電子探偵イデア～殺意に染まる白銀～

第二章：救助を待つ

第二章：救助を待つ ４８

　慌てて答え、彩也子は胸中を読まれるのをごまかすように頭を下げる。

「そうですか？　もし何かあった場合は、遠慮なくいつでも申し付けてください」

「ええ。そのときはよろしくお願いします。わたし、そろそろ部屋へ戻らせてもらいます。色々と頭の中を整理したいこともありますので」

「わかりました。ごゆっくり休んでいてください。救助が来る目処がついたら、お声をかけさせていただきますので」

　疲れが混じる顔に優しい笑みを浮かべて告げてくるオーナーへまた一礼して、彩也子は西山へ意識を向ける。

「それじゃあ、西山さん。わたしは先に休んでるわね」

「あ、ええ。私ももう少ししたら部屋に戻るわ」

　ぎこちない愛想笑いを浮かべてリアクションを返す西山からすぐに視線を逸らし、彩也子は立ち上がるとそのままリビングを後にする。

　部屋に戻る途中、ダイニングの壁に掛けられている時計を確認すると、後三分ほどで午後の九時になろうとしていた。

　こんな時間になってしまっては、除雪業者の到着など期待するだけ無駄だろう。

　きっと、作業が手間取り明日に先延ばしされたに違いない。

　となれば、今夜一晩は嫌でもこのペンションで過ごす覚悟をしなくては。

　誰が自分の夫を殺したのか。

　答えの導き出せない猜疑心に蝕まれながら、彩也子は早足になって自分の部屋へと歩いていった。