電子探偵イデア~殺意に染まる白銀~

雪鳴月彦

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第四章:謎を解く

第四章:謎を解く 2

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「えっと……あのですね……」

 後ろめたいような心地になりその笑みを直視できぬまま、あたしは若干しどろもどろな口調でどうにか頑張って言葉を紡ぐ。

「ちょっとですね、今からその……とても大切なお話があるもので、一度従業員の皆さんをここへ集めていただけたりなんかは……できないでしょうか?」

 できません。と、即答でもしてくれないかな、そしたら仕方ないやで諦めるのにな、などと淡い期待を込めてみたりもしたが、しかし名取さんは

「お話……ですか? 構わないですけど、オーナーたちも全員呼ぶんですね?」

 と、不思議そうな様子できょとんとなりながらあっさりと了承してくれてしまった。

「あ……はい。お願いします」

 これはもう、完璧に腹をくくるしかないなと諦念を胸中に抱きながら、あたしはコクリと頷く。

「それじゃあ、ちょっと待っててください」

 パタパタと管理室の方へ駆けていく名取さんを見送り、あたしがはぁっと大きく息をつく姿を見て、まだ事情を知らされていない奈子が困惑気味に声をかけてきた。

「何々、いきなり皆を集めてなんて。本当にどうしたの?」

「あたしもわかんないけどさ、イデアがそうしろって。朝食の前に、この事件の真相を明らかにするんだって。そういうことでしょ、イデア?」

 P.Uの画面から浮かび上がる実体のない少女に指を伸ばし、その頭部をつつく仕草をしながらあたしが確認すると、当の本人は「ええ」と短く返事をして頷いた。

「真相って……まさか、推理ドラマみたいに皆の前で犯人はあなたです! とかするってこと? うわ、見てるぶんには良いけど……大丈夫なの? 変なこと言ったりして恥かいたら最悪じゃん。イデアちゃん、本当に犯人が誰か突き止めたの?」

 目の前に置かれた朝食から完全にイデアへ意識を逸らし、奈子はP.Uへと顔を乗り出すようにして近づける。

「奈子も希も心配性なのね。事件の真相解明は、現時点でも充分可能な状態まで分析はできてる。犯人の正体とその根拠、及び矢津哲平さん殺害に関するあのアリバイトリックも、きちんと説明をしてあげるわ」

「おぉ……自信満々って顔だね。てか、イデアちゃんいつの間に真相突き止めてたのよ?」

 奈子の問いかけは、イデアではなくあたしへ向けられたものだった。

「さぁ。一緒に行動はしてたけど、犯人や謎を解く手がかりなんてどこにもなかったような気がするんだけど……」

 イデアに言われて、リビング内を調べ歩いたり外の――矢津さんの死体が発見された現場だ――様子を確認させたり、さっきは脚立がしまわれているロッカーを見せたりと色々と行動したが、それだけで真相を手繰り寄せられるほどの情報を得られたとは、あたし自身も信じきれていない。

「唯一、犯人が何故あの二人を殺害したのか。その理由だけは、私もさすがにわからないわ。もっとも、その辺りのことは警察に任せてしまって問題ないでしょうけれど」

 首を傾げ合うあたしたちを置いてきぼりにしたまま、イデアはついでのようにそれだけ告げて、またダイニングを見渡すことに意識を戻した。
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