99 / 125
第四章:謎を解く
第四章:謎を解く 2
しおりを挟む
「えっと……あのですね……」
後ろめたいような心地になりその笑みを直視できぬまま、あたしは若干しどろもどろな口調でどうにか頑張って言葉を紡ぐ。
「ちょっとですね、今からその……とても大切なお話があるもので、一度従業員の皆さんをここへ集めていただけたりなんかは……できないでしょうか?」
できません。と、即答でもしてくれないかな、そしたら仕方ないやで諦めるのにな、などと淡い期待を込めてみたりもしたが、しかし名取さんは
「お話……ですか? 構わないですけど、オーナーたちも全員呼ぶんですね?」
と、不思議そうな様子できょとんとなりながらあっさりと了承してくれてしまった。
「あ……はい。お願いします」
これはもう、完璧に腹をくくるしかないなと諦念を胸中に抱きながら、あたしはコクリと頷く。
「それじゃあ、ちょっと待っててください」
パタパタと管理室の方へ駆けていく名取さんを見送り、あたしがはぁっと大きく息をつく姿を見て、まだ事情を知らされていない奈子が困惑気味に声をかけてきた。
「何々、いきなり皆を集めてなんて。本当にどうしたの?」
「あたしもわかんないけどさ、イデアがそうしろって。朝食の前に、この事件の真相を明らかにするんだって。そういうことでしょ、イデア?」
P.Uの画面から浮かび上がる実体のない少女に指を伸ばし、その頭部をつつく仕草をしながらあたしが確認すると、当の本人は「ええ」と短く返事をして頷いた。
「真相って……まさか、推理ドラマみたいに皆の前で犯人はあなたです! とかするってこと? うわ、見てるぶんには良いけど……大丈夫なの? 変なこと言ったりして恥かいたら最悪じゃん。イデアちゃん、本当に犯人が誰か突き止めたの?」
目の前に置かれた朝食から完全にイデアへ意識を逸らし、奈子はP.Uへと顔を乗り出すようにして近づける。
「奈子も希も心配性なのね。事件の真相解明は、現時点でも充分可能な状態まで分析はできてる。犯人の正体とその根拠、及び矢津哲平さん殺害に関するあのアリバイトリックも、きちんと説明をしてあげるわ」
「おぉ……自信満々って顔だね。てか、イデアちゃんいつの間に真相突き止めてたのよ?」
奈子の問いかけは、イデアではなくあたしへ向けられたものだった。
「さぁ。一緒に行動はしてたけど、犯人や謎を解く手がかりなんてどこにもなかったような気がするんだけど……」
イデアに言われて、リビング内を調べ歩いたり外の――矢津さんの死体が発見された現場だ――様子を確認させたり、さっきは脚立がしまわれているロッカーを見せたりと色々と行動したが、それだけで真相を手繰り寄せられるほどの情報を得られたとは、あたし自身も信じきれていない。
「唯一、犯人が何故あの二人を殺害したのか。その理由だけは、私もさすがにわからないわ。もっとも、その辺りのことは警察に任せてしまって問題ないでしょうけれど」
首を傾げ合うあたしたちを置いてきぼりにしたまま、イデアはついでのようにそれだけ告げて、またダイニングを見渡すことに意識を戻した。
後ろめたいような心地になりその笑みを直視できぬまま、あたしは若干しどろもどろな口調でどうにか頑張って言葉を紡ぐ。
「ちょっとですね、今からその……とても大切なお話があるもので、一度従業員の皆さんをここへ集めていただけたりなんかは……できないでしょうか?」
できません。と、即答でもしてくれないかな、そしたら仕方ないやで諦めるのにな、などと淡い期待を込めてみたりもしたが、しかし名取さんは
「お話……ですか? 構わないですけど、オーナーたちも全員呼ぶんですね?」
と、不思議そうな様子できょとんとなりながらあっさりと了承してくれてしまった。
「あ……はい。お願いします」
これはもう、完璧に腹をくくるしかないなと諦念を胸中に抱きながら、あたしはコクリと頷く。
「それじゃあ、ちょっと待っててください」
パタパタと管理室の方へ駆けていく名取さんを見送り、あたしがはぁっと大きく息をつく姿を見て、まだ事情を知らされていない奈子が困惑気味に声をかけてきた。
「何々、いきなり皆を集めてなんて。本当にどうしたの?」
「あたしもわかんないけどさ、イデアがそうしろって。朝食の前に、この事件の真相を明らかにするんだって。そういうことでしょ、イデア?」
P.Uの画面から浮かび上がる実体のない少女に指を伸ばし、その頭部をつつく仕草をしながらあたしが確認すると、当の本人は「ええ」と短く返事をして頷いた。
「真相って……まさか、推理ドラマみたいに皆の前で犯人はあなたです! とかするってこと? うわ、見てるぶんには良いけど……大丈夫なの? 変なこと言ったりして恥かいたら最悪じゃん。イデアちゃん、本当に犯人が誰か突き止めたの?」
目の前に置かれた朝食から完全にイデアへ意識を逸らし、奈子はP.Uへと顔を乗り出すようにして近づける。
「奈子も希も心配性なのね。事件の真相解明は、現時点でも充分可能な状態まで分析はできてる。犯人の正体とその根拠、及び矢津哲平さん殺害に関するあのアリバイトリックも、きちんと説明をしてあげるわ」
「おぉ……自信満々って顔だね。てか、イデアちゃんいつの間に真相突き止めてたのよ?」
奈子の問いかけは、イデアではなくあたしへ向けられたものだった。
「さぁ。一緒に行動はしてたけど、犯人や謎を解く手がかりなんてどこにもなかったような気がするんだけど……」
イデアに言われて、リビング内を調べ歩いたり外の――矢津さんの死体が発見された現場だ――様子を確認させたり、さっきは脚立がしまわれているロッカーを見せたりと色々と行動したが、それだけで真相を手繰り寄せられるほどの情報を得られたとは、あたし自身も信じきれていない。
「唯一、犯人が何故あの二人を殺害したのか。その理由だけは、私もさすがにわからないわ。もっとも、その辺りのことは警察に任せてしまって問題ないでしょうけれど」
首を傾げ合うあたしたちを置いてきぼりにしたまま、イデアはついでのようにそれだけ告げて、またダイニングを見渡すことに意識を戻した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる