俺は安心させるために頭に手を置く。
昇さんにとって、蓮田は逃げ延びるために必要な貴重なカードだ。そう簡単に捨てるわけがない。
捨てるとすれば、確実に自身の安全が確保された瞬間。
それまでにはまだ時間はある。
この近辺に土地勘のある自警団が中心になって追走すれば、どうにかできる可能性も残されているだろう。
ましてや、今はまだ日中。条件としては悪くない。
「枝橋さん、外に待機してたメンバーが、昇が裏山に入ってくの確認したってよ!」
中年の男が、急ぐように部屋へと駆けこんできた。
「わかりました。もたもたしていたら日が暮れて追跡が困難になる。その前に、なんとしても彼女を助け出しましょう」
「長沢くん、僕たちも行こうか? 大事な仲間を他人任せにはできないよね?」
自警団のやり取りを聞きながら、部長が静かに耳打ちしてきた。
「桜くんは、由奈さんに任せよう」
「……はい」
素直に頷いて、ちらりと桜の顔を見る。
話は当然聞こえていただろう。心細そうに強張る瞳が、上目遣いにこちらを見つめていた。
「心配しなくても無理はしねぇよ。こんな場面で無理できるほど器用じゃねーし」
昇さんを止めることはできなくても、追って姿を捉えるくらいはできる。その程度の協力だ。
枝橋さんたち数人が、部屋を飛び出していく。
「……よし、僕たちも頑張ってみようか」
言ってくる部長に小さく頷き、そっと桜の身体を離す。
「雄治……」
呼び止めるように囁く彼女に微笑を向け、もう一度頭に手をやった。
「心配しなくても平気だって」
努めて平静を装ってそう告げて、俺は部長に目配せをした。
お互いそれで通じ合い、部屋を飛び出す。
「え? あ、ちょっと、あんたたちどこに――!」
突然のことに慌てたような由奈さんの声が背中にぶつかってくるが、当然足を止めることはない。
そのまま玄関へと向かい靴をはくと、俺と部長は枝橋さんたちを追って外へと駆けだした。
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