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プロローグ
プロローグ 9
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「ああ……これはパートナー・ユニット。P.Uと呼んでもらえればいいわ。あくまで私はプロトタイプだから、現時点での仮称でしかないけれど」
「パートナー・ユニット? ピーユー……」
いまいち馴染は薄いけれど、覚えられないレベルでもない。
「そっか。このP.Uがイデアのお家なんだね」
納得しうんうんと頷くと、イデアは薄っすらと微笑むように口元を変化させあたしを見つめてきた。
「面白い解釈ね。理屈としては間違いでもないから否定はしないわ。……ところで、希。貴女は今、私に色々と訊きたいことがあると言ったけれど、残念ながらそれは無理だわ」
「え? 何で?」
まさかここでも機密情報が絡むからとか、お父さんのようなことを言われてしまうのだろうかと既視感に似た感覚を味わいかけたあたしは、イデアが自分が出現している端末の横を指差すのを見て、そうではないとすぐに気がついた。
「私も、色々と情報交換をしたいのだけれど、生憎充電の残りが二十パーセントを切っているわ。申し訳ないけれど、まずは充電器を接続して充電を優先してもらえるかしら。
充電中はP.Uの起動ができない使用になっているから、お話をするのは後のお楽しみね。一時間六分で完了できるわ、それまでの辛抱よ」
「あ、はい……」
まぁ、買ったばかりのスマホとかもそういうことあるしなと思いながら、あたしは言われた通りに充電器をデバイスに差してコンセントの側へ移動する。
「ごめんなさい、せっかく起動してくれたのにごたごたさせてしまって」
「ううん、別に良いけど。えっと……電源はこのまま切っちゃって大丈夫なの?」
「ええ。それで問題ないわ」
「それじゃあ、失礼して……」
若干戸惑いつつ、起動したときと同じように電源ボタンを押すと、イデアの姿は幻のように掻き消え画面が真っ暗になってしまった。
そのままコンセントに繋ぐと、画面に充電中を知らせるマークが浮かび上がり――スマホでも見かける電池みたいな形のマークだ――、数秒後にはまた暗く変わった。
「……何か、すごい物が送られてきたわねぇ。いいなぁ、わたしも一台それ欲しい。プロトタイプって言ったけど、そのうち完成品が発売したりするのかな。あ、実は希モニター役任されてたりして」
元の位置に戻ってきたあたしにそんなことを言って、奈子はチラチラとP.Uを気にするように視線を向ける。
「えー……やだなそれ。面倒くさそう」
あの父親なら、あながちあり得ないことでもないなと思いつつあたしが呻くと、奈子は面白がるようにアハハハとわざとらしい笑い声を響かせた。
「笑いごとじゃないよ、もう……」
この日の二つの出来事。
奈子の持ってきた宿泊券と、お父さんが送りつけてきたイデアという名の、謎の人口知能。
まさか、後にこの二つがあの悲惨な殺人事件に絡むアイテムへ化けることになるなんて、このときのあたしは露ほどにも想像なんてできていなかった――。
「パートナー・ユニット? ピーユー……」
いまいち馴染は薄いけれど、覚えられないレベルでもない。
「そっか。このP.Uがイデアのお家なんだね」
納得しうんうんと頷くと、イデアは薄っすらと微笑むように口元を変化させあたしを見つめてきた。
「面白い解釈ね。理屈としては間違いでもないから否定はしないわ。……ところで、希。貴女は今、私に色々と訊きたいことがあると言ったけれど、残念ながらそれは無理だわ」
「え? 何で?」
まさかここでも機密情報が絡むからとか、お父さんのようなことを言われてしまうのだろうかと既視感に似た感覚を味わいかけたあたしは、イデアが自分が出現している端末の横を指差すのを見て、そうではないとすぐに気がついた。
「私も、色々と情報交換をしたいのだけれど、生憎充電の残りが二十パーセントを切っているわ。申し訳ないけれど、まずは充電器を接続して充電を優先してもらえるかしら。
充電中はP.Uの起動ができない使用になっているから、お話をするのは後のお楽しみね。一時間六分で完了できるわ、それまでの辛抱よ」
「あ、はい……」
まぁ、買ったばかりのスマホとかもそういうことあるしなと思いながら、あたしは言われた通りに充電器をデバイスに差してコンセントの側へ移動する。
「ごめんなさい、せっかく起動してくれたのにごたごたさせてしまって」
「ううん、別に良いけど。えっと……電源はこのまま切っちゃって大丈夫なの?」
「ええ。それで問題ないわ」
「それじゃあ、失礼して……」
若干戸惑いつつ、起動したときと同じように電源ボタンを押すと、イデアの姿は幻のように掻き消え画面が真っ暗になってしまった。
そのままコンセントに繋ぐと、画面に充電中を知らせるマークが浮かび上がり――スマホでも見かける電池みたいな形のマークだ――、数秒後にはまた暗く変わった。
「……何か、すごい物が送られてきたわねぇ。いいなぁ、わたしも一台それ欲しい。プロトタイプって言ったけど、そのうち完成品が発売したりするのかな。あ、実は希モニター役任されてたりして」
元の位置に戻ってきたあたしにそんなことを言って、奈子はチラチラとP.Uを気にするように視線を向ける。
「えー……やだなそれ。面倒くさそう」
あの父親なら、あながちあり得ないことでもないなと思いつつあたしが呻くと、奈子は面白がるようにアハハハとわざとらしい笑い声を響かせた。
「笑いごとじゃないよ、もう……」
この日の二つの出来事。
奈子の持ってきた宿泊券と、お父さんが送りつけてきたイデアという名の、謎の人口知能。
まさか、後にこの二つがあの悲惨な殺人事件に絡むアイテムへ化けることになるなんて、このときのあたしは露ほどにも想像なんてできていなかった――。
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